業務用や音楽制作の音響機器メーカーとして知られるティアック。業務向けの専門分野から派生して、コンシューマ向けの製品も手がけており、海外製イヤホン・ヘッドホンの販売代理も行っている。「BCNランキング」でイヤホン・ヘッドホン市場の動向をみると、対前年の1月同期比では販売金額が98.3%と前年割れだったものの、台数では107.4%と好調だ。そこで、ティアックが手がける海外製イヤホン・ヘッドホンの販売戦略について担当者に話を聞いた。

KOSS(左から「KE29シリーズ」「MIX JOCKY」)

 ティアックは、1988年からアメリカのKOSS、2003年からはドイツのbeyerdynamicのイヤホン・ヘッドホンを扱っている。タイプ別にみると、KOSSはヘッドバンド型ヘッドホンとカナル型イヤホンが中心。一方、beyerdynamicのラインアップはヘッドバンド型がほとんどだが、カナル型やネックバンド型イヤホンも揃えている。KOSSとbeyerdynamicの2010年1月の税別の平均価格は、2900円と1万2000円。イヤホン・ヘッドホン全体の同価格が2500円なので、beyerdynamicは高級品ということがいえるだろう。

 「09年秋頃から、ユーザーの反応に手応えを感じるようになった」と振り返るのは、小泉貴裕・プロフェッショナル機器事業部タスカム営業部国内販売課コンシューマ係係長。取り扱う2ブランドを合算した「BCNランキング」の対前年同期比でも、その変化は顕著だ。この1年間の推移をみると、販売台数・金額ともに前年割れしており、09年10月までは50-70%で推移していた。しかし、11月以降は若干もち直し、年末の09年12月には台数で59.7%、金額で94%を記録。10年1月はやや数字が落ちたものの、台数57.4%、金額79%と金額面では回復の兆しが見えはじめている。 


 決して安いとはいえない海外製イヤホン・ヘッドホンを買うユーザーの消費行動について、「一点豪華主義だ」と小泉氏は指摘する。つまり、例えばオーディオなら、コンポやスピーカー、携帯オーディオなど、こだわりたい機器はいくつかあるが、すべてを買い揃えることはお財布の中を考えると現実には厳しい。そこで、毎日使う身近なイヤホン・ヘッドホンというアイテムに絞って投資する、というわけだ。また、一般的に「音」は出力機器を変えるだけで音質がかなり向上する。イヤホン・ヘッドホンなら、投資しただけの品質を「音質」というわかりやすい形で受けることができるわけだ。

 同社では09年秋に、オーディオ専門誌で広告を増やしたのに加え、家電量販店向けの展示用販促物を制作、自社ブランド「TASCAM」のパンフレットで製品を紹介するなど、露出を高める策を講じた。さらに、販売チャネルとして、ヨドバシカメラで展示スペースの確保に成功。都内のある店舗のイヤホンコーナーでは、KOSSやbeyerdynamicのモデルが透明のケースで美しく飾られ、オーディオテクニカやソニー、パナソニックなどの主要なメーカーと肩を並べている。こうした複合的な取り組みが売り上げに結びついた。

beyerdynamic(左から「MMX 100」「T1」)

 実は、これまでティアックは、KOSSやbeyerdynamicの販促についてそれほど力を入れてきたわけではない。「TEAC」「TASCAM」などの自社ブランドのほうが優先順位は高くなる。しかし、「社内では、以前からイヤホン・ヘッドホンの販促に力を入れたいという声が多かった」(小泉氏)。また、「販促に力を入れれば、売れるという感覚はあった」と、下した判断に自信をみせる。

 09年秋に販促に着手できたのは、実際のところ、社内業務上でゆとりが生まれたためだと明かす。しかし、こうしたタイミングと担当者の熱意が相まったことが、結果的に販売の拡大に結びついた。ただ、一方で小泉氏は、「高級イヤホンやヘッドホンは買う人しか買わない、という考え方ではダメ」と、販売戦略を説明する。もちろんターゲットの設定はしているが、「買う人をこちらで決めてはいけない」と自らを戒める。 

小泉貴裕・プロフェッショナル機器事業部タスカム営業部国内販売課コンシューマ係係長

 現在、前述の施策によって同社の海外製イヤホン・ヘッドホンは上向きだが、今後は「一般的なユーザーにいかに使ってもらうかが課題」とユーザーの拡大に向けた問題点を指摘する。いまや音質だけでなく、ファッションの一部として人気を集めているイヤホン・ヘッドホン。各社の多彩なモデルが店頭で並ぶ中、他社との差異を打ち出し、それをわかりやすく伝えていくことが、ユーザーに選んでもらうための近道だろう。(BCN・井上真希子)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。