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借腹レビュー、発売直前の噂のデジカメ、リコー「GR DIGITAL」で撮る!

特集

2005/10/20 03:00

 一部ファンの間では、登場前から早くも神格化された感さえあるリコーの実力派コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)「GR DIGITAL」が、いよいよ10月21日に発売される。9月13日の製品発表会から待つこと1か月、「BCNランキング」編集部では、先週やっと発売前の量産機を拝借して試写することができた。そこで、本体に加えてオプションのフード&アダプター(GH-1)、外部ファインダー(GV-1)、ワイドコンバージョンレンズ(GW-1)一式について、使用感などをレポートする。


●まずは電池のふたに「ん?」、でも乾電池対応には花丸

 「GR DIGITAL」のパッケージは黒を基調とした色遣いで、コンデジにしては高級感のあるデザイン。ちなみに、本体パッケージには、「Adobe Photoshop Elements体験版」のCD-ROMが同梱されている。これは、「GR DIGITAL」のRAW画像がDNGというアドビシステムズ社が提唱する標準ファイル形式をとっているためだ。RAW画像を現像するためのリコー製専用ソフトというのはなくて、「Photoshop」や「Photoshop Elements」を使ってRAW画像を現像することになる。「GR DIGITAL」でRAWモードで撮影するようなユーザーなら、このほうが利にかなっているかもしれない。


 まずは付属のバッテリーチャージャーでバッテリーを充電し、本体にセットする。この時、1つ目の「ん?」に遭遇した。バッテリーのフタが少々頼りないのだ。カチッととまる感覚が乏しいため、持ち歩いているうちに電池のフタが開いてしまうのではと気が気ではなかった。実際には、丸1日持ち歩いてみても、フタが開くことはなかったが、オンにしていたはずの「hold」スイッチが半分オフの状態になっていたケースが1度だけあった。もう少し確実でしっかりしたロック機構を採用してほしい。

 一方、電池関連で特筆すべきは単四乾電池にも対応した、ということだろう。カメラなんだから、どんなことがあっても、とりあえずシャッターは切れてほしい。写ってナンボの機械だ。しかし充電式のバッテリーにしか対応していないカメラだと、電池切れや充電をうっかり忘たらそこでアウト。念のためにと用意していた予備電池も実は充電されていなかった、というのでは笑うに笑えない。そんな時でも、大抵のところで手に入る乾電池が使えれば何とかしのげる。この安心感は大きい。

●さすがの素速い起動、小気味よい「ピン」が来る感覚

 続いて、電源をオンにする。するとレンズバリアーが開いて、35mm判カメラ換算で28mmF2.4のレンズがボディからせり出してくる。ここで気が付いたのはその起動の速さだ。広角系単焦点レンズのコンデジということであれば、スナップ撮影がかなりの比重を占めることになるだろう。いつシャッターチャンスが訪れるか分からないスナップ撮影。撮りたい! と思ったときにすぐに撮れる俊敏さはさすがだ。


 スナップといえば、焦点距離を2.5mぐらいに固定するモードも用意されている。例えばライカでスナップを撮る場合、まずピントは2.5から3m程度に固定しておき、F11程度に絞り込み、被写界深度でピントをカバーしながら撮影することがけっこうある。ファインダーも見ず、ピントリングも触らずにパシャパシャと撮る。「GR DIGITAL」でもこの感覚で撮影できるわけだ。ここまでスナップ撮影を意識したコンデジはこれまでなかったのではないだろうか。


 さらに感心したのは、ピントが合うスピードとその過程だ。液晶画面ではピンが来ていない場合は大きくボケ、ピンが来るとすっとクリアになる。その差が明確で気持ちがいい。そして合焦スピードが速い。ボケ具合でのピント合わせと外部式のAFを併用しているためなのだろうが、シャッターを押してシャッターが切れるまでのタイムラグはあまり気にならなかった。

●動作音は少々耳障りかも?

 一方、動作音では2度目の「ん?」を感じた。「GR DIGITAL」は、厚さ25mmのボディに高性能レンズを格納するため、Caplioシリーズで培ったリコー独自の「リトラクティングレンズシステム」機構を採用している。そのための駆動音なのか、電源オンでレンズがせり出してくる時と、電源オフでレンズが格納される時に、けっこう耳障りな音がする。また、AF測距時に鏡胴内でレンズ群を動かしてフォーカスを合わせている時にも、同様の音がする。今回の機材固有の問題なのかもしれないが、ギアがかみ合って回転しているような音で、機械的といえば機械的なのだが、少々チープな感じがして、気になり出すと耳につく。

 価格もカテゴリーも違うので比較するのは少々無理があると承知の上であえて言うと、例えば銀塩のNikon F6などはフィルム巻き上げ音にまでこだわって、カメラが発生する音をわざわざチューニングする開発を行っている。そんじょそこらのコンデジとは一線を画す「GR DIGITAL」としても、こうしたレンズ部が発する音にはもう少し気配りがほしかった。

●銀塩感覚で撮れる外部ファインダーがイイ!

 銀塩GR-1ゆずりのコンパクトなボディは、ポケットに入れて持ち歩くにもまったく苦にならない。携行性はやや落ちるものの、フードや外部ファインダーをつけっぱなしにして撮り歩いてみても、これがなかなかホールド感がよくて、使いやすかった。とくに、本体に外部ファインダーを取り付けた「GR DIGITAL」は、ちょっと自慢したくなるようなカッコ良さだ。ホットシューに取り付ける外部ファインダーには、28mmと21mmのブライトフレームが刻まれている。この外部ファインダーは非常に見やすく、これを覗いて撮影している時は、「GR DIGITAL」がデジカメだということを忘れてしまいそうになる。まさに銀塩のレンジファインダーカメラ感覚で撮影が楽しめる。


 ただ、3番目の「ん?」は、フード&アダプターのつくりと、ワイドコンバージョンレンズに取り付ける花形フードのつくり。「GR DIGITAL」本体の質感と合わないように思えた。要は安っぽいということだ。本体やレンズへの取り付けもいまいちしっくりこない。とくに、花形フードをワイドコンバージョンレンズに取り付けるのは面倒。バヨネット式かねじ込み式にしてほしかった。なお、アダプターには電気接点がある。ワイドコンバージョンレンズを装着すると、その情報がこの接点を介してボディ側に伝えられ、画像処理のアルゴリズムが21mmの画角に最適化されるようだ。

 そして、この21mmだ。コンバージョンレンズが必要とはいえ、21mmまでの広角に純正品で対応するのは、この「GR DIGITAL」ぐらいしかないのではないだろうか? 20mmや21mmあたりは、実は大変に「使いで」があるレンズなのだ。一言で言えば絵になる画角。見慣れている風景を小さな画面にぐっと凝縮する効果があるので、一見散漫な風景でも「絵」にしやすい。さらに、被写体に寄ることで極端な遠近感も演出でき、面白い写真を撮ることもできる。「魔法のレンズ」表現するカメラマンもいるほどだ。広角側に弱いデジカメ、しかもコンデジにあって、これはまさに待望の画角だ。


●説明しがたい素晴らしさは「銀塩風味」がなせるワザ?

 ここまで、気になった3つの「ん?」を挙げたが、これらは言わば「重箱の隅」。「GR DIGITAL」を手にとって、あちこち撮り歩いていると、このカメラの良さがジワジワと伝わってくる。何がそんなにすばらしいのか、と問われるとうまく説明できないのだが、撮っていて無性に楽しくなる、写真を撮る面白さの原点に立ち返れる、といった感じなのだ。そういう感覚は、これまでのコンデジ、いや、もしかするとデジタル一眼レフでも感じられなかった感覚だ。

 何かが突出して優れている、という感じとは明らかに違う。いくら画質にこだわったといっても、1/1.8型で有効画素813万画素という小さなCCDでは、画像のノイズや階調表現などは35mmフルサイズのCCDにはとても及ばない。「GR DIGITAL」の魅力は、そういった「デジタル的」な性能の良さではないのだ。ボディの形状と質感がつくり出す感触、ディストーションを抑えたGRレンズの描写、そのレンズがとらえた画像が映し出される液晶画面の見え方、シャッターボタンの感触、各種撮影メニューの設定やボタン類の操作感……、そういったものが総合して「GR DIGITAL」の素晴らしさを構成している、としか表現のしようがない。

 それは、銀塩カメラでの撮影に熱中したことのある人なら、おそらく理解していただけるはずの素晴らしさだと思う。そうしてみると、「GR DIGITAL」は銀塩の心を持ったアナログなデジカメとでも言えばいいのだろうか? その不思議と居心地のいい感覚を、一度手にとって実感していただきたい。(フリーカメラマン、榎木秋彦)


*本体写真を除いて、写真はすべて「GR DIGITAL」で撮影したものです。
**WebBCNランキング編集部「借腹」レビューとは、借りてきた製品について、個人的な体験をもとに使用感などをまとめたものです。「借腹」レビューのほか、編集部員自らが購入した製品を対象とする「自腹」レビュー、社として購入した製品を対象とする「社腹」レビュー、もらい物を対象とする「他腹」レビューなどがあります。