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SCE初のゲーム向けサラウンドシステム「CECH-ZVS1J」、製品化の狙いを聞く

インタビュー

2010/12/28 16:28

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、9月30日、家庭用ゲーム機、PS3向けのサラウンドシステム「CECH-ZVS1J」を発売した。SCEがゲームに特化したサラウンドシステムを投入したのは初めて。「BCNランキング」では、発売直後、週次ランキングで1位に躍り出るという好調な立ち上がりをみせた。製品化の狙いを担当者に聞いた。

 「CECH-ZVS1J」は、薄型テレビの手前に置く2.1chのバー型サラウンドシステム。「BCNランキング」で機種のカラーバリエーションを合算したシリーズ別の売れ筋をみると、発売直後の9月最終週(9月27日-10月3日)は、販売台数シェア28.5%という驚異的な数字で、1位を獲得。その後は落ち着いた動きになったが、12月第1週(12月6-12日)以降、再び1位に浮上した。

CECH-ZVS1J

 人気を集めた理由は、手頃な価格だ。「CECH-ZVS1J」の12月第2週(12月13-19日)の税別平均価格は1万6000円程度。サラウンドシステム全体の平均価格は3万9000円で、半額以下だ。「CECH-ZVS1J」はPS3とつなぐだけでなく、もちろん、通常のサラウンドシステムとして薄型テレビと組み合わせることができ、ゲームユーザーなどサラウンドシステムの初心者でも取っつきやすい点が強みとなった。

 「CECH-ZVS1J」が誕生したきっかけについて、商品企画部企画3課の渋谷清人課長は、「BGMや人物の声、効果音などのPS3のゲームソフトの音声は、短くて1年、長いと2-3年程度という時間とコストをかけてつくっている。このつくり手がこだわって作った音声を、ユーザーは本当に楽しんでいるのだろうか、という疑問が始まりだった」と振り返る。さらに、3D対応のゲームソフトの登場や、10月発売のPS3用モーションコントローラー「PlayStation Move」も製品化を後押しした。

商品企画部企画3課の渋谷清人課長

 製品化にあたっては、グループ会社であるソニーのオーディオ部門とコラボレーション。「CECH-ZVS1J」の内部構造には、ソニーの薄型テレビ「BRAVIA」やホームシアター向けの機器で培った技術を応用している。また、「CECH-ZVS1J」のスピーカーのチューニングには、SCEでゲームソフトの音声をつくっているデザイナーが関わった。

 SCEのJAPANスタジオテクノロジー部サウンド&ビデオグループの宇野隆史サウンドデザイナーによると、「CECH-ZVS1J」のポイントは三つ。一つは、スピーカーから扇形に広がる音域の範囲を2mと広く確保したこと。また、システムの正面にユーザーがいなくても、サラウンドを体感できるようにした。この2点は、薄型テレビを囲んで複数人数でゲームをプレイすることを想定している。


 さらに、ゲームの臨場感を高めるために、例えば、後ろからクルマが近づいてくるなど、プレーヤーの周囲で何が起きているのか、指向性がわかる音声を強調している。これは、例えばアクションやスポーツなどのゲームは、「音から得られる情報がプレイ中の状況判断を左右する」(宇野サウンドデザイナー)からだ。

 渋谷課長がこだわったのは、2万円以下という手頃な価格だ。PS3本体の価格が3万円から3万円台半ば、ゲームソフトの価格は5000円から1万円程度なので、ゲーム機・ゲームソフトとのバランスを考えた。「ゲームユーザーにとって1万円の違いは大きい」(渋谷課長)のだ。

JAPANスタジオテクノロジー部サウンド&ビデオグループの宇野隆史サウンドデザイナー

 今後の展開について、渋谷課長は「『CECH-ZVS1J』のほかにも、やりたいことは山ほどある」と語る。例えば、PS3とポータブルゲーム機PSPを組み合わせた音声の演出など、これからもゲームのサラウンドについて追求していく。「今後、ゲームソフトの音声はますます精細さが増していく。われわれはユーザーに対して、ゲームの音声を生かした新しい驚きを提供していかなければならない」と抱負を語ってくれた。(BCN・井上真希子)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。