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楽天経済圏のパスポート リアル進出後の「楽天ポイント」の歴史を振り返る

 楽天は、提供するポイントプログラム「楽天ポイント」の累計発行ポイント数が2兆ポイントを突破したと9月24日に発表した。官民挙げてのキャッシュレス決済の普及促進に向けた施策を受け、ポイント経済圏の拡大が加速。2019年は、年間3200億ポイント以上発行する規模となった。1ポイント1円相当として利用できるので、全て買い物やポイント投資に利用されたと仮定すると、1年間で3200億円相当、過去16年で2兆円相当の経済効果を生み出したといえる。

楽天ポイントがたまる楽天ポイントカード・アプリ

 楽天によると、複数サービス利用率(クロスユース率)は、3年前の64.9%(17年6月)から72.3%(20年6月)まで上昇。クロスユース率の増加は、「楽天モバイルの契約」「楽天証券のポイント投資」「楽天トラベルの宿泊利用」など、楽天グループサービスの利用状況に応じて「楽天市場」の付与ポイント倍率が上がる「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」や、「スタートボーナスチャンス」として新しいグループサービスを使うたびに1000ポイントプレゼントといった施策が奏功したためと分析している。
 
2020年9月時点で、SPUの最大倍率は16倍。頻繁に対象や条件は変わり、
10月1日からもRakuten Fashionの達成条件が変わる

14年10月にプレ、15年11月に実質スタートした楽天ポイントカード

 楽天ポイントの転機は、02年の「楽天市場」でのサービス開始から12年が経過した14年。歴代iPhoneの中でも最終的にかなり売れた「iPhone 6」の発売直後の10月1日、楽天グループと提携している街の加盟店で使える共通ポイントサービス「楽天ポイントカード(当時はRポイントカード)」を開始した。この時点で、オンラインだけの「楽天グループのポイントサービス」から、当時Tポイントが先行していた、さまざまな店で使える・たまる「共通ポイントサービス」に舵を切った。
 
楽天ポイントのあゆみ

 15年11月には、認知度向上のため現在の名称に変更し、疑問視されたネット(オンライン)とリアル(オフライン)の連携に、実質初めて成功を収めた。これまで実店舗をもつ小売業のネット進出はおおむね失敗しており、逆方向だからこそ歯車がかみ合ったようだ。

 一部のポイントサービス導入企業では、オリジナルデザインのプラスチック製カードを発行、レジやカウンターなどで無料で配布している。無料配布の楽天ポイントカードは、楽天ユーザーIDに紐づける登録を行わない限り、ためたポイントが使えないため、今まで楽天のサービスを使ったことのない新規登録数増に一役買っているはずだ。

 なお、同じ15年11月にソフトバンクなど5社は、11月11日を「いい買い物の日」に制定し、以降、毎年、ネットとリアルを横断した大規模セール・キャンペーンを実施している。両陣営とも5年前の仕込みがここ1、2年で急に実を結びつつある。
 
最近も「サンマルクカフェ」などを運営するサンマルクグループが導入。
サービス開始記念のポイント2倍キャンペーンを10月14日まで実施している

デジタル時代のパスポートは共通ポイントとひもづくID

 無料で誰でも作れる楽天ユーザIDは、いわば楽天経済圏のパスポート。いったんIDを作成すれば、インターネットショッピング、動画配信、ポイント投資(楽天ポイント運用by楽天PointClub)など、さまざまなサービスが簡単に始められる。

 その結果、17年には累計発行ポイント数1兆ポイント突破し、その後わずか3年で発行量1兆ポイントを積み上げ、累計2兆ポイントを突破した。ここ5年間で増えた、ネットとリアルを連携した共通ポイントによる囲い込みは、やはり楽天が他社をリードしているように感じる。(BCN・嵯峨野 芙美)