「格安スマホ」として登場したMVNOとSIMフリースマートフォンも今やすっかり定着した感がある。MMD研究所の2018年8月の最新調査によると、MVNOをメインとして利用している割合は11.3%。キャリアサブブランドの「Y!mobile」を合わせると回答者全体の16.1%となり、2割に迫りつつある。

2016年春の「実質0円」販売終了の影響を見る

 一時期、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3キャリアのスマートフォンの料金プランは、判で押したようにほぼ同じ金額で、期間限定のキャンペーンを適用すると、端末代と2年間の通信料金を合わせたトータルコストに若干の差が生じる程度だった。しかし、今は横並びではなく、厳密なコスト比較は難しくなった。

 2015年12月18日に総務省は大手3キャリアに向けた行政指導として、16年2月からMNP利用者に対してスマホを「実質0円」で販売する行為の中止を求めた。全国の家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、この影響で、駆け込み購入が発生した16年1月は販売台数前年同月比138.6%と大いに活況を呈したものの、2月は反動減で前年比82.5%と前年割れを喫した。
 
2016年2月は反動減で大幅な前年割れ。その後もしばらく販売台数は低迷した

 「BCNランキング」で当時の状況を振り返ると、2月は、メーカー別販売台数1位のAppleが前年比71.9%と、直近1年間で最大となる大幅減となり、ソニーモバイルコミュニケーションズに至っては同58.3%と、4割以上も前年を割り込んだ。一方、タイミングよく新製品を投入したシャープ、京セラは前年実績を上回り、影響は軽微だったようだ。

 安く最新の端末を手に入れられる「実質0円」の終焉で伸びたのは、ファーウェイやASUSなどが手がける、SIMフリーのAndroidスマホ。ただ、低価格を武器に、一度は大きく伸び、3強の一角をなしたプラスワン・マーケティングの「FREETEL」は、17年12月に民事再生を申し立て、経営破綻。MAYA SYSTEMが「FREETEL」ブランドは継承したものの、店舗でも大きなスペースを占め、広告宣伝が多かっただけに「格安スマホ/MVNO」のブームに水を差す結果になってしまった。

メーカーのパワーバランス激変のきっかけになる?

 政府の規制改革推進会議は11月19日に第4次答申を取りまとめ、その中で、「通信料金と端末料金の完全分離」「携帯電話サービスの契約や広告に関する分かりにくさを解消するためのルールの整備・運用改善」などを挙げ、それぞれ管轄する総務省や消費者庁、公正取引委員会に対し、今年度内に対応措置や解決策を示すように求めている。
 
規制改革推進会議の第4次答申の内容(一部抜粋)

 「実質0円」販売は、総務省の指導を受けて16年1月末で終了し、3月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を策定、4月に運用を開始した。今回の「通信料金と端末料金の完全分離」は、いつから、どの端末を対象に実施されるか、現時点では未定だが、実施直前に駆け込み購入が発生し、その後しばらく反動減による販売不振が続くと予想される。

 端末代と通信料金を分離したほうがいいという意見は、以前からスマホ好きの間で出ていた。しかし、今回の答申では、「通信料金と端末料金の完全な分離を図る」とあり、文面通りに読み取ると、「今後は分離プラン以外は認めない」と解釈できる。しかし、何事に対しても現状維持を望む層のニーズにあわせ、選択肢として「通信料金と端末代が一体となった従来の買い方」も残すべきではないだろうか。

 もし、本当に回線契約と端末販売が分離された場合、スマホの買い替えサイクルは現状のPC並みに長くなるだろう。消費税増税や格差拡大などの不満の矛先の転嫁にも見える一連の動きが、メーカーの撤退・再編やチャレンジングな端末の開発凍結につながらないかと危惧する。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。