音楽や動画のストリーミング配信、オンラインゲーム、業務用アプリケーションなど、月額定額制のサブスクリプションモデルが定着しつつある。その領域はいまやソフトウェアにとどまらず、ハードウェアにまで広がってきている。総合家電メーカーのパナソニックは最新テレビを定額で提供する「安心バリュープラン」でサブスクリプション型のビジネスモデルを開始。将来の家電ビジネスを見据えて動き始めている。

家電は「所有」から「利用」する時代に? 普及の鍵を握るのはIoT

 ハードウェアの定額制サービスというと、「カーシェアリング」をイメージする人が多いかもしれない。カーシェアの情報比較サイト「カーシェアリング比較360°」によると、カーシェアサービス主要5社の会員数は2017年末時点で推定120~130万人。成長速度は衰えておらず、20年までにさらに市場規模が拡大することが予想されている。

 一方で、定額制がうまくはまらなかった事例もある。AOKIホールディングスが8月に開始したスーツの定額制サービス「suitsbox」は、わずか半年足らずでサービスを終了。月額7800円でスーツ・シャツ・ネクタイをセットでレンタルできるサービスで、若者を中心に引き合いはあったもののシステム構築や運営コストが見合わなかったという。
 
AOKIのスーツの定額制サービス「suitsbox」はわずか半年足らずで撤退を余儀なくされた

 ハードウェアのレンタルは、在庫保管、定期的なメンテナンス、配送・設置など、コストアップ要因が多い。若者をターゲットとする以上、リーズナブルな価格も外せない要素だが、収益性を考慮するとなかなか難しい。パナソニックが展開する家電定額制サービスも、55型の有機ELテレビで初期費用9800円、2カ月目以降は7800円(3年契約の場合)とけして割安とはいえない。

 では、先行きは怪しいのか。記者は短期的に成果を上げるのは難しいが、長期的には新たな事業の柱になるのではないかと考えている。一つ目の理由は、家電のIoT化が急速に進んでいること。IoT家電は単体ではなく、複数の機器が連携することで真価を発揮するが、自宅の既存の家電を丸ごとIoT化するとなるとかなりのコストがかかる。また、音声制御の要となるスマートスピーカーは、モデルチェンジのサイクルも早い。この点、定額制のレンタルなら、少ないコストで導入でき、常に最新のものを使えるのでリーズナブルだ。

 二つ目の理由は、今後、住宅のIoT化も進むと考えられるからだ。17年ごろから徐々に登場し始めたIoT住宅のコンセプトモデルは、建物とIoTプラットフォームやIoT対応家電をセットにして提供することで、住まいそのものの価値を底上げ。競争の激しい賃貸住宅や、大手ハウスメーカーの新築注文住宅を中心に、今後、ますます注目を集めそうだ。
 
各社がIoT住宅関連の事業に着手し始めている

 パナソニックは、住宅のIoT化にも熱心に取り組んでいる。10月30日には住まい関連のカテゴリを横断するくらしの統合プラットフォーム「HomeX」の本格展開を発表。家電や住宅設備それぞれのハードウェアに組み込んでいたソフトウェアを統一し、IoTによる利便性を最大限高めることを狙う。

 「HomeX」を搭載した都市型IoT住宅「カサート アーバン」を発売したパナソニック ホームズの住宅展示場やショウルームでは、さっそく「HomeX」を訴求。このIoT住宅事業と家電定額制サービスの連携については記者の想像の域を出ないが、「常に最新の状態にアップデートする」というコンセプトは共通する。
 
パナソニックのIoTプラットフォームで司令塔の役割を担う「HomeX Display」

 新たなビジネスモデルが伸るか反るか。これを短期間で判断することは難しい。暮らしのあり方がダイナミックに変化していく中で柔軟に適応しながら、どのようにサービスを進化させることができるか。家計の固定費として毎月、支払っている住居費・光熱費・通信費のうち、光熱費に含まれる電気代は太陽光発電を導入すればほぼゼロにできる可能性がある。その浮いた分で、「ワンランク上の家電をレンタルする」ライフスタイル根付くかどうかが、成功の糸口になってくるだろう。(BCN・大蔵 大輔)