【座談会】2018年を振り返る(1) IoT住宅

特集

2018/12/29 12:00

 当サイトは、7月に「BCN+R(プラスアール)」にサイト名を一新しました。「R」はRanking<ランキング>、Research<リサーチ>、Retail<リテール>の3つの「R」から。全国の家電量販店・オンラインショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」をもとに、ミクロ/マクロ、短期/長期のさまざまな視点からデータを分析し、「トレンド」や記者の「オピニオン」として最新の販売動向をお届けします。

 年末企画として、BCN+R編集部員が今年のトレンドを振り返る座談会を企画しました。テーマごとに、5回に分けて公開します。【本記事は1本目です】
 
「BCN+R」編集部で2018年の業界動向を振り返った

■■テーマ(1) 【IoT住宅】

スマートスピーカー×IoT家電で拓けた住宅との連携

 家電と住宅の関係が密接になってきた。発端はスマートスピーカーの登場だ。これまでも家電をスマートフォンや学習リモコンでコントロールするアプローチはあったが、広く受け入れられたとは言い難い。しかし、スマートスピーカーは、音声という分かりやすいインターフェースを利用していることや、すでに欧米での成功事例があることから、家電メーカーに限らず幅広い業界が関心を示している。

 その代表といえるのが不動産業界だ。1年ほど前から“IoT住宅”というキーワードを徐々に見かけるようになり、2018年末にはパナホームやソニー不動産などの大手が参入を表明した。年明けに米国ラスベガスで開催される世界最大の家電見本市「CES2019」には、積水ハウスが国内住宅メーカーとして初出展し、IoT住宅構想を発表するという。座談会では「IoT家電は単体ではなく、他の家電や住宅とトータルで連携することでパフォーマンスが最大化される」と期待が語られた。
 
2018年後半に大手不動産メーカーが「IoT住宅」に続々参入

 中小企業の動き出しは大手より早かった。記者も今年いくつかの中小企業が企画したIoT住宅を取材したが、そこで印象に残ったのは、大手メーカーのアプローチとは異なる、シンプルだからこそ容易にアップデートが可能な新たな住宅のあり方だ。

 例えば、不動産プラットフォームの開発・運営を行うTATERUは、一からIoT住宅を作り上げるのではなく“賃貸住宅をIoT化する”というアプローチをとる。スマートスピーカーや自前のホームゲートウェイ、それに連動する家電を丸ごと提供し、既存の住宅にも簡単にIoTを導入できるシステムを構築している。
 
賃貸住宅をIoT化する「TATERU kit」を導入したモデルルーム

 ターゲットに据えているのは、賃貸オーナー。昨今は部屋が埋まらず、住宅の賃貸価格は下落傾向にある。物件の価値を高めるための手段として、IoT住宅へのアップデートは魅力的なのだという。価格は税別で1部屋当たり17万5000円からと大規模なリフォームと比較すると格安、また立地に左右されずにシステムの導入が可能だ。

 担当者の話によると「IoT化による家賃の増額は5000円前後」とのこと。大手不動産メーカーは高所得者向けを想定した物件のほとんどだが、TATERUはより大衆に向けたIoT住宅の実現を目指している。
 
座談会では「IoT住宅はIoT家電の普及にも貢献するのでは」という意見が出た

 こうした提案は、家電メーカーにも追い風になる。IoT機能を搭載する家電は価格が高く、一般家庭ではなかなか手が出ない。しかし、それが住宅とセットであればどうだろうか。暮らしのコストをトータルで計算できるので、単体で購入するよりハードルは低いはずだ。IoT家電について「生活家電のAI化が顕著」という意見が座談会で出たが、そうした製品の普及にIoT住宅が一役買う可能性はある。(BCN・大蔵 大輔)