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画素数競争に終止符? レンズ交換型カメラの高画素数モデルが減少傾向に

 レンズ交換型カメラの画素数に頭打ちの兆しが見えてきた。販売台数で2400万画素以上の製品割合がこの4月、過去3年で初めて7割を下回ったからだ。全国の家電量販店やカメラ専門店、オンラインショップの実売台数を集計するBCNランキングで明らかになった。

 レンズ交換型カメラの画素数帯別販売台数構成比を集計したところ、2400万画素以上のカメラの占める割合が、この4月に69.9%を記録。昨年4月の81.2%から11.6ポイントも構成比が減少した。より高い画素数を追い求める流れは徐々に変わりつつあるようだ。デジカメの黎明期、性能のベンチマークは画素数だった。この考え方は現在でもある程度受け継がれている。画素数が増えれば画像はきめ細かくなり解像度が増す。そのため35mmフルサイズという限られた面積でも、3000万画素、4000万画素、果ては6000万画素を詰め込むセンサーが登場。搭載カメラも発売されてきた。
 

 一方で、1000万画素クラスのカメラが当たり前になってきたあたりから、画素数を増やすことが必ずしも画質の向上に結び付かないことも徐々に周知されるようになってきた。やみくもに画素数を増やしても、高感度特性が悪くなり、暗所の撮影で画面のざらつきが目立つようになってしまう。さらに、高画素数センサーが出力する画像のデータは、サイズが大きくなり、PCなどで取り扱いにくくなることもまた事実だ。動画撮影でも、必ずしも高画素数センサーがあらゆる撮影に適しているとは言えない。そのため、あえて1000万画素クラスのカメラをリリースする動きもある。

 レンズ交換型カメラ全体の平均画素数も、減少傾向に転じてきた。昨年4月の2395から、若干の上下はあったがこの4月は2360まで減少している。ただし、メーカー別では、かなり異なる動きを示している。トップシェアを走るキヤノンでは、平均画素数の変化は少ない。昨年9月トップシェアを奪取したソニー。このところ半導体不足の影響でカメラの生産が滞り急激にシェアを落としている。平均画素数にも大きな動きがあった。昨年前半は2500を下回っていたが、12月に2595と一気に拡大。3300万画素のα7 IV発売によるものだ。しかしこの4月、1210万画素のα7S IIIの売り上げが伸びると、平均画素数は2443まで下がった。
 

 ニコンの変動も大きい。昨年11月、2731と主要メーカーで最高の平均画素数を記録。要因は、4571万画素と高画素数のZ9発売によるものだ。この4月では、2454とだいぶ落ち着いてきた。一方着実に平均画素数を増やしているのが富士フイルムだ。現行モデルでは、2400万画素未満のモデルはないため、平均画素数では4月、主要6社中最高の2677に達している。APS-Cサイズと小ぶりなセンサーながら、画素数の多いカメラばかりだからだ。同社はフルサイズセンサーよりも1.67倍大きく1億画素の「ラージセンサー」搭載カメラもラインアップしており、平均画素数を引き上げている。

 平均画素数が少ないのはOMデジタルソリューションズとパナソニックだ。いずれもマイクロフォーサーズ規格で小さめのセンサーを主に採用。そのため、画素数は全体平均よりもかなり少ない。しかし、このところジリジリと画素数を上げてきている。特にパナソニックはマイクロフォーサーズ規格初の2500万画素を超えるGH6を発売するなどで、画素数が上がってきた。2420万画素や4730万画素のフルサイズセンサー搭載のSシリーズを擁することも、平均画素数上昇に寄与している。
 

 マイクロフォーサーズ規格一本のOMデジタルソリューションズは2400万画素を超えるセンサーを搭載したカメラはない。主要メーカーの中では、平均画素数が最も少ない。しかし、販売台数シェアはじりじりと上がり、4月にはソニーを抜いて2位に躍り出た。ソニーの特殊事情によるものが大きいが、画素数が少なくても販売が見込める好例だ。今後カメラの画素数は、数字の高低で優劣を示すものではなく、どのような撮影に適したカメラかを示す指標としての役割が、より強くなっていくだろう。(BCN・道越一郎)