12月のある夜、コンパクトデジカメの「先行内覧会」が開かれた。発売日未定、価格未定、詳細スペックもまだ完全に固まったわけではない……。そんなコンパクトデジカメの「先行内覧会」が開かれるのは極めて異例だ。イベントの名は「GR NIGHT」。来春発売予定の「RICOH GR III」の試作機をお披露目した。新宿にあるリコーのショールーム、定休日に密かに開かれたイベントには、メディア関係者や写真家なども含む多くのGRサポーターが集結した。

来春発売予定のGR III。前モデルからストロボが取り除かれた一方、
約2424万画素と画素数が大幅に増えたためセンサーシフト式の手ぶれ補正をシリーズ初導入する

 イベントでは2つの事実が明らかになった。一つは9月に行った開発発表では空欄になっていた最高感度が102400に落ち着きそうなことで、試作機のメニュー画面で明らかになった。もう一つは価格が10万円を超えることだ。

 一部で期待を込めて10万円を切るのではないかとの憶測も流れていたようだが、会場でミスターGRこと、リコーのSmart Vision事業本部カメラ事業部商品企画部の野口智弘 副部長は「今のリコーの力では10万円を切ることは不可能」と明言。おおよその価格帯が明らかになった。しかし10万円を超える単焦点レンズのコンパクトデジカメが本当に売れるのだろうか……。

 コンパクトデジカメの縮小は進んでいる。全体では販売台数前年比80%前後という厳しい状況だ。しかし、税別平均単価10万円以上の高価格製品を見ると、このところ大きく伸びている。販売台数構成比はわずか2%弱という小さな市場だが、今年に入ってからも、9月には191.6%と2倍近い伸びを示すなど、着実に広がってきた。もう少し範囲を広げ、「5万円以上」を高価格帯とすると、8月以降、2ケタ成長が継続。販売台数構成比も安定的に5%を上回り、6%前後で推移しており、今後の成長市場としての期待が高まっている。
 

 1996年に発売したフィルムカメラのGR1から連綿と続く希有なブランド「GR」。衰えない人気の秘密は、カメラのあるべき姿の一つが表現できているからだろう。普通の人が使う普段使いのカメラの役目はスマートフォン(スマホ)が負うようになった。しかし、カメラ本来の機能に特化したGRはスマホと競合する製品ではない。こうした背景を考えれば10万円を超える価格であっても一定の販売は見込めそうだが、どの程度の成功を収めるかで、高価格帯コンパクト市場の今後を左右することになりそうだ。

 高価格帯のコンパクトと言えば、この夏、富士フイルムがGRに近いコンセプトを持つXF10をリリースしたのは記憶に新しい。とはいえ、新たな市場を切り拓いていくにはまだまだ製品数が足りない。このままでは芽が出つつある高価格帯コンパクトの成長を加速させるのは難しいだろう。今年はレンズ交換型ミラーレス一眼の新製品発表が相次ぎ、次の成長市場として注目を集めたが、コンパクトにもまだまだ可能性は残されている。新市場の開拓にはメーカー各社の挑戦が不可欠だ。(BCN・道越一郎)


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