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30年前に一世を風靡した「バーコードバトラーII」が2022年になっても色褪せない理由

オピニオン

2022/06/18 18:05

【木村ヒデノリのTech Magic #115】 タイトルを見てピンときた読者は筆者と同年代だろう。バーコードバトラーは1991年にエポック社から発売されたハードウェアゲーム機だ。当時すでに隆盛を極めていたファミコンをはじめとするテレビゲームをものともしない勢いで爆発的ヒットになった珍しいゲーム機で、そのコンセプトも斬新。同時期に普及し始めたコンビニにあやかった「コンビニウォーズ」という触れ込みで商品のバーコードを読み込んで戦闘力などに変換、対戦するというものだ。

 ゲーム画面にはデジタルの英数字と少しのマークなどしか表示されず、キャラクターは説明書に印刷するという当時からしても古臭いやり方にも関わらず、コロコロコミックの連載なども相まって子供たちを熱狂させた。現代においても色褪せないバーコードバトラーIIの魅力から、コンセプトメイキングやブランディングの重要性について考えてみたい。
 
初代バーコードバトラーからシステムが一新され、爆発的なヒットとなった「バーコードバトラーII」
 
ハードウェアからはじまり、ファミコンへ展開していくというマーケティングは当時革命的だった
 
バーコードバトラーIIからは魔法も使えるようになって戦い方の幅が広がった

社会現象になる面白さ、発見、コレクション、対戦の融合

 バーコードバトラーといえば、当時店の商品からバーコードのみが切り取られるという社会問題まで引き起こしたエポック社の大ヒット玩具だ。ファミコンやゲームボーイがあった時代に、ゲームソフト以外でブームを巻き起こすというのは革命的と言える。その要因となったのが「お店のどこかに強いキャラが埋まっているかもしれない!」という発掘性だ。トレカのようなコレクション性、対戦の面白さに加え、この発掘性があったおかげでテレビゲームを凌ぐ勢いになったのである。コンセプトだけでハード的に劣る玩具がテレビゲームに勝つというのはなかなかできることではない。おこづかいが少ない子でも工夫次第で探し出せるという発掘性は、当時テレビゲームにも勝る魅力をもたらしていたのだ。
 
 
バーコードバトラーIIでは有線接続による拡張性も完備され、
後に4人対戦や新たな職業(聖戦士など)も追加された

キャラクターが見えないのも現代においては新鮮

 予算の都合だったのだとは思うが、当時思い切って英数字しか表示させない選択をしたのも英断だったと言えるだろう。バーコードバトラーIIには対戦のほかにストーリーモードも用意されているがこの場合でも表示は英数字のみ。キャラクターはなんと取説に2色刷りされているだけという今だったら絶対に通らなそうな企画構成になっている。しかし子供の想像力にはそれが刺さった。当時を思い返すと、説明書に書いてあっただけとは思えないくらい鮮明にどの敵とどう戦ったかを覚えている。無理してキャラクターを動かしたりせずとも、子供は想像力でいくらでも補って楽しむ能力を持っているのだ。
 
取説でストーリーや敵キャラの見た目を解説し補うという斬新さ

 そして30年経った今なお面白いと感じるのにも、英数字しか表示されないという要素が働いている。多くのゲームで強さの他にキャラクターデザインや対戦でどう使えるかなど複合的要素を理解しないといけないのに対して、戦闘力がいくつかというのはシンプルでわかりやすく、現代ではかえって新鮮だ。「最近買ったあのお菓子って戦闘力いくつなんだろう...?」と昔を思い出して本体を買い直してしまった筆者の行動も、バーコードを戦闘力に変えて対戦するというコンセプトの良さを証明しているのではないだろうか。

終息の原因は「ブランド毀損」、ヒットしたジャンルの難しさ

 褒め称えているわりに長続きしなかったじゃないかという声もあるだろう。ヒットが終息してしまった理由はいくつかあるが、最も大きな原因はブランド価値の維持ができなかったところにある。遊戯王であれば対戦ルール運用やコラボの可否、ポケモンであればゲームの難易度やアニメ視聴者層の調整など、長続きしているトイビジネスはブランディングを非常にうまく展開している。

 新シリーズ投入など変化は必須なものの、陳腐化が起こらないように要所要所に制限をかけることはとても重要だ。この舵取りの上手さは双方ともアパレルのハイブランドに負けないほどで、事実ポケモン関連商品は今でも人気が衰えていないし、遊戯王カードに至っては投資対象になるほどである。

 バーコードバトラーではこの部分がうまくいかず、一気にブームが去ってしまったように思える。例えば、人気の渦中でドッジ弾平など当時人気だったキャラクターとコラボしてしまい、オリジナルのキャラクターカードの価値を落としてしまった。またバーコードでなくとも模様ならなんでもスキャンできる「スーパーバーコードウォーズ」(名刺すら対戦に使えたのでバーコードウォーズという商品名には苦言を呈したいが…)という競合機を制御しきれなかったのは致命的で、「売っているバーコードを読み取る」という意義が無くなってしまったのだ。
 
筐体やシステムは同じなのにドラゴンボールやガンダムのシリーズがリリースされていた「スーパーバーコードウォーズ」はまさにカオス状態

 バーコードウォーズはスキャンのスピードや手法でランダムに戦闘力が変わるのを売りにしていたので、キャラクターはなんでもよくなっていた。対策としてバーコードバトラーが公式のキャラクター強化や特定のバーコードを手に入れたときにだけもらえるキャラクタースリーブなどを導入していれば対抗できていたかもしれない。コンセプトがここまですぐれていても衰退してしまったことを考えると、ヒット後ブランド化するのがいかに難しいかが窺い知れるだろう。

ゲームとして超優秀だっただけに、復活を期待したい

 バーコードで対戦する、というコンセプトが非常に優秀だったのでぜひリバイバルしてほしいと思っている。購入履歴とバーコードを紐付けて必ず購入したバーコードしか使えないようにするようなことも今の技術的にはできる、端末もスマホで良いわけだ。

 また、キャラクターをバーコードのデータからAIが自動生成したりしても面白いかもしれない。生成されたキャラクターがNFTになって、そのオリジナルカードが3枚まで本人のみ購入できるなどといった仕組みができれば、新しいトレカ市場が形成される可能性がある。希少価値の高いバーコードの価格が高くなるようにすれば、今までと全く違った市場ニーズを喚起できることもあるだろう。バーコードを使ったゲームは古いようでいてさまざまな可能性を秘めている。すぐれたコンセプトを放置せず、新しい技術でエンターテイメントに昇華させてほしい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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