現場感覚から外れた「COOL CHOICE」を問う

オピニオン

2016/12/26 18:00

 「販売現場を知らない人が設計したとしか思えない。COOL CHOICEの盛り上がりを期待するだけに、なんとも残念だ」。

 ある家電量販店の社員は、環境省が推進する省エネ家電への買替えを促進する「COOL CHOICE」の補助金事業の中身をみて肩を落とす。

<POINT>
1 5つ星省エネ家電の買替え促進に黄色信号
2 「家電リサイクル券」の写しにも課題
3 現場の声を反映した見直しを

 2017年度の補助金事業で要求額が98億8800万円の「省エネ家電等COOL CHOICE推進事業」は、(1)省エネ製品買替えナビゲーションの「しんきゅうさん」を活用した家電の買替えサイトの開設、(2)省エネ家電買替えサイトに新規出店する中小規模販売店の支援、(3)エアコン、テレビ、冷蔵庫を対象とする5つ星省エネ家電への買替え促進の三つの事業だ。

 冒頭の社員ががっかりするのは、(3)の買替え促進における手続きの煩雑さだ。買替え促進事業は、17年1月1日~ 2月末までの5つ星省エネ家電の販売台数から、対前年同月比で増加した分、かつ買替えが確認できた商品に対し、CO2削減見込み量1トンあたり2000円の補助金が交付される。

 販売現場では、先に顧客に2000ポイントの付与や2000円の現金値引きをして、後から補助金を受け取るケースが想定される。問題なのは、店頭でポイント還元をうたうPOPを作るにも、対象製品別にCO2削減見込み量を算出しなければならないこと。タブレット片手に算出しながら接客するにしても、時間がかかりそうだ。
 

現場オペレーションの混乱が予想される「COOL CHOICE」の補助金事業(画像はイメージ)

 30年度に26%のCO2排出量を削減するという国の目標達成のために、CO2削減見込み量が補助金の対象になっているのだが、そもそもCO2削減の1トンあたり2000円という単位が消費者に伝わりにくいだろう。

 さらに追い打ちをかけるのが、5つ星の省エネ家電の買替えに際して、処分した家電製品の「家電リサイクル券」の写しを添付しないと補助金の対象にならないことだ。

 「お客様ごとに家電リサイクル券は保管しているが、それはあくまでもリサイクルで引き取った古い家電製品を管理するためのもの。新たに購入した省エネ家電とは紐付かない」。ほかにも、エアコンの増設や移設による買替えは補助金の対象にならないのかなど疑問点も多い。「COOL CHICE」を商機と捉えている家電量販店が多いだけに、現場の意見を反映したオペレーションの見直しが求められそうだ。(BCN・細田 立圭志)