2011年に東芝が世界初の4K対応テレビ「55X3」を発売し、6年の月日が流れた。現在、主要テレビメーカー各社は4Kテレビのラインアップを備え、独自色で他社と差別化を図るべく模索する。もはや4Kであるだけで顧客に訴求できる時代ではなくなった。画質はもちろん、音・デザイン・機能など、さまざまな要素でエッジの効いたモデルが続々と登場している。

■【4Kテレビメーカー座談会2017】
テーマ2:ユーザーへの訴求点
画質以外の軸で勝負
4Kテレビの単価下落に警戒強まる

有機ELは起爆剤? 独自の味付けで選択肢が拡大

 17年に入り、国内メーカーの有機EL発売が相次いだ。家電量販店でも「有機ELコーナー」を設けて、液晶テレビとは異なる有機ELならではの魅力を発信する。各社メーカーの戦略で特徴的なのが、液晶と有機ELを同一軸上ではなく、それぞれ別のラインとして販売している点だ。
 
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ソニーマーケティングの福田行信統括部長

 「有機ELの美しい黒の発色は、映画やドラマのように没入して楽しむコンテンツには最適。しかし高価なので誰にでも訴求できるものではない」。参入メーカーは、4Kテレビを一気に市場に拡大させるための起爆剤としてではなく、4Kを選ぶ際の新たな選択肢として位置づける。
 
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東芝映像ソリューションの高根隆一部長

 実は有機ELには独自の味付けがしやすいという側面もある。ディスプレイが薄いので、従来にないデザインで開発したり、新機構のサウンドシステムを採用したりできるのだ。各社が市場に投入したモデルには、すでに液晶テレビでは現時点で不可能な提案が盛り込まれているものもある。

 とあるメーカーは「有機ELでは液晶と比べて『壁掛け』に関する問い合わせが圧倒的に多い」と購入者の反応を紹介する。時間はかかるかもしれないが、有機ELは「テレビそのものからライフスタイルの提案へ」という課題を解決する糸口になりうる可能性を秘めている。

目に見える“音”の魅力訴求、店頭で伝えるための知恵

 画質に劣らず、競争軸として各社が注力しているのが音質だ。薄型テレビはきょう体に大型のスピーカーを搭載するスペースがないため、音が貧弱になりがちだ。

 アナログ停波需要でテレビを買い替えたユーザーは、その点をよく理解している。次に買い替えるときはよりよい音を、という意識がある。
 
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パナソニックの福島伊公男担当課長

 しかし、従来モデルより高音質化しても、空間が広くノイズも多い店頭では、なかなかユーザーに訴求しきれないのが実情だ。各社は視覚的に魅力を感じてもらえるように、あえて“目に見える”スピーカーを搭載しているという。
 「『これならよい音が出そうだ』とお客様にイメージしてもらえることが重要。多少は見た目にインパクトが必要だ」と、参加者からも声があがった。

短期間で単価が下落 付加価値の訴求に課題

 当初はあまりの高単価に顧客に見向きもされなかった4Kテレビだが、いまは十分に手が届く価格帯に落ち着き、一般に広く浸透し始めてきた。裾野が広がるのはプラス要因だが、一方で発売してすぐに単価が下落してしまい利益を確保できないという悩みを各社は抱える。

 「白物家電だと高付加価値の製品はあまり下落しない。その点、テレビは高付加価値をうまく伝えきれていないのかもしれない」。実際、4Kテレビはすでに売り場で儲けにつながる製品ではなくなりつつあるという。価格に重点を置いた格安4Kテレビも登場しており、各社は単価を維持するためのブランディング戦略を一層求められることになりそうだ。

開催日:2017年5月24日
場所:BCNアカデミールーム
参加メーカー:LG Electronics Japan、シャープ、ソニーマーケティング、東芝映像ソリューション、パナソニック(50音順)
▼4Kテレビメーカー5社が議論
https://www.bcnretail.com/market/detail/20170628_43044.html


※『BCN RETAIL REVIEW』2017年7月号から転載