「挑戦する権利・失敗する自由」というマインドを自ら実践する――第91回

千人回峰(対談連載)

2013/08/30 00:00

大谷 真樹

八戸学院大学学長 大谷真樹

構成・文/小林茂樹
撮影/津島隆雄

大谷 地方の私学は、少子化の流れのなかで経営的に苦労しています。私は起業家養成講座や総合研究所で会社の活性化やモデルチェンジの手伝いをしていたわけですが、法人に「この学校を大胆に改革してくれ」といわれ、自由にやらせてくれるというので学長を引き受けました。

 付属校で一番有名なのが、甲子園で三期連続準優勝した光星学院高校(現・八戸学院光星高校)ですが、どこにも八戸という文字が入っていません。だから、八戸大学と同じ系列の高校だと誰も思わないんです。八戸大学も野球が強く、神宮球場で行われる全国大会にもたびたび出場しています。高校と大学を合わせると十数人がプロ野球に進んでいますが、実は地元の人でも系列だということを知らない人が多い。これはマーケティング上、非常にもったいないことです。ちなみに、甲子園の決勝戦までテレビで校名を連呼された場合、広告費換算してみると62億円にも上るということでした。そこで、改革の第一歩として、ブランドを統一するために八戸大学から八戸学院大学に校名を変更し、付属校にもすべて「八戸学院」を冠するようにしました。OBを中心に猛反対されましたが、なんとか説得して今春から新しい校名に変更できました。次に取り組むのは教育内容の改革ですね。

奥田 今日もジーパン姿ですが、大学のホームページにも「ジーパン学長」として登場していますね。

大谷 実はITベンチャー時代の昔からこういうスタイルです(笑)。でも、大学の学長がジーパンで登場するというのはあり得ない話ですから、センセーショナルに映るわけです。地元新聞でもジーパン学長と紹介されたりしますが、広告塔の役割も戦略的に担っているつもりです。実際、私がジーパンをはいていることで、何か変化が起きるのではないかという期待感と注目が学校に集まっていると感じます。これも大きな宣伝効果ですね。

奥田 どこにでもジーパンで行かれるのですか。

大谷 入学式と卒業式以外は、校務でもジーパンですね。理事会に出席するときもそうですし、県庁や市役所、文科省にもジーパンで行きました。

奥田 学長としての仕事のかたわら、もう一つ、すごい挑戦をされていますね。

大谷 この夏、ジュネーブからニースまでの830kmを走破する自転車レースに参加します。毎日、高低差が3000メートルもある過酷な山岳レースで、日本人の完走者はまだいません。ちなみにメンバーは、元五輪選手の田代恭崇さんや俳優の筒井道隆さんを含めた4人。チーム名は「TEAM TAUGE JAPAN(チーム峠)」です。

奥田 たいへんなチャレンジですね。

大谷 八戸学院大学の目標の一つは、挑戦する人材を育てることです。それを提唱する以上は、学長である私も意識的にかなり高いハードルに挑戦しなければいけません。これを情報発信することで、学生たちに「挑戦する権利・失敗する自由」というマインドを伝えることができればと思っています。

奥田 一人のリーダーの力は偉大です。完走を心から期待しています。
 

「10年で100人の社長を育てる、と」(奥田)
 
(文/小林 茂樹)


【東奥日報 2013年8月25日の記事より】

●自転車レース日本人初の完走

 アルプス山脈を舞台にした、最も過酷な自転車レースと言われる「オートルート・アルプス」に日本から参戦した八戸学院大学学長の大谷真樹さん(52)ら「Team TAUGE(チーム・トーゲ) Japan」のメンバー3人(アテネ五輪自転車競技日本代表の田代恭崇さん、俳優の筒井道隆さん)が、8月24日、日本人初の完走を果たした。大谷さんは、ゴール地点のフランス・ニースからメッセージを寄せ、「『一番』というのは更新されるが、『初』というのは更新されない。すごく光栄なこと」と、日本人で最初の足跡を残せたことを喜んだ。

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Profile

大谷 真樹

(おおたに まさき)  1961年青森県八戸市生まれ。学習院大学経済学部卒業。日本電気勤務などを経て、市場調査会社インフォプラントを創業し、業界2位の企業に成長させる。2001年『アントレプレナーオブザイヤースタートアップ部門 優秀賞』受賞。2008年八戸大学客員研究員、2010年八戸大学・八戸短期大学総合研究所所長・教授、2012年八戸大学学長に就任。青森県総合計画審議会委員、八戸市後期総合計画審議会委員、青森県復興ビジョン懇話会委員、八戸ミュージアムポータルアドバイザリーボード、むつ小川原グリーンITパーク推進協議会会長。