3月、プリンタの複合機市場に大きな変化があった。「BCNランキング」で、これまで4位だったキヤノンの「PIXUS MP770」が一気にトップを奪取。1年以上にわたって首位を独走してきたエプソンの牙城が崩されたのだ(図1)。これまでインクジェットプリンタでしのぎを削るバトルを演じてきた両社は、舞台を複合機市場に移し、さらに熾烈な争いを展開することになりそうだ。

 3月、プリンタの複合機市場に大きな変化があった。「BCNランキング」で、これまで4位だったキヤノンの「PIXUS MP770」が一気にトップを奪取。1年以上にわたって首位を独走してきたエプソンの牙城が崩されたのだ(図1)。これまでインクジェットプリンタでしのぎを削るバトルを演じてきた両社は、舞台を複合機市場に移し、さらに熾烈な争いを展開することになりそうだ。


●キヤノン「MP770」が販売台数で首位、エプソンを激しく追走

 「BCNランキング」による販売台数トップ10を見ると、この3月にキヤノンの「MP770」が初めて1位を獲得した(表1)。「MP770」の機能性の高さとコストパフォーマンスの高さが高く評価された結果といえる。競合のエプソン「PM-A870」は、極論してしまえば2003年秋のハイエンドモデル「PM-A850」のマイナーバージョンアップに過ぎず、新味に欠ける。一方「MP770」の機能性は実にアグレッシブで、そして多彩だ。自動両面印刷、マルチペーパーハンドリング、四辺縁なし印刷機能、ダイレクトプリント機能などを実装しながらも、2万円代半ばという実売価格は大いに魅力的だ。


 一方、メーカー別シェアでは、依然としてエプソンが過半数を握っている(図2)。ラインアップをいち早く複合機中心にシフトしたことが大きい。店頭でチェックしてみると、1万円台の「PM-A700」、2万円台の「PM-A870」、3万円台の「PM-A900」と、キレイに1万円刻みで商品が並ぶ。50%を超えるシェアは、こうしたラインアップ作戦でローエンドユーザーからハイエンドユーザーまで、幅広く取り込むことに成功した結果だといえるだろう。


 続くキヤノンは現在シェア25%弱。今回のトップ奪取に勢いを得て、これからの追走は迫力あるものとなりそうだ。

●ポイントを握るのは価格戦略か?

 ところで、ここにきて複合機の首位が入れ替わったのはなぜだろう。ヒントは価格にあるようだ。キヤノン「MP770」と、競合のエプソン「PM-A870」とを比べると両モデルとも発売は昨年10月。この時点ではキヤノン「MP770」の価格が14%程度高く設定されているだけだった。しかし、2月までには差が28%まで広がってしまった。この間エプソン「PM-A870」が売り上げを伸ばしていたのだ。しかし3月、キヤノン「MP770」の価格が大きく下がり、差は一気に11%まで縮小。これが売上台数トップ奪取の推進力になったと見られる。

 さらにキヤノンは、低価格帯、とりわけ1万円台のラインアップがなかった。そのためエントリー層の取りこぼしが大きく、結果的に複合機全体のシェアにも影響したように思える。現在、複合機の売れ筋は1万円半ば?2万円半ば。キヤノンがこの価格帯にも製品を投入してくると、勢力図はかなり変わってくるだろう。

●プリンタ市場の主戦場は複合機にシフト


 プリンタ市場で複合機が占める割合は、昨年10月に約35%であったものが、直近3月では実に46%に拡大し、いよいよプリンタの過半数に迫る勢いだ(図3)。このようにユーザーの嗜好が複合機に流れてきているのは明確であるだけに、各社発表する春モデルでは、複合機の一層の強化が予測される。この一手はプリンタ市場の主導権争いに大きな影響を及ぼしそうだ。(フリージャーナリスト・竹内亮介)