第6回U-16旭川プロコン 雪をも溶かす子どもたちの熱気

特集

2016/12/27 10:14

 例年に比べ、3週間は早い積雪を迎えた北海道・旭川市。雪が降り積もるなか、旭川科学館は、独特の興奮に包まれていた。第6回U-16旭川プログラミングコンテスト/第3回U-16プログラミングコンテスト北海道大会(主催:U-16旭川プログラミングコンテスト実行委員会/後援:旭川市教育委員会)は、そんな熱気のなかで始まった。

取材・文/ITジュニア育成交流協会 市川正夫
写真/道越一郎・市川正夫

<明日の社会を担う若者たち 飛翔するITジュニア>

競技部門は過去最高の54人が参加

 大会当日の朝、30cm近くまで降り積もる雪のなか、大会に参加する子どもたちが先生に引率されて、次々に会場の旭川市科学館サイバルに入っていく。第6回U-16旭川プログラミングコンテスト/第3回U-16プログラミングコンテスト北海道大会は、11月6日午前10時、旭川高等専門学校の佐竹利文教授による開会宣言で幕を開けた。
 

雪の中、開催された「第6回U-16旭川プロコン」の参加者

 U-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)には、競技部門と作品部門がある。競技部門は対戦型ゲームプラットフォーム「CHaser旭川版」上で参加者が作成したプログラム同士が戦って勝敗を決める。今年の競技部門の参加者は、昨年の倍近い54人で、中学校7校、高校3校から参加した。

 作品部門は、CGやウェブコンテンツ、アプリ、音楽など、プログラムを用いて制作した作品であれば自由に参加できる。会場後ろのボードで展示した作品部門には、9作品が集まった。
 

会場は熱気に包まれた

 競技部門の旭川大会予選は、一人ひとりが実行委員会が用意したプログラムと戦って得点を競い、上位12人が決勝に進出する。決勝トーナメントは北海道大会を兼ねて、この12人に釧路・帯広大会の優勝者・準優勝者の4人が加わり、16人が2本先取の3本勝負で優勝を争う。

 予選では、プログラムが立ち上がらなかったり、すぐに止まってしまったり、自ら壁に突っ込んでしまう、同じところをぐるぐる回ってしまうシーンも見られたが、勝っても負けても失敗しても、歓声が会場を包んだ。

決勝は女子生徒の戦いに

 旭川大会予選を勝ち抜いた12人の内訳は、今年初めて挑戦した中学1年生が5人、2年生が1人、3年生が5人、高校・高専1年生が1人。昨年、旭川大会を制して北海道大会に進み、決勝で涙をのんだ下村恵子さん(旭川教育大付属中3年)や、富良野から参加した中村拓夢さん(富良野緑峰高1年)など、多彩な顔ぶれだ。

 決勝トーナメントからの北海道大会に参加するのは4人。釧路大会では、昨年、一昨年の北海道大会の覇者の二人が敗退するという“波乱”があり、それだけに今年優勝した畑井有人さん(釧路高専1年)、準優勝の岸凪沙さん(阿寒中1年)に期待が集まった。つい3日前に初めて開催した帯広大会からの代表は、優勝した松尾真冬さん(帯広工業高1年)と準優勝の伊藤航さん(帯広工業高1年)だ。

 2本先取の決勝トーナメントはレベルの高い戦いになった。戦いの場である「CHaser」のマップパターンが変わったことや、相手のプログラムとの相性という運の要素もあって、旭川大会の予選上位者や釧路・帯広の代表はなかなか勝つことができない。ベスト4に残ったのは、岩上舞依さん(中央中1年)、鬼塚佳任さん(神居中2年)、後藤耀一さん(神居中3年)、それに予選1位通過の下村さんという“旭川組” で、決勝は岩上さんと下村さんという女子生徒の戦いになった。
 

決勝は岩上舞依さん(左)と下村恵子さんの女性対決

 決勝は、1本ずつ取り合った後、下村さんが最後のゲームで岩上さんを制した。下村さんのプログラムは、明らかにほかの参加者とは動きが異なる。しかし、3本勝負で1本取られたとき、下村さんの顔には不安と緊張の表情が貼りついていた。そして最後の1本で勝負が決まったとき、両手を挙げて飛び上がって喜んだのが印象的だった。昨年の悔しさを見事に晴らした下村さんの順当勝ちで、やはりU-16プロコンにはドラマがある。

 今年の大会は、NPO法人ITジュニア育成交流協会の協賛企業であるさくらインターネットの協力で、大会の模様をYouTubeのライブストリームで配信。大会の司会をITイベンターとして知られたさくらインターネットの法林浩之さんが務めたことで、例年にも増して盛り上がった大会になった。
 

司会・実況で会場を盛り上げた法林浩之さん

 さらに、同じく協会協賛企業であるクリプトン・フューチャー・メディアやアイ・オー・データ機器、バッファローが副賞を提供した。

 地域の大人たちの志によって支えられた高校・高専の先輩たちが、子どもたちを大会まで導いていく――そんな理想的な仕組みをもった大会が成長を重ね、「プログラミングの世界に子どもたちの未来をつくる」イベントとして全国に発信できるレベルに成長しつつある。