7月14日に決定した、国の今後1年をめどとした行動計画「観光ビジョン実現プログラム2020」の全文は長いが、概要はPDFファイル3ページ分にコンパクトにまとまっている。

 観光ビジョン実現プログラム2020は、2019年8月から今年6月にかけて「観光戦略実行推進会議」を計6回開催し、有識者からの意見などをもとにまとめたもの。「新型コロナウイルス感染症により深刻な影響が生じている観光関連産業の雇用の維持と事業の継続に対する支援」「観光需要の回復に向けて反転攻勢に転じるための基盤の整備」「日本の観光消費の8割を占める国内旅行需要の喚起」「インバウンドの回復」を打ち出し、国内外の新型コロナウイルス感染症の感染収束を見極めつつ、厳しい状況にある観光関連産業を盛り立てていくとしている。
 
日本の観光消費の8割は国内旅行が占める

 旅行代金の割引と地域共通クーポンの配布(9月以降、開始日未定)との2本立てで、宿泊・日帰り旅行費用の2分の1相当を補助する「Go To トラベル事業(Go Toキャンペーン)」は、感染症対策の観点から中止・延期するべきというSNS上などの声が、7月17日の国土交通省大臣の発表をもって「当面の間、東京都発着の旅行や東京都在住者は支援の対象外とする」「若者や高齢者の団体旅行は支援の対象外とする」という妥協点で落ち着いたが、観光ビジョン実現プログラム2020で打ち出した「観光需要の回復に向けて反転攻勢」の出鼻をくじく結果になったのではないか。

 家電量販店・オンラインショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、デジタル家電の販売は特需に沸くカテゴリと、急落するカテゴリに二極化が顕著であり、カメラ本体とカメラ関連のアクセサリは後者に分類される。もし、Go Toキャンペーンが、当初の発表通りの規模で7月22日からスタートしていたら、もしかすると、中には「観光時にはやはりいいカメラが欲しい」とニーズがあり、今年後半から販売台数が急回復する可能性があったかもしれない。
 
今年4月・5月は、前半に比べ大幅減となったデジタルカメラ。回復には「爆売れ」が必要となる

 そもそも開始まで1週間を切っており、現場の混乱は必至だ。7月15日付で最新版に更新した「Go To トラベル事業」の概要には、しっかりと「旅行需要の平準化」「有給休暇の積極的取得」「ワーケーション(働きながら休暇を取る意の造語、休暇を兼ねてリモートワークなどを行う)」「滞在型旅行の促進」「『新しい旅のエチケット』の定着」といった、ここ数年進めてきた働き方改革や、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた上での施策と明記されている。

 観光客が集中する時期や人気の観光スポットをあえて外し、一人または少人数でアクティビティや伝統文化の体験、雄大な自然の風景などを楽しむ地元密着の滞在型の旅を誰もが楽しめるような「豊かな社会」を目指す。観光ビジョン実現プログラム2020の内容は、実現可能かどうかはさておき、目指すべきビジョンとしては理想的だと感じる。新型コロナをきっかけに縮小に拍車がかかるカメラ市場の回復のきっかけとしても、Go Toキャンペーンは制限なく実施するべきだったのではないかと「東京除外」の例外措置を残念に思う。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。