「BCN+R」編集部では年末企画として、編集長・編集キャップ・編集部員3名の計5名が今年のトレンドを振り返る座談会を企画。今回は、5回に分けて公開してきた最終回となります。

18年12月に実施したBCN+Rの編集部座談会

昨年はスマートスピーカーで盛り上がったが

 家電量販店の本部を取材すると、あいさつ代わりに聞かれるのが「売れそうな面白い商品ない?」という言葉だ。バイヤーたちの頭の中でイメージするのは、例えば2013年に発売されたフィリップスのノンフライヤーのような商品だ。

 ノンフライヤーは、油を使わずに素材に含まれる脂質や水分だけでおいしく揚げ物が作れる家庭用調理機器として、「ヘルシー家電」という新しいジャンルを開拓し大ヒットした。健康を気遣う高齢者ばかりでなく、料理をするファミリー層にも受け入れられた。販売サイドからは、そうした商品を渇望する声が大きい。

 例年だと年末に、翌年注目されそうな商品が登場するのだが、今年はそれがないことに懸念する声があがった。「今では当たり前のように話題になるスマートスピーカーが日本に入ってきたのは、ちょうど1年前の秋。今年はそのように大きく盛り上がる商品がなかった」。
 

 ビックカメラやヤマダ電機でスマートスピーカー「Google Home」の販売を始まったのは17年10月のこと。11月に音声アシスタント「Amazon Alexa」を搭載した「Amazon Echo」が日本に上陸。18年4月からエディオンやケーズデンキ、上新電機などでも扱われるようになり、新規参入メーカーや周辺アイテム、対応する家電製品などが登場して広がった。

 今年ブレイクした商品に、完全ワイヤレスイヤホンやドライブレコーダーなどがあるが、実は製品が登場したのは17年のことだ。そうした意味で、今年は19年に向けた仕込みが弱いのではないだろうか。

キラーカテゴリーが生まれにくい環境に

 これまでテーマにしてきたIoTやeスポーツ、クラウドファンディング、キャッシュレスなども、どちらかといえばモノではなくコトに絡むケースが多い。消費のモノからコトへの流れを反映した形だ。

 クラウドファンディングのテーマでも語られたことだが、消費者のニーズが多様化、細分化して、大手家電メーカーによるマスプロダクトやマスマーケティングによる力業が通用しにくくなっているので、そもそもキラーカテゴリーやメガヒット商品が登場しにくい環境にある。

 企画から開発、製品化、市場投入までのスピードが重視される中、メーカー1社が一気通貫で事業展開するには時間も費用もかかってしまう。ソニーが自社の新規事業創出プラットフォームで、スタートアップを支援する動きや、パナソニックが自社で実現できなかった新規事業をいったん社外に放出して、投資会社と組んで共同出資する形で事業化を支援する動きなども、こうした市場環境やモノづくりのスピードの変化を受けてのことだ。
 
パナソニックとスクラムベンチャーズが共同出資したBeeEdgeの第1号案件は
ミツバチプロダクツのホットチョコレートマシン

 座談会では「みんなが同じものを求めているのではなく、その人にだけ刺さるニーズをかき集めるのがクラウドファンディング」という意見もあり、まさに「インダストリー4.0」が叫ばれているように、モノづくりの在り方が大きく問われている。

 一方でそうした流れを逆手に取る動きも出てきている。新しいサービスにまつわる周辺アイテムやグッズに着目する手法だ。例えば、キャッシュレス決済が浸透すれば現金を持たない人が増えるが、12月に全国規模で発生した通信障害のような緊急時の対策として、多少の現金を持ち歩くためのコンパクトな「スマート財布」などだ。
 
モノづくりが変わっている状況も座談会で語られた

 スマート財布がコンパクトなら、さらに逆に6インチの大画面スマホがまるごと入りカード入れを充実させた「スマホも入る長財布」などもある。発想としては、「ポケモンGO」というイベント(コト)が流行したら、それに連動してさまざまなモバイルバッテリーのモノが登場したように、コトを軸に据えて素早く反応するモノづくりが求められている。

 19年は消費増税前の駆け込み需要が期待されるが、外部要因に頼るだけでなく、次の新しい動きを見越した取り組みも積極的に取り入れていきたい。(BCN・細田 立圭志)