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米アドビがECサイトシステム大手を1860億円で買収、広告と小売を統合へ

経営戦略

2018/05/22 17:00

 米アドビシステムズは米国時間の5月21日、ECサイト構築用のシステムを手がける米マジェントコマースを、16億8000万ドル(約1860億円)で買収すると発表した。アドビはマーケティング支援ツールのラインアップを拡充しており、その中にECサイト構築の機能が加わる。買収手続きは8月までに完了する見通し。

マジェント買収を伝えるアドビのブログ

 マジェントコマースは2008年創業。ECサイト構築ソフト「Magento」を開発しており、それを商用版とオープンソース版の両方で提供しているのが特徴。商用版では個別顧客へのプロモーションなど豊富な機能が統合されているほか、基本機能に絞ったオープンソース版でも、サードパーティの開発者によってつくられたさまざまな拡張機能が利用可能。中堅・中小企業だけでなく大企業による利用も次第に進んでおり、キヤノン、ヘリーハンセン、ポールスミス、ロゼッタストーンなどが導入しているという。

 アドビは「PhotoShop」などのコンテンツ作成ツールで知られるが、近年はネット広告・キャンペーンの管理や分析などを行う、デジタルマーケティング支援サービス「Experience Cloud」にも注力している。マーケティング支援事業は急成長しており、2017年度は73億ドルの同社売上高のうち、約28%の20億3000万ドルを占めるに至っている。

 アドビとマジェントはすでに協業関係にあり、コカ・コーラ、ワーナーミュージックグループ、ネスレ、キャセイパシフィック航空などが両社共通のユーザーになっていたという。ネット上で事業を行うユーザー企業の収益をさらに高められるよう、広告などのマーケティング機能と小売りの機能をExperience Cloud上に統合していくものとみられる。

 この分野では2016年、顧客管理システム大手の米セールスフォース・ドットコムが、ECサイト構築・運用の米デマンドウェアを28億ドルで買収していた。マーケティング領域でセールスフォースと競合していたアドビも、マジェント買収によってこれまでサービスラインアップに欠けていたECの機能を補完した格好だ。(BCN・日高 彰)