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iPhone上陸でどーなるケータイ夏戦線、迎え撃つ国内メーカーの戦略は?

時事ネタ

2008/06/23 02:27

 NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクモバイルが新製品を発表し、08年のケータイ夏モデルが出揃った。夏商戦で携帯電話メーカー各社は機能やデザインで工夫をこらした端末投入でシェア拡大を狙う。一方、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」が今夏に日本に上陸。市場での競争が激化しそうだ。国内の主要携帯メーカーは08年夏商戦をどんな戦略で臨むのか。


●ワンセグで攻めるパナソニックモバイル

 「全機種にワンセグを搭載して展開する」――08年夏モデルの商品説明会でパナソニックモバイル コミュニケーションズ(PMC)の瀧川裕・商品グループ統括参事はこう強調した。PMCでは自社の調査から「ワンセグ対応」が購入理由で増加していることに注目。夏商戦では供給先のドコモ、ソフトバンクを通じワンセグ端末で攻勢をかける。

 中心は松下電器産業の薄型テレビ「VIERA(ビエラ)」の名を冠したワンセグ端末「VIERAケータイ」。ドコモ、ソフトバンクに供給する。夏モデルは第2弾で、アンテナを外付けから高感度の内蔵型アンテナに変更。ヒンジ部分を改良し、ドコモ向けでは前モデルより1.1mm薄型化した。


 ワンセグ機能では、毎秒15コマの映像に補完し、30コマにすることで映像をなめらかに表示する機能を搭載。高コントラスト機能も採用し高画質を追求した。待ち受け画面も端末を横に開いた時に同じく横で表示するようインターフェイスを作り込んでいる。

 PMCではバリエーション展開にも力を入れる。ドコモ向けには厚さが9.8mmの「P706iμ」、文字の拡大表示やメニュー画面、騒音レベルに合わせた通話の音補正機能などとシンプルなフォルムを採用して、「使いやすさ」「デザイン」を両立した端末「P706ie」を投入する。

 ソフトバンク向けには初の防水端末「823P」、背面パネルに鏡面加工を施した端末「MIRRORII 824P」を供給。「MIRROR」ではワンセグ受信機能、3.5GサービスのHSDPA対応などの機能を追加した。


 「08年夏の商品では松下が得意とするAV分野の技術を生かし、『ワンセグ』というユーザーの要望を満たす端末を揃えた。さらなるシェアの拡大につなげていきたい」と、瀧川統括参事は意気込む。

●「ラインアップ」と「デザイン」でユーザー獲得を図るNEC

 NECは「ラインアップの拡充」「デザイン」の二本柱で展開する。「ラインアップの拡充」では主軸のドコモ向け端末に加え、供給を再開したソフトバンク向けの機種を加えた8機種を08年度上期に投入。下期も上期と同程度の端末を供給し、08年度は700万台の出荷を見込む。

 「デザイン」の目玉は、女性ユーザーを狙い、ブランドや雑誌とのコラボレーションした端末。ドコモ向けでバックブランドのサマンサタバサと組んだ「N906iμ」、家具・雑貨ブランドのフランフランとコラボした「N706i」、ソフトバンク向けはファッション雑誌「GLAMOUROUS」が監修した「821N GLA」を揃えた。

 「今やワンセグは当たり前。これからは機能はもちろん、ユーザー1人ひとりに合った端末が重要になる。当社ではさまざまなブランドとコラボすることで、デザインからパーソナライズ(私だけの端末)を実現していく」と山崎耕司・モバイルターミナル事業本部長は説明する。

 さらに今後、重要視しているのが固定網と携帯の両方を利用できる端末だ。夏モデルでドコモの無線LANを使った携帯向けブロードバンドサービス「ホームU」の対応端末「N906iL onefone」を供給。PCメーカーという側面も生かし、自社の家庭用サーバー「Lui(ルイ)」と連携した固定・携帯網が利用できる端末開発も視野に入れる。

 NECでは、こうした戦略で11年には1000万台の出荷を目指す。大武章人専務は「今回の事業戦略でシェアトップを獲得し、“Nのケータイ”の復活を遂げたい。NECはその力を持っている」と力を込める。


●使いやすさを追求した端末でアピールするシャープ

 高画質の液晶ディスプレイ技術を採用したケータイを展開、08年5月末にはワンセグ端末の累計出荷台数が1000万台を突破したシャープ。同社では新しいユーザーインターフェイスを採用した操作が簡易な端末をドコモ、ソフトバンク、auに供給し、ユーザー獲得を図る。

 その代表例が「タッチパネル」と指でポインタを操作する「光タッチクルーザー」。いずれも使いやすさを追求して開発した技術だ。「タッチパネル」はドコモ向け端末「SH906i」に搭載した。ディスプレイ画面にワンセグやメール、カメラなどのサムネイルを表示。指でなぞるだけで、機能を起動・操作ができる。

 「光タッチクルーザー」は「SH906i」やソフトバンク向け「923SH」などに搭載。携帯電話のキー上部に設けられた光学式センサーに指を触れて動かせば、ディスプレイに表示したポインタをPCのマウスのように動かして端末を操作できる。

 「923SH」にはワンタッチで地図を見ることができる地図専用キーも配置。専用ボタン1つで起動し、ネット上のフリー百科事典「ウィキペディア」とも連動する辞書機能も搭載した。

 「一言で使いやすいといってもいろいろとある。当社ではユーザーが直感的に触って使えることにこだわって端末を開発している」と長谷川祥典・常務通信システム事業本部長は強調する。

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●携帯市場は2強とその他メーカーという構図が鮮明に

 携帯電話市場では三菱電機が事業から撤退。三洋電機も携帯電話事業を京セラに売却し、淘汰・再編が始まった。「BCNランキング」で08年5月から過去1年間の携帯電話メーカーの販売台数シェアをみると、シャープとPMCの2強が2ケタのシェアを確保しトップを争う一方、その他のメーカーは1ケタに留まるという構図が鮮明だ。


 直近の5月ではPMCが1位を獲得。昨年からドコモに供給している「VIREAケータイ」が好調で、春にはソフトバンクにも供給先を拡大。08年1月以降は台数を増やし、5月には16.9%までシェアを伸ばした。シャープは20%前後のシェアで08年2月まではトップにいたが、3月以降は台数が減少。5月には15.9%までシェアが落ち込んだ。

 常時ならば各メーカーが他社のシェアを奪おうとしのぎを削るのはもちろん、「撤退した三菱電機のユーザーをどう取り込んでいくのか」(山崎耕司・NECモバイルターミナル事業本部長)が08年夏商戦の焦点になっていただろう。しかし、今年の夏はそうもいかなくなった。なぜならば、米アップルの「iPhone 3G」という“黒船”が日本に上陸するからだ。

●“黒船”iPhoneの来襲で、08年の夏商戦はさらに競争激化の様相

 「iPhone 3G」は高速通信が可能な第3世代携帯電話に対応。日本ではソフトバンクモバイルが7月11日に発売する。タッチスクリーン方式3.5型ワイド液晶ディスプレイや200万画素のカメラ、GPS機能などを備える。携帯オーディオ「iPod」の流れをくむ端末ということで発売前から注目度も高い。


 米国での価格は16GBのフラッシュメモリ搭載モデルが299ドル、8GB搭載モデルで199ドル。日本での価格は未定だが、ある国内携帯電話メーカーの担当者は「仮に米国と同じになれば5万円以上する国内メーカーの端末と比べて価格競争力が高い。発売時期も各社の夏モデルが出始める頃にぶつかるため、どれだけシェアを食われるか」と戦々恐々だ。

 その一方「日本でそれほどシェアを獲得できるとは思えない」(山崎事業本部長)との声も。シャープの長谷川常務は「iPhoneには日本のケータイが搭載するワンセグや電子マネーなどの機能がない。また、日本にはメール文化があり、メールが使いやすいかが携帯を選ぶポイントになっている。日本のユーザーにとってiPhoneがどのくらい使いやすいかはわからない」と指摘する。

 国内の端末メーカーは“黒船”のiPhone上陸を警戒しながらも「新しい端末ということで話題になり、市場が盛り上がる効果があるのではないか」(長谷川常務)と期待する。契約者数が1億人を突破し、市場が飽和しつつあると言われる携帯電話だが、08年夏のケータイ商戦は国内のみならず国外のプレーヤーも参加し、いつにも増して熱い戦いが繰り広げられそうだ。(BCN・米山淳)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など24社・約2300店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。