無線端末としてiPod touchはどこまで「使える」のか試した

特集

2008/01/21 00:20

 iPod touch(touch)が発売されておよそ4ヶ月。「Macworld Conference & Expo 2008」では新しいアプリケーションも発表され、単なる音楽プレーヤとは異なる新たな製品ジャンルを確立しつつあるようだ。なかでも無線LAN機能を搭載することでインターネット端末としても利用でき、内蔵ブラウザ「Safari」でウェブページの閲覧ができる点に注目が集まっている。そこで、touchの無線LAN機能を実際に使って使用感をレポートする。

●多くの公衆無線LANサービスがtouchをサポート

 街角からワイヤレスでインターネットに接続できる公衆無線LANサービス。これを利用すれば、touchでインターネットに接続できる。例えば、マクドナルドやルノアール、プロント、タリーズ、ケンタッキー・フライドチキン、シアトルズベストコーヒーといったカフェやファーストフード店をはじめ、JRや地下鉄の駅、ホテルなど、多くの場所で利用できるようになっている。現在、公衆無線LANサービスの多くが、ウェブページでtouchの接続方法を紹介し、手軽に接続できるようになっており、touchユーザーはぜひ一度試してみたいところだ。

●いざ接続! 公衆無線LAN

 今回は、プロントやロッテリア、タリーズコーヒー、都営地下鉄などで利用できる「Wi-Fine」にアクセスしてみた。接続しているエリアの情報や店舗のクーポンなどのコンテンツを用意しており、現在は時間制限付きながら無料でインターネット接続も利用できる。また、touch向けに2月29日まで、1日1回、時間制限なしでインターネットに接続できるキャンペーンを行っている。

 まずは、JR五反田駅でtouchを起動。メニュー画面から「設定」を開き、一番上の「Wi-Fi」をクリックすると、受信圏内にある無線LANが一覧表示される。「wifine」という項目が見つかったのでクリックすると、接続完了。touchが搭載しているブラウザ「Safari」を起動すると、あっけなく同社のウェブページが開く。まだインターネットにはつながっていないが、ネットワークには接続できてしまった。

 上部に表示されているバナーを開き、無料の登録作業を行う。touchのソフトウエアキーボードは小さいながらも入力はしやすい。ケータイのように予測変換候補が表示され、全部入力しなくても済むのが手軽。キーは小さいが、男性の指でも慣れてしまえばほとんどタイプミスなく入力できる。登録が済むと「インターネットに接続完了しました」とメッセージが表示されて、アクセス完了。設定らしい設定はまったくなし。touchでの登録作業が面倒なら、パソコンであらかじめ「Wi-Fine」に登録しておき、アクセスキーを取得しておけばさらに手間が省ける。


 アクセスポイントが隠れていて、一覧表示にない場合、「その他」をクリックすれば、ESSIDを直接入力して、インターネットに接続できるようになる。ちなみにtouchは無線LAN規格IEEE802.11b/gに対応しており、セキュリティ機能は高く、安心できる。

●ウェブページ閲覧でわかるインターフェースの優秀さ

 無線LAN接続後、早速グーグルを開いて検索してみる。キーワードを入力して「Go」をクリックすると、すぐに検索結果が表示される。タイプミスをしたら、修正したい部分を長押しすればいい。タッチした部分の拡大画像がポップアップするので、それを見ながら指を動かしてカーソルの位置を調整できる。小さい表示のままだと見づらいので、これは便利な機能だ。


 試しにWebBCNのページを表示してみる。しかし、縦表示のままでは文字が小さすぎて読めない! そこでtouchを横向きにする。これだけで、加速度センサーが認識し、横画面表示になる。それでも見にくい場合は、リンク以外の場所をダブルクリックすると、拡大表示になる。このほか、2本の指で画面にタッチし、指を開くことでスムーズに拡大することもできる。指の開き具合で、スムーズに表示倍率が変わる未体験の操作感は癖になりそうだ。フォントも美しく、読みやすさは抜群。画面が小さいので情報の一覧性は低いものの、テキストの閲覧に問題は感じない。


 また、touch用の「Safari」はタブブラウザではないが、開いている複数のページを切り替えて表示できる。右下の四角いアイコンをクリックすると、切り替え画面になるので左右に指をスライドさせて、表示したいページをクリックすればいい。
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 続いてインターネットの接続速度を計測してみた。結果は約5Mbpsと、モバイル端末ではトップクラスの速度。低速なCPUを搭載するモバイル端末では、1-2Mbps程度が普通で、3Mbpsも出れば上等なのだ。確かに、画像の多いウェブページでもさくさく表示できている。時々、ネットワークが途切れたように止まることがあるが、数秒で読み込みが再開されるのでストレスと言うほどでもない。


 そしてiPodといえば、iTunesでの楽曲購入。インターネットに接続できるtouchでも当然利用可能だ。それが「iTunes Wi-Fi Music Store」。メニューの「iTunes」をクリックし、好みのアーティストの曲を検索してみる。「おすすめ」や「トップ10」で、注目の曲やアルバムをチェックすることも可能。曲名をクリックすれば試聴でき、「ダウンロード」をクリックすれば購入できるシンプルさ。例えはじめてtouchを使う人でも迷うことなく、楽曲を購入できるだろう。

 ただし、touchで曲を購入する場合は、iTunes Storeのアカウントが必要。そのためには、あらかじめiTunes Storeにサインインした状態でtouchを同期しておく必要があるので気をつけよう。


 touch用「Safari」の唯一のネックは、Flashが使えないこと。ニコニコ動画が再生できないのは残念だ。とはいえ、独自のプレーヤーを搭載し、YouTubeのコンテンツは再生できる。モバイル向けにカスタマイズされた画面で、画像をタッチするだけで再生できる簡単操作が楽しめる。画質によっては、通信速度が追いつかずに止まることもあるが、しばらく待てばデータがキャッシュされ、普通に再生できる。


●自分の活動範囲や利用状況に応じた公衆無線LANサービスを選ぼう

 touchの無線LANを使いこなすには、公衆無線LANサービス選びも重要になる。それぞれ、対応エリアが異なり、自分の行動範囲をもとにサービスを選ぶのも手だ。マクドナルドをよく使うなら「BBモバイルポイント」、モスバーガー派なら「HOT SPOT」となる。鉄道の駅で利用できるサービスも多いが、JRや地下鉄、私鉄で対応状況が異なることもある。しかし、今回touchを街中で利用して感じたことだが、一番のオススメは複数のサービスを利用すること。首都圏の、特に繁華街であれば、外を歩いていれば常に何らかのサービスの範囲内なのだ。そのため、あちこち移動しても、先々で高速無線LANが利用できるという夢のような使い方ができる。もちろん、場所によっては対応エリア外にはなるだろうが、この方が便利だ。
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 筆者の行動範囲や環境では「BBモバイルポイント」や「livedoor Wireless」をはじめ鉄道や空港の公衆無線LANサービスをまとめて利用できる「ワイヤレスゲート」と、タリーズコーヒーに強い「HOT SPOT」を契約しているだけで、ほとんどこと足りる。いざというときのために契約だけしておき、利用する際にコストが発生するプランにしておけば、この場合、月額合計710円の基本料で済む。バリバリ使いたいという人には使い放題プランがあるが、こちらにしても月額合計は3400円。ウィルコムやイーモバイルのプランよりもはるかに安く、ネット接続環境が手に入るのだ。

 以下にtouchで利用できる主な無線LANサービスを紹介する。サービスの利用可能範囲や、プランごとの料金を比較しながら、自分に最適なサービスを選んでほしい。


●touchは究極のモバイルネット端末だ

 外出先はもちろん、実は自宅や事務所でもtouchは手放せない。筆者の場合、本格的な作業はPCで行うとしても、ちょっとした空き時間に新聞代わりとして目を通したり、メールチェックに利用している。メールソフトは今のところ提供されていないが、軽快動作のSafariなら「Gmail」などのウェブメールが十分に使えるからだ。また、打ち合わせ時にはスケジュール機能や電卓が活躍する。起動が一瞬なので、気軽に使えるのがうれしいポイントなのだ。

 さらに、夜ベッドに入ってから寝る前にお気に入りのブログを読んだり、YouTubeを楽しむといった使い方も○。そのまま寝てしまったとしても、数分で電源が切れるので、朝起きるとバッテリーが切れていたという心配もない。

 ただ、ウェブ閲覧に没頭していると、バッテリーは5時間ほどで切れてしまう。なるべく長く保たせるために、音楽再生用にiPod nanoを欲しくなってしまった。それほど、touchは無線LAN端末として出来がいい。快感さえ覚える秀逸な操作インターフェースは一度さわったらやみつきになるはず。

 さらに、アップルは米サンフランシスコで現地時間1月15日に開催した「Macworld Conference & Expo 2008」にてtouchにMail/マップ/天気/株価/メモの5つのアプリケーションを追加すると発表。touch用にカスタマイズ済みのメール機能、Googleマップを使った地図表示のほか、天気予報や株価情報のチェックができるようになった。

 1月15日以降に出荷されるtouchにはこれらのアプリケーションがインストール済みで、既存ユーザーは、iTunes Storeを通じて、2480円でアップグレードできる。


 このアップグレードにより、touchのホーム画面のカスタマイズ機能も追加できる。ホーム画面のカスタマイズでは、touchの画面に任意のサイトにワンタッチでアクセスするWebクリップと呼ばれるアイコンを配置できるので、無線LAN端末としての使いやすさが向上する。

 また、2月にはtouch用のアプリケーションを開発するためのSDKが公開になる予定。公衆無線LANの対応エリアも順調に広がっているいま、touchは究極ともいえる最強の無線LAN端末。これから一時代を築きそうな気配が濃厚だ。(アバンギャルド・柳谷智宣)