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交換レンズ市場が激しい首位争いで五つどもえ、マウント別では別世界

 交換レンズのシェア争いが激しくなってきた。この2月の販売本数シェアでは、トップのキヤノンから5位ニコンまでが僅差でひしめき合っている。ミラーレス一眼の好調でレンズ交換型カメラは復調してきたが、交換レンズはカメラに先立って好調に推移している。しかし、マウント別の販売動向を見ると、メーカーシェアとはまた別の姿が見えてきた。全国2300店舗の実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。


 交換レンズのトップシェア争いは「五つどもえ」状態に突入している。特にこの2月は5社のシェアが大接近した。トップキヤノンの販売本数シェアは17.1%、以下シグマ(16.0%)、タムロン(15.1%)、ソニー(14.2%)、ニコン(13.8%)と、1位から5位までのシェア差は、わずかに3.3ポイントだ。少し遅れて追いかけているのがOMデジタルソリューションズ(OMD、8.6%)、パナソニック(4.6%)、富士フイルム(4.2%)という状態になっている。しかもこの1年、トップはめまぐるしく入れ替わった。首位を獲得した回数はキヤノンが5回、ソニーが5回、タムロンが2回と、まさにデッドヒートだ。

 交換レンズ市場自体は好調だ。2021年3月以降、おおむね前年並みか前年を上回るペースで市場が回復。特に販売金額では21年11月以降16カ月連続で2桁増を維持している。この1年でも昨年10月に販売本数前年比で123.0%、金額では140.2%と大幅拡大したのを筆頭に、大幅増で推移している。この2月も販売本数が119.2%、販売金額でも117.3%と2桁増を維持した。スマートフォン(スマホ)とカメラの違いとしてまず挙げられるのがレンズ交換。好みのレンズを付け替えて、撮影を楽しめるのはレンズ交換型カメラの大きな楽しみだ。スマホにはないものを求め、レンズ交換型カメラに人気が集まり、交換レンズ市場が活況につながっている。

 交換レンズは、取り付けられるカメラ毎に、いくつかのマウントが存在する。マウント別の販売本数シェアを見たところ、僅差で交錯する交換レンズのメーカーシェアとは大きな違いがある。現在、マウント別でトップを走っているのがソニーのミラーレス一眼用のEマウント。1年を通じて3割から4割のシェアで推移しており、2月現在では32.6%。2位以下と大きな差をつけてダントツだ。ソニー製ミラーレス一眼の人気が高いことに加え、ソニーがマウント規格を公開していることから、タムロンやシグマもEマウントレンズを販売していることも、シェア獲得の一因といえる。
 

 実際、この2月の交換レンズ販売本数ランキングのうち、ソニーEマウントレンズに絞ったランキングでは、トップはタムロンの「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071)。2位にソニーのFE 20-70mm F4 G(SEL2070G)と、タムロン製のレンズがソニー純正レンズを上回っている。そればかりか、ソニーEマウントレンズの販売TOP10のうち6本がタムロン製、ソニー製が2本、シグマ製が1本という状態だ。マウント別シェアで2位につけているのがマイクロフォーサーズ。この2月で13.8%だった。オリンパスやパナソニック、Blackmagic Designなど複数社が採用しているマウントだ。

 マウント別のシェアは以下、3位がキヤノンの一眼レフ用EF(11.4%)、4位がニコンの一眼レフ用F(9.3%)、富士フイルムのミラーレス一眼用X(8.8%)と続く。一方で、ニコンのミラーレス用Zマウントは8.5%、キヤノンのミラーレス用RFマウントは7.7%とXマウントの後塵を拝している。富士フイルムのXマウントは規格が公開されているが、キヤノンやニコンのマウント規格は非公開だ。そのため、ミラーレス用レンズのバリエーションがなかなか広がらず、マウント別シェアも伸び悩んでいる。

 カメラメーカーにとって、マウント規格はある種の生命線。ボディーとレンズでどのような情報をやり取りするかは秘中の秘だ。おいそれと公開することはできない。当然、他社の参入は阻止できる。とはいえ、ユーザーにとっては、レンズの選択肢が限られるというデメリットもある。タムロンやシグマといったレンズメーカーの製品はここ数年で格段に品質が向上した。安いレンズを提供するということではなく、純正レンズとは一味違うバリエーションを提供する存在にステップアップしたわけだ。ボディは消耗品だがレンズは資産とも言われる。カメラメーカー各社は、戦略的マウント規格公開ということも、そろそろ考えていい時期ではないだろうか。(BCN・道越一郎)