【なぐもんGO・45】 ドローンメーカーとして有名なDJIはアクションカメラも手掛けている。日本で発売したのは2019年5月だ。ただ、日本のアクションカメラ市場はGoProの独壇場。全国の主要家電量販店・ネットショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」によると、同社の2019年の年間販売台数シェアは75.6%と圧倒的だ。なぜそのような市場にDJIは飛び込んだのか。DJIに“航路”を聞いてみた。

DJIがアクションカメラ市場に参入した背景を川中ディレクターに聞いた

空撮の普及にハードル

 DJIが得意とするのは、ドローンに搭載されたカメラで撮影する空中撮影技術だ。最近では、写真やテレビ番組、ドラマ、映画などでも活用されている。同社の川中良之コンシューマーマーケティングディレクターは、「DJIはもともと、ドローンのみを手掛けていた。使い道はさまざま考えられたが、目立っていたのが空撮。しばらくは某有名メーカーのアクションカメラを搭載して撮影していたが、柔軟にビジネスを展開するためにカメラも自前で用意した」と経緯を語る。

 空撮は地上撮影に限界を感じていたクリエイターやガジェット好きのアーリーアダプターの興味を引きつけたが、パイはなかなか広がっていない。「安全のためにドローンの飛行自体が規制されている場合が多く、一般の消費者が使える場面は限られている。また、空撮に興味を持ってもらうための機会を増やすことも難しい」(川中ディレクター)。

 一般消費者に広めるには体験してもらうことがもっとも効果的だが、空撮の魅力を体験するまでには「ドローン飛行が可能な場所に移動しなければならない」というハードルがある。街中で網に囲まれた小さい空間で飛ばしていることもあるが、真価を発揮するのは難しい。現状では、体験で興味を惹くには限界があるのだ。
 
空撮の作品はDJIの公式サイトの至る所に散りばめられている

 そこでDJIは、別のアプローチを考えた。地上撮影に限界を感じるクリエイターを量産しよう、という計画だ。

動画ファンの醸成へ

 DJIは空撮事業を続けながら、地上撮影にも力を入れ始めた。ドローンによる撮影は常に風にあおられている。映像がブレてしまうので、姿勢制御技術に加え、カメラを安定させるジンバルや高いブレ補正技術が求められる。そこでドローンで培った技術を惜しみなく搭載したカメラやジンバルを開発し、市場に投入した。

 こうして生まれたスマホ用の手ブレ補正ジンバル「Osmo Mobile」シリーズや、ジンバル一体型のカメラ「Osmo Pocket」は大ヒット。まずは狙い通りに写真を撮影するように動画を楽しむユーザーを増やすことに成功した。ここからDJIのカメラで撮影を楽しむ人たちが、同じ会社のドローンでもっと面白い撮影もできる、と気づかせるのが次のフェーズだ。
 
「Osmo Mobile 3」(左)と「Osmo Pocket」

 その計画の一環がアクションカメラだ。DJIの「Osmo Action」は形状こそ一般的なアクションカメラと変わらないが、前面に液晶ディスプレイを搭載しているという点で大きく異なる。アクションカメラでも出来映えを確認しながら“自撮り”できる設計は、現代のスタイルにピッタリだ。専用アプリ「DJI Mimo」には、簡単に動画を編集できる機能を載せ、初心者でも動画制作を楽しめるよう工夫した。
 
DJIのアクションカメラ「Osmo Action」

 つまり、DJIにとってのアクションカメラは、空撮ファンへの“滑走路”のひとつ、ということだ。川中ディレクターは、「撮りたいものから機材を選ぶ時代になってきているので、空撮で何を撮影したら面白いのか、どのような場合に空撮が生きるのかを積極的に伝えていきたい」と語る。ファンが“テイクオフ”したくなるほど魅力的な空撮コンテンツを用意できるかが、今後の進路を左右しそうだ。(BCN・南雲 亮平)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。