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「高額転売チケット」撲滅へ、Spotifyとイープラスがパートナーシップ締結

経営戦略

2019/07/30 14:30

 世界大手音楽ストリーミングサービスのSpotifyとチケットサービス運営のイープラスは7月30日、両社のアプリやサイト機能を相互に連携させて、音楽聴取履歴やユーザーの嗜好に応じたパーソナライズされたコンサート情報をSpotifyアプリでユーザーに提供するサービスなどでパートナーシップを締結した。高額転売チケットは、スポーツに限らず音楽業界でも共通の課題。両社が撲滅に向けて連携を強化させた。

Spotifyジャパンの玉木一郎社長(左)とイープラスの倉見尚也社長

 まず、Spotifyのアーティスト情報ページにコンサート情報が表示されるようになった。公演予定を確認して「チケットを探す」のボタンをタップすると、イープラスのチケット販売サイトにリンクし、販売状況が確認できる。その場で購入するには、無料登録のイープラス会員になる手続きをした後にログインして購入できる。
 
Spotifyアプリにコンサート情報が加わった

 ほかにも、Spotifyの検索ページ内に「コンサート」コーナーを開設。SpotifyのAI(人工知能)技術を使って、ユーザーの音楽聴取履歴に基づく「おすすめ」のコンサート情報が一覧で表示される。
 
検索ページのトップにコンサート情報が表示

 Spotifyのユーザー登録時に所在地を設定すると、周辺で開催されるコンサート情報が世界でリスナー数が多いアーティスト順に「付近で人気」として一覧表示される機能も搭載した。
 
アーティスト検索からもコンサート情報が入手できる
 
チケットの購入はイープラスのサイトとシームレスにつながる

 イープラスからSpotifyへの連携も強化。チケット販売サイトのイープラスだけでなく、同社が運営する音楽情報メディア「SPICE」や各種フェス情報アプリからSpotifyと連動する。

 例えば、気になるアーティストの曲はSpotifyを通じてその場で視聴できる。コンサートや音楽フェスに参加する際の予習や終了後の余韻に浸って楽しむことなどができる。両社は視聴を通じて、これまでユーザーが知らなかったアーティストや音楽と接点を持たせることで新規ファン化の掘り起こしを狙う。

 さらに、Spotifyでお気に入りのアーティストのヘビーリスナーに対して、イープラスによるチケット先行販売をSpotifyユーザーにプッシュで案内する「FANS FIRST」プログラムを、国内のアーティストで本格的に開始する。

 Spotifyジャパンの玉木一郎社長は、「サービスを開始してから10年以上が過ぎ、無料で、かつ合法でアーティストにとってもお金になるビジネスモデルと提供してきた。今後は、ライブのリアルな体験を通じて熱量の高いファンやリスナーのすそ野を広げていきたい」と両社のパートナーシップに期待を寄せた。

 イープラスの倉見尚也社長は、「当社は20年前の今日、7月30日に設立した。感慨深い。当時のネット普及率は20%で、多くのチケットはまだ電話で売られていた。われわれは、いち早くネットを主軸にしたサービスを立ち上げた。ITを活用したデータマーケティングで、単にチケットを仕入れて販売するだけでなく、ライブエンターテインメントをいろんなユーザーに身近に提供してきた」と語りながら、同社が展開する各種ネットサービスを紹介した。

 両社の新しいサービスの提供によって、音楽業界が抱える次の三つの課題を解決していきたいとする。一つは、高額なチケット転売をどう抑制するか。もう一つは、特定のアーティストしか興味がないユーザーが、同じアーティストのコンサートに繰り返し行くことで業界全体が縮小していく課題。最後がカジュアルなリスナーがコンサートに足を運ばないというものだ。

 アーティストとリスナーの距離がSpotifyとイープラスのサービスを通じてより身近になれば、わざわざオークションサイトなどを通じて高額な転売チケットを購入しないで済むようになるかもしれない。