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「How was your weekend?(先週末はどうだった?) 」から始まる月曜日

暮らし

2022/04/05 12:00

【私の留学生活日記:ロンドン芸術大学・3】 ロンドン芸術大学のカリキュラムには「インターンを1年間できる制度」が含まれています。私はそれを2年間に延長し、スペインのZARAの本社で4カ月間、イギリスのROKSANDAというブランドで1年弱、イギリスにある日本人が経営する縫製スタジオで3カ月ほどインターンを経験しました。

ROKSANDAでスタッフの誕生日パーティーが行われていた時の様子
「先週末はどうだった?」から始まる会話の大事さ  職場環境は国によってさまざまでしたが、ZARAとROKSANDAで共通していたのは、毎週月曜日、職場に着くと「おはようございます」の次に「先週末はどうだった?」と聞かれることでした。当時は、何の抵抗もなく応えていましたが、海外から離れて日本で働いてみると、「先週末はどうだった?」から始まる会話の大事さに気づきました。
 
ZARAでチームメンバーのデスクに集まり談笑している様子

 ZARAの本社がスペインの小さな港町にあることもあり、英語が話せるデザイナーは多くなかったですが、親切にも私に英語で「先週末はどうだった?」と話しかけてくれる人もいました。その小さなきっかけから、港町内の美味しいレストランのリストやおすすめのお出掛けスポットを教えてくれたり、「How was your weekend?」という問いかけが、デザインチームに溶け込むための私のパワーワードになりました。毎週月曜日は平気で1時間も、週末の話で持ちきりになるほどでした。

会社の同僚はセカンドファミリー

 ある日のこと、チームにいたデザイナーが仕事中に突然泣き出しました。原因は家族のことだったようですが、みんな仕事の手を止めてそのデザイナーの話に耳を傾け、そして慰めました。個人的な悩みなども上司に直接相談をしたり、仕事を越えた仲間として信頼しあえる環境でした。

 同じように、ROKSANDAの職場に着くと、それぞれのスタッフが「先週末はどうだった?」とお互いに話しかけあい、「母の家に行ったよ」とか「こんなところに出かけたよ」、また素直に「ただただ家で映画を観てたよ」など、変に取り繕う必要はありませんでした。

 デザイナーのROKSANDA自身がスタジオにやってきて、「みんな聞いて!先週末、この映画を観に行ったの。すごくおすすめよ」と、自らスタッフを集めて談笑を始めることも日常茶飯事でした。

 お互いの誕生日や観ているドラマのシリーズを知っていたりと、スタッフ間での自然な会話が多く、インターンであった私にもデザイナーの方々との距離が近くに感じられました。

 日本での天候の話が、コミュニケーションのきっかけになるのと同じ感覚かもしれません。しかしながら、私が実際に海外の会社で働いてみて感じたことは、みんなそれぞれが会社の同僚をセカンドファミリーのように思っているということです。

 大学では、校舎に着くとみんなが各々に作業に取り掛かるため、お昼の食堂で初めて友人を見かけたり、プレゼンテーションの日までクラスの人たちに会わないこともよくありました。一方で、インターンでの職場は、チーム全体が協力しあってコレクションを創り上げるので、スタッフ間の良好な関係を築くために、コミュニケーションは重要なツールでした。

 日本では、お酒がないと仕事の本音が話せないとよく聞きますが、私は海外の職場でみんなの本音をよく聞いていました。そのせいもあって勤務中にスタッフ間の口論や、スタッフ同士が喧嘩をして泣いてしまったりと、仕事が捗らないこともありました。しかし、お互いが自身の意見をしっかりとぶつけあうことで、チームで創り上げていく服は誰か一人の意見に偏ることなく、みんなが納得のできるものへと導かれていました。 
 
ROKSANDAで行われたハロウィーンパーティーの様子

 私が経験した海外のインターン先は、圧倒的にコミュニケーションの量が多かったです。そして半分は仕事に関係のない話でした。私自身、自分の上司と口論になったこともあります。

 しかしながら、毎日本音で仕事をし、より良いコレクションを創りあげるために、ミーティングに惜しみなく時間が割かれていました。良い職場環境を築くためには、コミュニケーションは必要不可欠です。職場の同僚は、気づけば家族よりも長く同じ時間を過ごしている人たちであり、職場環境は家庭内にも影響されます。

 天候の話は確かに誰とでも気兼ねく話すことができる内容ですが、天気は毎日さほど大きな変化はありません。「How was your weekend ?(先週末どうだった?)」でいつもとは違う会話を始めてみてはいかがでしょうか。

 職場の同僚間の距離はもう少し近くなってもいいのではないかと私は思います。仕事とプライベートを分けることは大事ですが、仕事仲間をセカンドファミリーのように思えるような環境があるといいですね。(テキスタイルデザイナー・marikaanna<マリカアンナ>)

■Profile
marikaanna(マリカアンナ)
2021年ロンドン芸術大学、セントラル・セント・マーチンズのファッションプリント学科を卒業。現在はテキスタイルデザイナーとして活動。ロンドン芸術大学での留学生活、インターンとして働いたINDITEX ZARAの本社での日々のこと、ロンドン留学のためのお役立ち情報などをお伝えします。