奇しくもというべきなのか、狙い通りなのか、ちょうど6年前の2012年2月2日、ソニーはハワード・ストリンガー代表執行役会長兼社長CEOの社長交代を発表。4月1日付で代表執行役副社長の平井一夫氏が社長兼CEOに就任する社長交代会見を開催した。6年後の同日、今度は4月1日付で社長兼CEOに就任する吉田憲一郎副社長兼CFOと、会長に就任する平井一夫社長兼CEOの社長交代会見が開かれた。

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4月1日付で新社長に就任する吉田憲一郎副社長と、会長に就任する平井一夫社長

658億円の赤字からの復活劇

 社長交代のタイミングについて平井氏は「中期経営計画の最終年度で、目標を上回る見通しがついた。好業績のときに交代するのがいいと考えた」と語り、1997年度以来、20年ぶりとなる好業績が見込まれるタイミングで、経営のバトンを吉田氏につないだ。

 晴ればれした様子の平井氏の目に映る景色は、6年前とはまるで異なっていたに違いない。2012年3月期の第3四半期(11年4月1日~12月31日)当時は、営業損益で658億6300万円の赤字(前年同期は2731億8900万円の黒字)に転落した。取り組むべき経営課題に「コア事業の強化」「テレビ事業の立て直し」「事業ポートフォリオの改革」「イノベーションの加速」の四つを挙げるという満身創痍の状態だった。ばらばらになったソニー社員の気持ちを、再び「One Sony」の実現を目指して、自らを奮い立たせた日だったのではないか。

 あれから6年、今回の第3四半期の営業利益は前年同期の3.6倍以上となる7126億7600万円をたたき出した。97年度の営業利益5257億円以来、20年ぶりの最高益。今年度を最終年度とする3か年の中期経営計画で掲げた目標である「営業利益5000億円以上」を大きく上回る実績を上げた。

 「心が痛むほど、厳しい判断を下さなければならなかった」と、平井氏は構造改革に伴う人員削減の実施など苦しかった胸の内を明かしつつ、「ここまでもってこられたことはうれしかった」と語った。会長職では「4月1日から経営のトップは吉田。私は補佐として手伝う」と、エンタテインメントやゲーム、ネットワークビジネスで助言したり、ダボス会議など国際会議に参加したりして、新体制をサポートする。

 吉田氏について平井氏は「経営パートナーとして、ソニーの変革を一緒に行ってきた。戦略的な思考、幅広い知見、強固なリーダーシップを兼ね備えている」と評する。ソニーでは、次期社長の人選について、常に短期と長期の視点から議論されている。今回の吉田氏の起用は短い時間軸で、取締役会で全員一致で決まった。
 
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「20年間、自分自身を越えられなかった会社」と気を引き締める吉田副社長兼CFO

時価総額を意識

 吉田氏は2000年7月にソニーからソネットに移籍して社長を務め、13年12月にソニーにCFOとして復帰。決算説明会の顔としてソニーの財務を支え、ソニー変革の立役者となった。平井氏と二人三脚で歩んだ6年間の前半は構造改革や全事業の分社化、PCブランド「VAIO」の売却のなどを進め、後半は半導体やゲームを強みにソニーを高収益な企業に再生させた。

 一方で吉田氏は「20年ぶりの最高業績を見通せる状況になったことは喜ばしいが、同時に、われわれは過去20年間、自分自身を越えられなかった会社でもある」と気を引き締める。平井氏も「社員の気が緩み、緊張感がなくなってしまうのが一番の課題だ」と語った。

 20年前と今とではソニーを取り巻くグローバル環境は大きく変化し、「時価総額のトップはすべてテクノロジー企業。ソニーもテクノロジー企業としての危機感を持っている」と、Googleやアップルなどを念頭に時価総額でグローバルトップ入りを目指す意向を示唆した。

 平井氏から社長就任を打診されたのは昨年末。吉田氏は、ソニーの番頭役から代表の顔として前面に立つ。具体的な次の中期経営計画の中身は、社長就任後の経営方針発表会で語られる予定だ。(BCN・細田 立圭志)