• ホーム
  • トレンド
  • パソコンがもっと売れるには? 過去10年のデータをもとにBCNが分析

パソコンがもっと売れるには? 過去10年のデータをもとにBCNが分析

時事ネタ

2017/04/14 08:00

 BCNは4月12日、全国の家電量販店・ネット販売店の実売データを集計した「BCNランキング」をもとに、報道関係者向け説明会を開催した。「いよいよ底打ちPC市場──IoT時代がPCに求める新たな使命とは?」と題したプレゼンテーションで、道越一郎チーフエグゼクティブアナリストは、「ようやく底を脱しつつある今、長期にわたって続いている販売不振からの本格的な脱却に向けて、全体的に低い日本人のPCリテラシーを高めるために業界挙げての施策が必要」と訴えた。


今回のプレゼンのポイント

Windows 8登場以来続いたダウントレンドに変化

 「BCNランキング」では、デスクトップPCノートPCタブレット端末をまとめて「パソコン(PC)」と定義している。タブレットとしてもノートPCとしても使える2in1タイプのPCは、形状によってノートPC、タブレットのどちらかに分類し、メーカーの意向により、Surfaceシリーズは集計対象外となっている。

 道越アナリストは、Surfaceシリーズと、通信機能付きタブレットの主要チャネルであるキャリアショップでの販売分が含まれていないため、タブレットに関しては実際より数値が低く出ていると前置きしたうえで、「不調が続くタブレットを含めても、今年1月は、33か月ぶりにPC全体の販売台数・金額が揃って前年を超えた。特に、PCの中心的なカテゴリであるノートPCは、昨年12月から4か月連続で前年超えとなっており、いよいよ底打ちといっていいのでは」と話した。
 

データをもとに解説する道越一郎チーフエグゼクティブアナリスト

 続けて、2016年3月から17年3月までの直近1年間と、07年1月以降の約10年に及ぶ長期間の月次データをもとに詳細を説明。PC全体の販売台数・金額や平均単価の推移、タイプごとのメーカー別シェアの変動などを示し、さまざまな角度から、国内のPC市場の現状を分析した。
 

 PC市場は、従来からのインターフェースを大幅に刷新した12年の「Windows 8」登場以降、ダウントレンドが続いていた。14年春に「Windows XP」のサポート終了と消費増税前の駆け込み購入が重なり、一時的に販売台数が大幅に跳ね上がったものの、その反動は大きく、ここ3年近くは過去にないほど売れ行きは低迷していた。

 転換点は、14年4月以来、2年半ぶりに台数伸び率がプラスとなった16年10月。翌11月は再びマイナスに逆戻りしたものの、1年で最もデジタル製品が売れる12月は再びプラスに転じた。さらに今年に入り、3か月連続で販売台数・金額はいずれも前年を上回った。道越アナリストは、「まだ本格的な回復とはいえない」としながらも、風向きが変わってきたと指摘する。
 
 

 直近の3月は、ノートPCに加え、絶不調だったデスクトップPCも前年を上回り、ほぼ15年の水準に接近。最新OSWindows 10」の安定化に加え、4月11日でサポートが終了した「Windows Vista」やスペックの低い「Windows 7」搭載機種からの買い替えが販売台数を底上げしているとの見方を示した。
 

 さらに、07年1月から約10年間のノートPCのOS別販売台数構成比を示し、現行の「Windows 10」は、次バージョンのリリースまでの3年間、安定的に売れていた「Windows 7」のパターンに近づきつつあるとの見方を示した。PC販売の好不調は、OSの評価に左右されているともいえる。
 

一体型デスクトップの大画面化が進む TVチューナー搭載率も5割以上に

 また、最近の傾向として、ノートPCは軽量化、デスクトップPCは、主流のディスプレイ一体型PCの大画面化とTVチューナー搭載率の高まりを挙げた。

 ゲームやテレビ試聴、動画・写真の鑑賞、プログラミング、長文の作成などのクリエイティブな用途なら、スマートフォンより、大画面のPCにアドバンテージがある。ディスプレイ一体型PCは、この1年で急速に大型化が進み、画面が「23.8インチ以上」の構成比は7割を突破。さらに、16年秋以降、より大きい「27インチ」の比率が高まり、直近の16年3月は15.5%を占めた。こうした大画面PCは、テレビの置き換えとして選ばれているとみる。
 

業界を挙げてPCのポテンシャルの訴求を

 約1時間のプレゼンテーションの前半、アメリカ、韓国、中国、日本の4か国を対象とした「高校生のICTの活用に関する国際比較」の調査結果を紹介。学生に限らず日本人全般のITリテラシーが低く、そうした初心者層に合わせて多くのソフトウェアを最初からバンドルした「てんこ盛り」の仕様、そして高めの価格設定こそがリテラシーの向上を阻害する要因とし、「今までのPCメーカーの考え方は間違っていたのではないか?」(道越アナリスト)と疑問を投げかけた。

 スマートフォンが広く普及し、インターネットの閲覧など、ライトな使い方だけならPCの必要性は薄れている。PCならではの生産的な使い方をアピールし、業界を挙げて日本人のPCリテラシーを高める施策が必要と強調した。さらには、一段と携帯性を高めたミニノートや斬新な形状など、驚き感のある新しいPCの登場に期待したいと、締めくくった。(BCN・嵯峨野 芙美)