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値上げでソニーのシェアが急降下、それでも回復の兆し見えるICレコーダー

データ

2023/03/05 18:30

 ICレコーダー市場に回復の兆しが見えてきた。2月の販売前年比が台数で105.2%、金額でも105.1%といずれも前年を上回った。台数と金額がそろって前年を上回ったのは昨年8月以来だ。全国およそ2300店舗の家電量販店やカメラ量販店、オンラインショップなどの実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。


 ICレコーダー市場は、スマートフォン(スマホ)の録音機能に押され劣勢だ。さらに、コロナ禍で会議や習い事などがオンライン化。PCなどの代替手段でも記録がとれるようになり、市場が冷え込んでいた。この2月の販売台数は2020年2月比では54.2%とほぼ半減。しかし、コロナの影響が徐々に薄れるとともに状況が好転。前年比ではプラスに転じた。

 ICレコーダー市場を左右するもう一つの要因として、ソニーの値上げがある。昨年9月、デジカメや交換レンズなどと同時に、ICレコーダー8機種の値上げに踏み切った。平均値上げ率は約8%。この副作用で、昨年9月の値上げを前に駆け込み購入が生じ、8月の販売は台数、金額とも一時拡大。しかし10月には前年割れに逆戻りした。さらにこの2月、ソニーは前回よりも大規模な値上げを実施。品目数は倍増し値上げ幅も14%と拡大した。ICレコーダーも8機種が対象になり、うち7機種は前回に続き2回目の値上げ。ただ、この1月、2月には昨年夏のような現象は起こらなかったようだ。
 

 値上げで、ソニーのメーカーシェアは急降下した。2022年前半は4割以上のシェアを確保しトップをひた走っていたソニー。7月、8月とOMデジタルソリューションズ(OMD)に抜かれたものの、1桁ポイントのシェア差で踏みとどまっていた。しかし、ソニーが値上げを断行した9月、同社の平均単価は1万1400円から1万3700円まで2割上昇。このため1位OMDのシェアは56.7%まで急上昇した。逆にソニーは25.7%まで落ち込み、シェア差が31ポイントまで広がった。その後、ソニーのシェアは翌10月を底に徐々に回復しつつあったが、2月に実施した再度の値上げでブレーキがかかった格好だ。

 昨年2月比で平均単価の上昇率を見ると、ソニーは17.4%上昇したのに対し、OMDは9.0%の上昇にとどまっている。3位ティアックに至っては逆に16.0%下落している。こうしたまちまちの状況から、市場全体ではこの1年で3.9%の価格上昇にとどまった。ソニーの度重なる値上げにもかかわらず、市場全体の販売台数と金額がプラスに転じた意味は大きい。特に貢献度が大きいのはOMDだ。2月は販売台数前年比で163.4%と大幅に売り上げを拡大。ソニーの開けた穴を埋めてさらにおつりが来ている状況だ。スマホに押されながらも、ICレコーダーは一定の存在意義を維持できているようだ。(BCN・道越一郎)