• ホーム
  • トレンド
  • <KeyPerson>コジマの木村一義会長兼社長 「くらし応援」に込めた意味

<KeyPerson>コジマの木村一義会長兼社長 「くらし応援」に込めた意味

インタビュー

2017/03/24 16:30

 コジマが2012年6月にビックカメラグループ入りしてから間もなく5年。再成長への道のりはまだ半ばだが、客足は復調し黒字を出せる体質に戻りつつある。コジマ再生を率いてきた木村一義会長兼社長は、現在の自社を「くらし応援企業」と呼び、ライフスタイルの変化に対応した地域密着型のサービス提供をミッションに掲げる。これからの郊外型家電量販店の役割を聞く。

取材・文/日高 彰、写真/大星 直輝


木村一義会長兼社長 代表執行役員

■生活スタイルで変わる 郊外型家電量販店の姿

売り場の広さよりも広く使うノウハウが武器

―― 家電量販店のビジネスを都心と郊外で比べると、コジマが店舗を展開する郊外のほうがより厳しい環境におかれているようにみえます。

木村 小売業は店舗というハードウェアが競争力の源泉であり、場所が悪ければいくら販売員ががんばっても収益には限界があります。人口動態を見ても、おっしゃる通り、郊外型店のビジネスは今後さらに厳しくなるでしょう。昨年までの3年間で、私たちの努力だけでは採算的に難しいと判断した店を約80店舗閉めました。私たちがあるエリアから撤退するのは、同じ商圏にいる他社に塩を送るようなものでしたが、そうして「スクラップ」を先行したことで、ようやく黒字に転換できました。ここからは再び「ビルド」で攻めていく段階になります。

―― 今後ビルドしていく店舗の姿は、従来からどのように変わってくるのでしょうか。

木村 まず、郊外型のコジマとはいえ、今後の出店地域は人口が若干でも増えている都市の郊外が中心になります。もう一つは、仮にロードサイドに出店するとしても、ショッピングモールや複合型店舗など、ワンストップ型の複合商業施設への出店がメインとなります。売り場面積を見ると、われわれは競合他社に比べ小さい店舗もあり、そこが競争において不利な点だったのは事実です。しかし、これからの時代、大きな店を構えることが勝つための絶対条件にはならないと考えています。日本全体で高齢化が進んだことで、広大な売り場を見て回るのが大変というお客様もいらっしゃり、広さそのものよりも、コンパクトな売り場を広く使うノウハウのほうが重要になります。

 この点は、都心の家賃の高いところでやってきた分、ビックカメラは限られたスペースでの商品の並べ方、見せ方が非常にうまい。そういう“ビック流”のノウハウをとり入れることによって、コジマは3000平米の店舗でも、競合する5000平米の店に引けを取らない品揃え、売り場づくりができるようになってきました。コンパクトな分だけ、むしろお客様は買い物がしやすくなるというわけです。

街の電気屋さんが再び求められている

―― 地域密着の取り組みでは、販売員自ら商品を届ける「コジマくらし応援便」を開始されました。

木村 「最短30分でお届け」と配達スピードもうたってはいますが、スピードが第一の目的ではありません。交換しにくいところの電球が切れたとか、最近リモコンの調子が悪いとか、ご家庭での家電に関するお困りごと、不便や不満はいっぱいあると思うんです。そこで配送業者ではなく、コジマの社員がお宅に伺えば、アドバイスもできるし、場合によっては買い換えのご提案もできる。街の電気屋さんのスタイルです。
 

ライフスタイルの変化に対応した地域密着型のサービス提供をミッションに掲げる

 昔、コンビニエンスストアの客層は若者中心でしたが、今ではむしろ中高年の方のほうが多い。お客様は値段が安いからコンビニに足を運ぶのではなく、文字通りのコンビニエンス、つまり便利さを求めているわけです。家電業界も同じように変わっていく。ただ、私たちはコンビニのような多店舗展開ができるわけではありません。そこで、こちらからお客様のもとにお伺いしようという取り組みです。

―― 今後は値段や品揃え以外にどんな価値を提供できるのかが、ますます重要になってきますね。

木村 企業の社会貢献といった意味でCSR(企業の社会的責任)が叫ばれていますが、今の企業が世の中から本当に求められているのは、儲かった分の一部を社会に還元するというCSRだけではなく、収益の上げ方そのものが社会貢献になる事業を展開することです。コジマにとってのそれは何か、考えに考えて行き着いたのが「くらし応援」という企業姿勢だったのです。

 コジマの太陽マークに込められた「私たちは太陽のように明るさと暖かさをご家庭にお届けします。」という創業当時の思い、これをいまの時代にあわせて「くらし応援」という言葉に翻訳しましたが、理念は変わっていません。この理念の具体化のひとつであるくらし応援便は、実際にはコスト・採算でまだまだ厳しい面もあります。ただ、必ず他社より先行させようという思いで始めたサービスですので、今後、さらに力を入れて内容も充実させていきます。

・<証券マンが家電量販業界に転じたわけとは?>に続く

 
■プロフィール
木村一義(きむら かずよし)
1943年11月生まれ。三重県出身。1967年日興証券入社。2000年同社取締役副社長、01年日興アセットマネジメント取締役社長、05年日興コーディアル証券取締役会長に就任。12年4月、ビックカメラ顧問、同年11月にビックカメラ取締役(現任)およびコジマ取締役、13年9月より現職。

・【動画】トップに聞く『会社の夢』― コジマの木村一義会長兼社長
 
◇取材を終えて

 新店舗がオープンする際は、赤いベストを着て自ら入口最前列に立ち、来店客にチラシを手渡す木村社長。開店風景にすっかりなじんでいるが、家電量販業界に転じる前は、生き馬の目を抜く証券業界で40年以上勤め上げてきた。低姿勢で物腰柔らかだが、話題が「くらし応援」の言葉に込められた意味に移ると、口調はにわかに熱を帯びた。証券マンとして無数の企業を見てきた経験から、「理念を大事にする会社こそ生き永らえる」という思いは人一倍強いようだ。(螺)

※『BCN RETAIL REVIEW』2017年4月号から転載

オススメの記事