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交換レンズでZマウントが2位に急浮上、一桁シェアの常連からついに脱出

 交換レンズが熱い。今年に入って毎月、販売台数、販売金額とも前年同月比で2桁増を続けている。メーカーのシェア争いも激しい。6月の首位は販売本数シェア18.0%でタムロン。しかし5位のソニーも12.9%と2桁台。上位メーカーが僅差でシェアを奪い合っている状態だ。一方、レンズマウント別の構成比をみると、圧倒的に強いのがソニーのミラーレス一眼用、Eマウントレンズだ。年間を通じて35%前後のシェアで独走しており、6月も35.5%とダントツ。2位以下は混戦模様だ。しかし、昨年6月の5位から、この6月には2位にまでシェアを上げてきたのがニコンのミラーレス一眼用、Zマウントレンズだ。全国の家電量販店やカメラ専門店、ネットショップ約2200店舗の実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。

ニコンZマウントレンズ最初のモデル、
NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sのマウント部

 Zマウントレンズはこの2月まで1桁シェアで低迷。マウント別の販売ランキングでも5位か6位のパッとしない存在だった。しかしこの3月、にわかに覚醒。11.9%と初めて2桁シェアを達成した。NIKKOR Z 26mm f/2.8の発売で販売本数が一気に増えたことが大きい。さらに、3月10日から4月17日まで開催した「Nikon Creators 応援スプリングキャンペーン」によるキャッシュバックも効いた。対象は、当時ニコンが販売するZマウントレンズの過半を占める19本。レンズ1本につき2万円から5000円キャッシュバックする大盤振る舞いで販売本数を伸ばした。
 

 さらにこの5月、Zマウントレンズのシェアは13.8%まで拡大、一気に2位までランキングを上昇させた。6月も13.3%で2位を保っており、それまでの低迷状態から一皮むけた。ジャンプアップした要因は今回も新レンズの発売だ。NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VRを5月に、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7を6月に投入。いずれも立ち上がりはまずまずだ。8月に発売するNIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRにも、すでに予約が入り始めており、Zマウントレンズがにぎやかになってきた。交換レンズのラインアップが広がると、安心感が高まりカメラボディーの販売も上向く。6月現在で、ニコンのミラーレス一眼の販売台数シェアは10.9%。ランキングは4位だが、1桁シェアが当たり前だった状態からは脱し、拡大傾向が継続している。

 Zマウントのシェア拡大で、もう一つ忘れてはならない存在がサードパーティーだ。昨年9月にタムロンが70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD ニコン用を発売し、Zマウントレンズに参入。シグマも30mm F1.4 DC DN ニコンZ用などでこの4月に参入した。Zマウントレンズに占める両社のシェアは、合計しても2桁に届かないが、今後徐々にサードパーティ製レンズは増えていくだろう。一方ソニーの規格、Eマウントレンズのメーカーシェアを見ると、この6月のトップは40.2%のタムロンだった。当のソニーは35.1%で2位。見方によっては「庇を貸して母屋を取られた」状態といえなくもない。しかし、Eマウントレンズの選択肢が増えることは、ソニーのカメラにとって決してマイナスではない。ユーザーも歓迎だ。真逆の戦略をとっているのがキヤノン。主力のミラーレス用RFマウントレンズでは、販売本数の98.7%がキヤノン製だ。サードパーティーレンズはほとんどない。そのためか、RFマウントレンズのシェアは1桁台で低迷している。今後のボディーの売れ行きにも影響してきそうだ。
 

 カメラメーカーにとって、レンズマウントはユーザー囲い込みの強力な武器だ。しかしメーカーの論理だけではユーザーはついてこない。遠い過去、VHSとベータマックスの規格競争で敗れ、メモリースティックでのユーザー囲い込みに失敗したソニーが、レンズでは規格を外部に積極提供。Eマウントレンズ連合を形成しようとしている点は興味深い。ニコンもマウント規格の外部提供に舵を切った。残るはデジカメのトップシェアメーカー、キヤノンだ。彼らの決断を静かに見守りたい。(BCN・道越一郎)