インターネット経由で動画情報などをテレビに配信するサービスが始まっている。注目を集めているのが、松下電器産業、ソニー、シャープ、日立製作所、東芝などが共同出資して設立したアクトビラ。対応テレビも続々と発売されている。しかし、一般的な認知度はまだ高くないのが現状だ。アクトビラでは今後、どのように普及を進めるのか、久松龍一郎副社長に聴いた。


●リモコン操作1つで映画が見られる“簡便さ”が最大のメリット

07年2月にサービスを開始したアクトビラ。現在は、映画などを好きな時に視聴できるVOD(ビデオ・オン・デマンド)の有料動画配信「アクトビラビデオ」と、静止画や音声の無料配信「アクトビラベーシック」を提供している。


対応テレビとインターネット接続環境があれば利用可能で、対応テレビのリモコンにある専用ボタンを押せばすぐにサービスを使うことができる。入会金や基本料は不要。有料コンテンツの視聴料はクレジットカードで決済する。08年5月末時点で40万台の対応テレビが接続している。

 ――アクトビラ設立の狙いは

「家電メーカー5社が出資してアクトビラを立ち上げた理由は2つある。1つは薄型テレビの付加価値アップだ。薄型テレビは価格下落が進んでいるが、アクトビラのようなサービスが利用できるようにすることでテレビの価値を高めることができる。一方、ネットテレビのサービスはどのテレビでも使えなければ意味がない。そこで、メーカーが共同でサービス会社を設立し、仕様を統一してビジネスモデルを構築するというのがもう1つの狙いだ」

 ――利用するユーザーのメリットは

「動画配信の『アクトビラビデオ』では大画面のテレビで映画やドラマなどを好きな時に楽しめる。PCでも動画は見ることはできるがテレビで見た場合は没入感や臨場感はまったく違う。そして、最大のメリットは“簡便さ”だ。対応テレビがあればネットに接続するだけですぐに使える。レンタルビデオのような借りに行く手間もいらない。操作もテレビのリモコンだけでできる」

「テレビは周波数や時間の制限があり、全世代に見てもらうためにどうしても均一的な編成になってしまう。しかし、アクトビラにはそれがない。ユーザーの嗜好に合った、様々なジャンルのコンテンツを提供できるのはもちろんのこと、ロングテールのコンテンツもカバーできる。だから、“究極の多チャンネル”と言えるだろう」

 ――VODサービスは日本ではまだ一般的ではない感があるが

「02年頃から現在にかけてHDD搭載のDVDレコーダーが普及してきており、番組を録り貯めて好きな時に見るというテレビの視聴スタイルが消費者に自然なものになってきたと思っている。こうした状況もアクトビラのようなサービスにとっては追い風になると感じている。逆に野球中継などのライブ映像の配信はアクトビラには向いていないと思う」

●09年3月までに100万台の対応テレビ接続を目指す

 ――ユーザーのターゲットにするユーザーと利用者の目標は

「今は40-50代の人を対象にしている。この層はおカネはそこそこあるが時間がない人たちで、映画などを頻繁に見ることができない。だから、自分が都合の良い時に見ることができる『アクトビラビデオ』のような動画サービスは使ってもらいやすい。事実、現在のユーザーも、この層が中心になっている。実際に使っているのは男性が多い。年代的には世帯主なので、ここを起点に家族にも使ってもらえるようにしていきたい。女性向けでは、例えば韓国ドラマなどを揃えていくつもりだ。また、レンタルビデオがないような地方の人にも使ってもらえると思っている」

 ――利用者数の目標は

「09年3月までにアクトビラに接続するテレビを100万台までにしたい。6月には、家電メーカーや通信会社、放送局などがネットテレビの国内での統一規格を策定する法人組織『IPTVフォーラム』を設立して、アクトビラの規格をベースに仕様を進めることになった。このことも普及の大きな足がかりになると思っている」

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●HD並みの映像配信を柱に利用を拡大、BDとは共存する

アクトビラが普及の起爆剤と期待するのが、ハイビジョン(HD)並みの画質で映像を配信する「アクトビラビデオ・フル」だ。「アクトビラビデオ」の新サービスとして開始した。


柱は2つ。1つはTSUTAYAが6月から提供しているハリウッド映画や海外ドラマなどの配信。もう1つがNHKが12月に提供を始めるVODサービス「NHKオンデマンド」の配信だ。NHKでは大河ドラマなどの配信を予定している。アクトビラでは、この2本柱で利用者拡大を見込む。現在、動画配信はストリーミング形式のみだが、08年度中にはダウンロード販売も計画している。

 ――「アクトビラビデオ・フル」の手応えは

「『アクトビラベーシック』だけの頃は、対応テレビをアクトビラに接続している人のうち、実際にサービスを利用する割合は10%だった。しかし『アクトビラビデオ・フル』を開始してから40%まで拡大した。非常に手応えを感じている。『アクトビラビデオ・フル』の利用者を分析すると、ヘビーユーザーが多く、リピート率も高い。そういう意味では事業のカギとなるサービスだ。ここにTSUTAYAとNHKが入ったことは大きい」

 ――今後、予定するダウンロード販売では、ブルーレイディスク(BD)ソフトとの競合も考えられるが

「高画質な映像をライブラリーとして持っていたい人はBDソフトを選ぶだろうし、テレビで気軽に映画などを楽しみたい人はアクトビラ・フルを利用するだろう。どちらかは消費者に選択してもらえればいい。我々としてはBDと共存したいと思っている」

●通信会社、量販店とタッグを組んで普及を加速

 ――消費者への認知度はまだ低いと思われるが、コンテンツ以外での普及施策は

 「アクトビラの利用にはブロードバンドが必要。だから、例えば、NTTなどの通信会社と連携して通信インフラは光ファイバー、コンテンツはアクトビラというような形で連携してお互いの拡販・普及を進めることができると思っている。さらに、量販店とも連携できると思う。量販店では店頭で光ファイバーの加入を受付けているし、アクトビラ対応のテレビも売っている。対応テレビは高性能な機種が多く、販売単価のアップが見込める。そのため、店員が商品を売るモチベーションも上がる。我々も量販店のテレビ売り場で薄型テレビの横にアクトビラのPOP(店頭販促)を置くなどしてアピールしていく」

 ――アクトビラが目指す方向性は

「狙っているのはネットテレビのポータル事業だ。ポータルは利便性が重要。テレビのリモコンボタンで操作できるアクトビラはどんな人でも使いやすい。今後は、エンターテインメントを中心に、この操作性を生かしたいろいろなサービスを追加していきたいと考えている。トップ画面などのユーザーインターフェイスも常に改善していくつもりだ」(BCN・米山淳)