「BCNランキング」05年5月の販売個数データによると、ポインティングディバイス市場の実に98.7%がマウス。対するトラックボールはわずか1.3%のシェアしかない。身の回りでもなかなか見かけることが少ないトラックボール。しかしその便利さゆえ、コアで濃いファン層は確実に存在し、じわじわ増えつつある。

 カッコンカッコンと、隣の席から耳障りな音が聞こえる。マウスの移動スペースが足らず、一旦持ち上げては、右に左にずらして下ろすという操作を繰り返す音だ。なかなかカーソルの位置が決まらないらしく音はますます激しくなり、イライラまでもが伝わってくる。そんなとき、オススメなのがトラックボール。マウスのように操作用のスペースを必要とせず、指先だけですいすいと自由自在にカーソルが操れる。イライラ解消、作業効率大幅UPも夢じゃない。そんなナイスなディバイスに焦点を当て、今売れ筋の熱い「玉」市場の動向を詳しくお伝えしてみたい。

●玉「3強」の様相、MSに果敢に立ち向かうオプティマ

 「BCNランキング」05年5月の販売個数データによると、ポインティングディバイス市場の実に98.7%がマウス。対するトラックボールはわずか1.3%のシェアしかない。身の回りでもなかなか見かけることが少ないトラックボール。しかしその便利さゆえ、コアで濃いファン層は確実に存在し、じわじわ増えつつある。3月を100とする販売個数の指数では、5月のマウスの売り上げ指数は92%と下降線をたどっているのに比べ、トラックボールは同105%。ほんのすこしだが売り上げを伸ばしはじめているのだ。

 こうしたニッチなトラックボール市場だが、思いのほか参入メーカーは多い。Microsoftはもちろんのこと、ロジクールやサンワサプライ、ワコムなど、マウスやキーボードなどでもお馴染みのサプライメーカーは全参入状態だ。さらにKENSINGTONやA4Techなどといったメーカーもユニークな製品を数多く投入している。

トラックボールベスト10

Trackball Explorer 機種別販売個数シェアのランキングトップ10では、Microsoftが1位と2位を独占。『Trackball Explorer』が19.9%で1位、『Trackball Optical』が16.1%で2位と圧倒的な強さを見せている。マウスやキーボードなど入力ディバイスに関して「使いやすい」と定評のあるMicrosoft。絶大なブランドの知名度もあってトラックボール市場でもその強さはダントツだ。これに迫るのが、オプティマの『NTB-800USK』。15.1%のシェアで上位2機種を追撃中。Microsoft2製品を加えた3モデルで他機種を大きくリードしている。

 こうした入力デバイスは、ユーザーのこだわりが強く市場に反映される。良い製品なら口コミでその評判は広がってゆくものだけに、先のオプティマのように多少マイナーなメーカーの製品であっても十分に大きなシェアを獲得することが可能で、それがこの市場の特徴ともなっている。

●どっちの玉がキモチがイイ? こだわり分かれる光学式と機械式

 トラックボールには、マウスと同様「光学式」と「機械式」という2つのタイプが存在する。これはX、Y方向の移動量をレーザーにより光学的にエンコードするか、ボールとローラーを用いて物理的な回転数をエンコードするかの違い。光学式トラックボールは、ローラー部のホコリに悩まされることがないのが最大の特徴。機械式は、光学式よりも若干価格が安いことや、機械式ゆえの操作感が得られる点が特徴だ。
“光学式と機械式の割合”

 光学式トラックボールは登場した当初、種々の条件によりエンコードが正常に行われなかったり、光学センサの最適位置を優先するあまりに人間にとって使いにくいデザインになってしまったり、といったことが散見された。しかし、改良が進んだ現在ではメンテナンスフリーの魅力を持つ光学式に明確なアドバンテージがあるようだ。

 しかし、例えば赤い玉に無数に散らばる黒い斑点などが「毒々しくて気味が悪い」など、デザインを嫌う声もある。これはある種、光学式ゆえのデメリットともいえるだろう。また、メンテナンスフリーといっても完全に何もしなくてもいい、というものでもない。使いつづけると指先の油や垢が玉に付着し、動きが鈍くなってしまう。定期的に石鹸などで玉を洗わなければスムーズな操作感は得られない。

 一方、機械式はもっとこまめにメンテナンスをしなければならないが、固定ファンも多い。ローラー部の軸受けに金属ベアリングを用いたハイエンドモデルなどもあり、こういった機種は値は張るものの光学式には無い、機械式ならではの極上のフィーリングが得られるからのようだ。

●人差し指か親指か、玉好みの指はどっちだ

 トラックボールを選ぶ上でもう一つ重要な要素が「人差し指で回すか親指で回すか、またはそれ以外か」という「玉の回し方」の種類。「人差し指タイプ」は玉がきょう体の中央部に配置されており、その両端に左クリックボタン、右クリックボタンが配されている場合が多い。人間にとって一番使いやすく繊細な使い方が行える人差し指を使うため操作のしやすさが一番のメリット。また、機種によっては左右対称デザインのものもある。ボタンのアサイン等の変更をすれば、左右どちらの利き手のユーザーにも対応できるメリットがある。

“転がし方”の割合



 「親指タイプ」は、玉を親指で回すようになっており、ボタン等はその他の指で操作する。一般的にこのタイプはマウスのフィーリングに近い、とされており直感的に操作できる点が魅力。親指を使うため、デザインは完全に利き手に応じたデザインになっている点も特徴だ。

 これ以外のタイプとして、手のひらにすっぽりと覆ってしまえるほど小さな「ハンディタイプ」がある。「人差し指タイプ」「親指タイプ」共にきょう体は大きめで机上に乗せて使用する据え置きが主流だが、ハンディタイプは手に包み込んで操作するような使い方をするのが特徴。片手に持って操作を行えるため、例えばプレゼンなどの際に重宝する。また、寝床の横に置いたノートPCを寝転がって操作する際は、こうしたハンディタイプのトラックボールは意外に重宝するものだ。

 こういった「転がし方」に関しても、先の「光学式と機械式」同様、重要なのはユーザー個人が感じるフィーリング。キーボード以上に触れている時間の長い入力デバイスだけに、トラックボールは念入りに選びたい。店頭などで実際に触れて自分に合った玉を見つけることができれば、きっと幸せが訪れるだろう。(市川昭彦<Aqui-Z>)


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