千葉大学大学院の工学研究院である中田敏是助教が参画する国際研究チームは、蚊が自らの羽ばたきで生み出した気流のわずかな変動を感知することで、暗闇でも障害物を避けて飛行できるメカニズムを実証した。同成果は、国際科学誌『Science』で日本時間の5月8日に公開されている。

蚊の羽ばたきによって地面付近の気流が変化している様子。赤色は特に気流変動が大きいことを示している

 蚊は、暗い部屋の中でも自由に飛び回り、実験でも蚊が暗闇で周囲の障害物を避けて飛べることが観察されていたものの、そのメカニズムは未解明だった。

 一方、蚊の触覚の根元には11nmの空気の振動によって生じる0.005°の触覚のふれに反応できる「ジョンストン器官」と呼ばれる特殊な器官があることが知られている。
 
高速度カメラで撮影した飛行中の蚊

 英王立獣医大学、ブライトン大学、リーズ大学の研究者らが参画する国際研究チームは、蚊が暗闇でも障害物を避けて飛行可能なのは、身体に備わる超高感度センサーによって、自らの羽ばたきが起こした気流の歪みを検知しているのではないかとの仮説を立て、これまでに中田助教が高速度カメラによる3次元運動測定とシミュレーションによって明らかにしていた、蚊の飛行メカニズムなどの先行研究データを利用し、数値計算によって蚊の羽ばたきによって生じる気流を再現。壁や床の存在による触覚付近の気流の変動を調べた。

 結果、蚊の触覚の感度なら、体長4mmほどの蚊が体長の10倍近い距離である約30~40mm離れた場所の気流変動を感知し、壁や床などの障害物を検知できる可能性があることが明らかになっている。

 この知見をもとに、同チームの研究者がドローンを使ってプロペラが起こす気流の変動検知の機能を評価したところ、蚊と同様に壁や床の検知が可能なことが実証された。

 中田助教は、今回の研究成果が蚊を寄せ付けない新たな手法の開発につながるのではないかと期待を寄せるとともに、今後、蚊の飛行特性の解明に大きな役割を果たした、千葉大学の劉浩教授が開発したシミュレータを活用して、他の飛行機能を持つ生物と比較しながら、より詳細な蚊の飛行特性の解明を進める、としている。