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セキュリティーのその先へ、トレンドマイクロが描く「家族とAI」の新しい関係性とは?

経営戦略

2026/04/16 13:00

 AIが生活に深く入り込んだ今、利便性と同時に不安も抱えるようになった。子どもが生成AIを使って学ぶこと、親世代が巧妙化する詐欺にさらされること、家族それぞれが異なるデジタルリスクに直面しているという現実だ。こうした状況に対し、トレンドマイクロは個人向けブランドを「TrendLife」として刷新し、開発中の家族向けAIサービス「Kaleida(カレイダ)」を公開。4月15日に開催した記者会見で発表した。

トレンドマイクロが記者会見を開催
(左から3番目がエバ・チェン社長兼CEO)

家族を一つの単位で考えるAI「Kaleida」とは?

 TrendLifeは、トレンドマイクロが約40年にわたって培ってきたサイバーセキュリティーの知見を基盤に、個人と家族のデジタルライフ全体を支えることを目的とした新ブランド。注目すべきは、守る対象が「PCやスマートフォン」ではなく、人の行動や判断そのものに拡張されている点だ。

 背景にあるのは、AIを悪用した詐欺やなりすまし、ディープフェイクの急増。トレンドマイクロの調査では、消費者の76%が「AIに渡した個人情報の悪用」に強い懸念を示しているという。従来の「検知してブロックする」だけのセキュリティーでは、十分とはいえなくなっている。

 TrendLifeの中核となるのが、個人を単独で支援するAIとは異なって家族全体を一つのつながりとして理解・支援するKaleidaだ。Kaleidaが掲げる第一の役割は、子どもの成長と主体性を守ること。生成AIが答えを即座に出す環境では、子どもが「考える力」を失うリスクが指摘されている。これに対してKaleidaは、AIと人間の関与度を可視化し、「どこまでが自分の力か」を示す仕組みを用意する。親は結果だけでなく、プロセスを確認でき、評価や声掛けがしやすくなる。単なる学習支援ではなく、家族の対話を生み出す仕組みだ。
 
Kaleidaは家族全体を一つのつながりとして
理解・支援

 もう一つの柱が、家族のコンテキスト(状況)を理解した調整機能。家族全員のスケジュール、体調、移動状況などを踏まえ、AIが最適な提案を行う。記者会見では「祖母の誕生日に全員が集まる」という例が紹介され、誰にどの情報を伝えるべきかをAIが判断する様子が示された。
 
世代や立場によって異なる視点や責任

 重要なのは、プライバシーの境界線を尊重しながら支援する点。単なる便利ツールではなく、AIが家族関係に配慮した調整役になるというわけだ。記者会見では、フランク・クオ・TrendLife最高コンシューマー事業責任者が「AIで家族の生活や人生に寄り添う」と説明した。
 
フランク・クオ
TrendLife最高コンシューマー事業責任者

 TrendLifeは、防御中心のセキュリティーから、家族が互いを思いやる「ケア型」へと舵を切っている。家族を軸にしたのは、注意喚起や詐欺対策への能動的な関与を高める効果もあるといえるだろう。また、画一的なルールではなく家庭ごとの判断基準にAIを合わせられる点は大きい。誤検知や過剰ブロックを減らし、納得感のあるAI活用につながる。

 一方、AIに寄り添うがゆえに逆に「任せすぎ」になる可能性がある。Kaleidaは2026年後半に提供を開始する予定。どこまで実用レベルに落とし込めるかは今後の検証次第で、人間の判断をどう残すかがカギを握るといえる。

 記者会見では、大三川彰彦副社長が「AI時代に向けたシフトチェンジ」と表現。TrendLifeとKaleidaを通じてみえてくるのは、トレンドマイクロが単なるセキュリティーベンダーではない道を歩み始めたということだ。
 
大三川彰彦
副社長

 守る対象はデバイスでもデータでもなく、人と人との関係性、意思決定の質へと広がっている。AIが生活そのものを変えつつある中、守る対象の領域を広げていかなければ「安心」は提供できない。トレンドマイクロは今、「セキュリティーベンダー」から「信頼の基盤を提供するベンダー」になるための転換点に立っているのではないだろうか。(BCN・佐相 彰彦)
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