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3強が戦うクラウド会計ソフト市場(1) 導入ユーザーの動向を徹底調査

特集

2017/10/30 12:00

 クラウドサービスの業務利用は、メールやスケジュール表などのグループウェア、オンラインストレージなどで進んでいるが、それらに続いて導入が拡大しているのが、会計・給与・人事といった内部事務の分野だ。特に会計では、元グーグル社員らが開発したクラウド会計ソフト「freee(フリー)」が2013年3月にサービスを開始して以来、個人事業主や数名規模の小企業の間で急速に普及。現在はより規模の大きな中小企業の間でも導入が加速している。

 長らく「箱売り」だった会計ソフトの市場を塗り替えるクラウド会計ソフトの動向をつかむため、BCNでは9月、クラウド会計ソフトの導入が特に活発な中小規模の事業者のビジネスパーソンを対象に調査を実施。選ばれるクラウド会計ソフトはどれか、クラウド会計ソフトを導入することでどんなメリットを得ることができるのかを探った。

シェアトップは「freee」。「MF」「弥生」が続く

 今回の調査は9月25日から27日にかけて、既にクラウド会計ソフトを導入済みの企業や団体(従業員数・職員数300名未満)の従業員・職員、またはクラウド会計ソフトを導入している個人事業主を対象としてウェブアンケート形式で実施した。また、導入の動機や効果を尋ねるため、会計ソフトの導入に「関与していない」、もしくは利用している会計ソフトについて「どのようなツールかほとんど理解していない」と答えた回答者は集計対象外としている。

 まず気になるのは、ビジネスの現場で実際にどのようなクラウド会計ソフトが利用されているかだ。現在メインで使用しているクラウド会計ソフトについて尋ね、得られた418の回答の内訳は以下の通りだった。
 

 導入シェア1位は、クラウド会計の草分け的存在とも言える「freee」だ。同社発表によると、freeeの導入数は今年4月時点で80万事業所(クラウド会計ソフトの利用事業所数で、給与計算等のみを利用しているアカウントを除く)に上っているといい、クラウド会計ソフトの中でも特に存在感の大きいサービス。最大手と言われることも多いが、今回の調査でもそれが裏付けられた格好だ。

 続く2位につけたのは中小企業向け会計ソフトの老舗、弥生が提供する弥生会計オンラインだった。クラウド会計への進出はやや出遅れていた同社だが、既存ユーザー層の厚さや知名度の高さを武器に追撃している。

 3位はマネーフォワードの「MFクラウド会計」。同社は当初個人向けの家計簿アプリでサービスをスタートしたが、2013年11月にビジネス向けの会計・確定申告ソフトを提供開始して以来、freeeと同じく個人事業主や小規模法人のユーザーを獲得している。

 その他、4位以下に10個のサービスが挙がっているが、今回の調査ではいずれも回答数は全体の1割未満にとどまっており、ユーザー数では上位3サービスと大きな差があるようだ。

複数ソフトの使用経験ありというユーザーも多い

 調査結果からわかるように、クラウド会計ソフトの分野ではfreee、弥生会計オンライン、MFクラウド会計の主要3サービスが大きな市場シェアを獲得している。そこで本調査では、これら3つのサービスのいずれかをメインとして利用中とした回答者に対して詳細な問いを投げかけ、ユーザーの傾向を探った。

 まず、事業所の従業員別で主要3サービスのユーザーを集計した。各グラフの回答数(n)に注目してみると、クラウド会計ソフトの導入数が特に多いのが10名未満の事業所であることがわかる。首位のfreeeは10名未満、10名以上100名未満、100名以上300名未満のいずれの規模の事業所でもシェアトップとなっているが、メインターゲットとなる10名未満の事業所で多くの支持を集めたことが、クラウド会計ソフト市場全体でも大きなシェアの獲得につながっていると考えられる。
 

 同様に、回答を創業からの年数別でも集計した。小規模事業者が多いという前出の結果だけをみると、クラウド会計ソフトのユーザーはスタートアップ企業が中心という印象があるかもしれないが、実際には創業20年以上の企業でも多数導入されている。サービス別ではこちらも同じくfreeeが年数を問わず首位となっているが、特に創業20年未満の企業で他のサービスにより大きな差を付けている様子が見て取れる。
 

 クラウド会計ソフトはスタートアップのためだけのツールではないということがわかったが、では、現在のクラウド会計ソフトを使う前にはどのような会計ソフトが使われていたのだろうか。主要3サービスのユーザーで、なおかつそれを導入する際の選定にかかわっていたという人を対象に聞いてみた。

 下がその結果だが、パッケージ版からの歴史をもつ弥生会計オンラインのユーザーは、PCにインストールするパッケージ型の会計ソフトを利用していたという回答が最も多かったのに対し、freeeでは35.3%、MFクラウド会計では31.9%のユーザーが、現在と異なるクラウド会計ソフトを以前利用していたと回答している点は注目に値する。この理由としては、多くのクラウドサービスには使用開始から一定の無料期間が設けられており、複数の会計ソフトを試用しやすい環境にあることが考えられる。クラウド会計ソフト市場で上位のサービスは、ユーザーのリアルな目線での評価を経た上で、メインの会計ソフトとして選ばれている格好で、それだけユーザーの満足度も高いということが推察される。
 

 クラウド会計ソフト市場では主要な3つのサービスによって文字通り三つどもえの戦いが繰り広げられている様子が浮き彫りとなったが、各社は競争の中で、クラウド会計ソフトは単に事務作業の効率アップをもたらすだけでなく、業績向上やより強い企業体質づくりにもつながることを強調している。次回は、ユーザーがクラウド会計ソフトを導入するきっかけとなったポイントは何か、クラウド会計ソフトはパッケージ版の会計ソフトと本質的にどう異なるのかをお伝えする。