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<2018年どうなる家電量販店・中>「家電住まいる館」に舵を切ったヤマダ電機

オピニオン

2017/12/28 09:00

 業界最大手のヤマダ電機は、「ゆりかごから墓場まで」の顧客のトータルライフでの付き合いを目指し、家電販売や住宅、リフォーム、保険、さらには金融の住宅ローンまで「家一軒まるごと」サービスの構築を進める。ここ数年をかけて業態転換してきたヤマダ電機にとって、2018年は正念場となりそうだ。


9月にオープンした「家電住まいる館 YAMADA シーサイドひたちなか店」(イメージ)。
テックランドと外観は同じだが店内が異なる

次世代スマートハウス事業に布石を打つ

 住宅の建築・販売を手掛けるヤマダ・エスバイエルホームやヤマダ・ウッドハウス、システムキッチンやバスなどの製造とリフォーム事業を担うハウステックなど、ヤマダ電機はここ数年をかけて事業会社を子会社化することで、家電販売だけの一本足打法から、住宅・リフォーム事業を加えた業態転換を推進してきた。また、16年5月には100%出資子会社のヤマダファイナンスサービスを設立し、17年4月から長期固定金利住宅ローン「ヤマダフラット35」や「ヤマダリフォームローン」など金融サービスの扱いを開始した。

 事業体制が整いつつある17年の取り組みを振り返ると、店舗施策をより具体的に落とし込みはじめたことがわかる。6月30日には、創業の地である前橋でリフォームに特化した新業態「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」をオープンした。

 この店は、14年12月から17年2月まで営業していたリユース・アウトレット専門の「ヤマダ・再楽館 前橋店」をリニューアルしたもので、建物自体は1階に駐車場、2階、3階に売り場というピロティ形式の従来型のテックランドと変わらない。だが、一歩、店内に足を踏み入れると、照明などのインテリアや寝具、キッチン小物などの生活雑貨を扱う2階は、床がフローリングで天井は電球色のLED照明で落ち着いた雰囲気を演出するなど、テックランドの売り場とは景色が違う。
 

「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」の店内

 販売員の制服も、黄色のシャツと黒色のベストのおなじみのものではなく、青のポロシャツに黒いエプロンという初めて目にするスタイルだ。リフォームと家具に特化した3階は、「料理と家事を楽しむ二世代家族のコミュニティ住空間」や「おじいちゃん、おばあちゃんがゆっくり寛げる快適空間」などとテーマを設定し、部屋のコーディネートを丸ごとレイアウトしたシーンを提案する。カフェスペースも併設するなどラグジュアリな空間になっている。

 また9月8日には、家電から住空間までを提案する「家電住まいる館 YAMADA シーサイドひたちなか店」をグランドオープンした。前述の「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」の要素を反映しつつ、家電製品の品揃えを充実させている。

 今後、従来型のテックランドは「家電住まいる館 YAMADA」に急ピッチでリニューアルすることが予想される。すでに9月29日に2号店の新山下店(神奈川県横浜市)をオープンした後、11月だけでも入間店(埼玉県)、鴨宮店(神奈川県小田原市)、木更津請西本店(千葉県)、和泉中央本店(大阪府)、野々市店(石川県)など合計5店をオープンしている。
 

新業態の2号店「家電住まいる館 YAMADA 新山下店」

 10月31日には小型電気自動車・パーツの開発ベンチャー「FOMM」と資本業務提携を行い、電気自動車(EV)事業に参入すると発表した。EV販売やバッテリチャージング、カーシェアリング、スマートハウス事業との融合を目指す。

 ヤマダは10年12月に三菱自動車工業製のEV「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を試行販売した実績があるが、当時はまだヤマダ側にスマートハウス事業を手掛ける体制が整っていなかった。EVは、災害などの緊急時のバッテリや、太陽光発電で生まれた電気を昼間に充電して、夜間に使う蓄電池の役割も期待できる。家庭で使うエネルギーは自宅でつくって賄うというZEH(ゼッチ=セロ・エネルギーハウス)時代を見据えた布石を打っている。

販管費率の上昇は産みの苦しみ?

 ただ気になるのは、産みの苦しみといえるのかもしれないが、一連の布石を打ってきたことで売上高販管費率がジリジリと上昇している点だ。16年3月期決算では24.9%だった比率が17年3月期には25.4%、直近の18年3月期の第2四半期(4月~9月)では25.6%と上昇傾向にある。
 

12月8日にリニューアルオープンした本社が入る群馬県高崎市「LABI1 LIFE SELECT高崎」

 その理由も、住宅事業の強化に伴う人件費の増加やヤマダ・ウッドハウスが連結対象に加わったことによるコスト増のほか、船井電機4Kテレビでの業務提携で生まれた「FUNAI」テレビの販促キャンペーン費用の増加など、新規事業に関する費用で占められている。

 17年3月期の住宅設備事業の粗利率は24.4%で、家電販売事業の26.1%には及ばなかった。18年3月期通期で前者は26.0%、後者は26.1%を計画する。17年に店舗施策を具体的に落とし込んだ成果が計画通りに進めば、住宅設備事業が家電販売並みの稼ぎ頭になるという算段だ。まさに18年はヤマダ電機にとって重要な局面を迎える年となる。(BCN・細田 立圭志)