今年も秋に入り、オーディオ系のイベントが開催され、各社とも年末年始に向けてイヤホン・ヘッドホンの新商品を発表した。参入メーカーの多いイヤホン・ヘッドホン市場で、今、勢いに乗るのがエレコムだ。2004年に新規参入した同社は2016年10月に販売数量シェア12.1%で3位に食い込んだ。エレコムがここまで成長した要因について同社の商品開発部 スーパーバイザーの遠藤 稔也氏に話を聞いた。

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エレコムの遠藤 稔也氏

顧客の声のフィードバックがエレコムを鍛えた

 PC周辺アクセサリメーカーのイメージが強いエレコム。先述の通り、イヤホン市場に参入したのは約10年前の2004年のこと。短期間でここまでシェアを伸ばした要因について、遠藤氏は「顧客の声をフィードバックした開発の早さ」と語る。

 通常、イヤホンメーカーは年に1回、主に秋に焦点を絞り、新商品を大量に投入する。ところがエレコムは「2~3か月ごとに個別に新商品を発売する」という。

 遠藤氏は「お客様の不満がある商品は品質やデザイン、使い方提案などに課題があったからだ。その課題を分析し、次の商品で改善していく。年に1度の開発サイクルだとフィードバックに1年以上を要するが、数か月単位でこれを繰り返すことで商品づくりのノウハウを早期に蓄積することができ、ひいては長年やっているオーディオメーカーさんに近づくことができる」と説明する。

 短い間隔で新商品を市場投入することで、売り場に常に新商品を並べ、また売れ行きが思わしくない商品は早々に店頭から引き上げる。逆に売れ行きのよい商品は増産し、引き続き店頭に並べる。こうすることで在庫処分のための値下げが減り、新商品を発売するごとに什器を新調することで売り場を常にフレッシュな状態に保つことができるという。

 例えば、女性向けイヤホンというジャンルはこのサイクルから生まれた。これまでのイヤホンは、音質の良さを競ってコアなユーザーの奪い合いをしてきた。エレコムは、これまでにないターゲットを開拓するため、音質よりも見た目を重視した「女性向け」イヤホンを発売した。するとこれが人気を博した。

 流れに乗って次は同じく女性向けのBluetoothイヤホンを市場に投入。ところが今度は売れない。カラフルなデザインや、可愛いキャラクターを採用しても売れ行きは伸び悩んだ。普通であれば「女性向けは売れない」と手を引くところだが、エレコムは売れない理由を分析した。

 Bluetoothイヤホンは、ワイヤレスのため本体にバッテリを搭載しなくてはならない。このバッテリをヘッド部に内蔵すると、有線モデルに比べてヘッド部が大きくなってしまう。これが女性に不評だったことが分かった。
 
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小さいヘッドを採用した「LBT-HPC12MPシリーズ」

 改善して開発し、今年9月に発売した「LBT-HPC12MPシリーズ」は有線モデルと同様、小さいヘッド部を採用し、バッテリはコントローラー部に内蔵した。課題をクリアすることで、発売当初から大きく売上げを伸ばしている。

市民権を得たアニソンに適したイヤホン

 新たなターゲットの掘り起こしは女性だけではない。新たにアニメソング(アニソン)向けのイヤホンにもエレコムは挑戦した。

 音楽を聴く人は多いが、果たしてどのような音楽を聴いているのだろうか。遠藤氏は「音楽CDで売れているカテゴリはアニソン、J-POP、そしてジャニーズが続く。クラシックはほんのわずかだ。さらに今やアニソンのライブが頻繁に行われている。アニソン好きのユーザーは生の音に触れる経験が多い」と語る。生の音に触れた経験を持つユーザーは、イヤホンでもいい音を求める傾向になるという。

 アニソンユーザー向けに開発したステレオヘッドホンが「EHP-SL100シリーズ」だ。アニメキャラクターをパッケージにして、アニソンのリスニングに適していることをアピールする。
 
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アニソン向けステレオヘッドホン「EHP-SL100シリーズ」

 さらに、ライブやコンサートなどの「生の音」を求めるユーザー向けにはハイレゾ対応モデル「EHP-SH1000シリーズ」を用意した。こうして若年層を中心に新たなエレコムのファンの構築を図っている。
 
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ハイレゾ対応の「EHP-SH1000シリーズ」

iPhoneの追い風を受け、今冬はBluetoothモデルでたたみかける

 エレコムが今冬に注力するのがBluetoothイヤホンだ。この秋発売されたiPhone 7/7 Plusはイヤホンジャックを廃止したため、音楽を聴くにはLightning接続できるイヤホンやBluetoothイヤホンが必要になる。

 「iPhone 7の発売により、Bluetoothイヤホンの市場は拡大している。弊社でも10月だけで前年比2倍以上に売上げを伸ばした」と遠藤氏は手応えを語る。iPhone 7の発売に合わせ、新商品を3モデル投入したが、年末年始に向けてさらにラインアップを追加する構えだ。

 エレコムにとって、Bluetoothイヤホン市場は負けられない戦場だ。2007年の黎明期にBluetoothイヤホン市場に参入し、長期にわたりシェア1位を守り続けてきたからだ。

 Bluetoothイヤホンといえばエレコム、というイメージが浸透していることに加え、「徹底した検証を行い、Bluetooth対応機器とイヤホンの互換性が高いこと、店頭用に対応機器表を用意しているので、店頭で提案しやすいこと、さらに多彩なラインアップがあること」が強みだという。

 この多彩なラインアップのなかに特徴的なモデルがある。スポーツ用モデルだ。ワイヤレスなので体を動かす時にケーブルが邪魔にならない。また装着感がよく、落ちにくいと評判が良かった。しかし一点だけ課題があった。

 「防水モデルではあったが、汗による故障が多かった。防水、つまり真水には対応していたが、塩水に対しては弱点もあった。お客様に大変ご迷惑をおかけした。」しかし、故障しても修理して使い続けたい、というユーザーの声が多く、汗にも強い「LBT-HPC11WPシリーズ」と「LBT-HPC31WPシリーズ」として2015年12月に生まれ変わった。
 
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汗にも強い「LBT-HPC11WPシリーズ」と「LBT-HPC31WPシリーズ」

 Bluetoothイヤホンの、ケーブルレスの良さを存分にアピールできるスポーツ向け市場でのエレコムの地位を盤石なものにした。

エレコムの音は「意外にいい」

 イヤホンのプロモーションといえば、高音質、音の良さをアピールするのが定番。しかし、エレコムのキャッチコピーは「意外にいい音」というものだ。現在、シンガーの藤井フミヤ氏を起用したプロモーションを展開しているが、その藤井氏も「意外な音の良さ」をアピールしている。

 遠藤氏は「エレコムだけど意外にいい音、と評価して下さるお客様が増えている。販売店様には、お客様にまずは音を聴いて下さい、と伝えて頂きたい。たとえ1980円のイヤホンでもきちんとチューニングしているので、意外に音がいい、と驚いて頂けると思う」と話す。

 「意外にいい」と謙遜しながらも、聴けば良さが分かるという、同社の自信の現れといえるだろう。(BCN・山下彰子)