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<Key Person>シュッピン 会長 鈴木慶 スケールメリットだけじゃない 「面白い時代になってきた」

インタビュー

2016/06/24 18:00

 「Map Camera」などカメラの中古と新品を扱うインターネット企業として急成長中のシュッピン。売上高は約227億円(2016年3月期、前年度比118.5%)の規模ながら、従業員1人当たり1億円以上を売り上げる超効率経営を実践している。ソフマップの創業者でもあり、これまで3社を上場させた実績を持つ鈴木慶会長は、「面白い時代になってきた」とインターネットビジネスの可能性を熱く語る。

「面白い時代になってきた」と語る鈴木慶会長

出店して拡大するのは簡単 売り上げ下がるとコストに

――──2014年度(15年3月期)に従業員1人当たり売上高が1億円になりました。家電量販トップでもここ数年は達成できていません。

鈴木 シュッピンはカメラ、時計、文房具、自転車の4分野ごとに別々のインターネットサイトを持ち、中古と新品の両方を扱っています。社員には「一商売、一店舗」と言っています。お客様とコミュニケーションを取る場として1店舗は構えますが、それ以外はすべてネット販売です。私はリアル店舗の経営者の経験もあるのでよくわかります。新規出店で店舗をつくるのは簡単なんです。銀行は融資してくれるし、それで保証金を払って、商品を仕入れて、採用費用もまかなえます。月次でいきなり黒字化も可能で、損益計算書にマイナスが発生しないのです。かつてのダイエーもそうでしたよね。

 しかし、店舗が悪くなったときに、初めてコストが発生するのです。どんなに大企業で多くの店舗を構えていても、いったん悪くなるとあっという間に経営がおかしくなるケースは珍しくありません。3店舗あれば同じ商品を三つ在庫していて、売れなくなるとそれがコストに変わってしまうからです。一方で、インターネットは商品在庫は一つです。中間流通の在庫というバッファを持たなくてもいい。シュッピンの売上高販管費比率は12%です(表1)。ネット販売の比率が高くなるほど、販管費率は下がっていくのがネット企業の特徴です。17%、15%、14%と年々下がっていて、いずれは10%を切るのではないかと考えています。09年3月期のEC売上比率は約4割でした。16年3月期は57%になりました。
 
 

──なぜカメラ、時計、文房具、自転車に絞っているのでしょう。またなぜ、中古買取市場に目をつけたのですか。

鈴木 この会社の根本に横たわっているのは「趣味」です。趣味は人生を変えてしまうぐらいのものだと思っています。ですからカメラ、時計、自転車は私の趣味から起こした事業で、文房具は社員の趣味から生まれた事業です。自分が自信をもっておすすめできる商品を販売して、お客様に喜んでいただき、カメラブランドもリスペクトできる。カメラに愛情を注いでいますし、趣味なら自分が間違った判断をすることはないだろうと。 カメラに中古買取を組み合わせたのは、2005年の会社設立当時にインターネットにビジネスチャンスがあると考えましたが、あっという間に大きくなったアマゾンや楽天と同じことをしていては勝てないので、中古ビジネスに目を付けました。特に、中古と新品の両方を扱っているのはシュッピンならではの強みだと考えています。

──カメラの中古市場規模はどのぐらいありますか。

鈴木 正確なデータはありませんが、カメラの新製品マーケットは年間約2000億円。ここに毎年、中古市場がストックされていくので、売上高200億円規模のシュッピンにとって、まだまだ伸びシロがあることは間違いありません。また、何でも売ります、買いますではなく、カメラなど趣味性の強い商品に特化しているのもポイントです。ふとんや自転車とカメラが一緒に並んでいる店で買いたいと思いますか? 店員だって、まともに応えられないでしょう。カメラなどの嗜好品は、商品知識のある人から買いたいという点はものすごく重要で、シュッピンが大切にしていることです。一つの商品をどこまでも深堀りしていくビジネスです。

・後半<自社の強み><社内アイデアから新ビジネス>に続く
 
■プロフィール
鈴木 慶(すずき けい)
1959年11月、東京都府中市生まれ。埼玉県で育つ。埼玉県立菖蒲高等学校卒業。旅行会社に勤務の後、貸レコード店経営などを経て、82年、ソフマップを設立。2000年、ソフマップの社長を退任しドリームテクノロジーズ社長に専任。03年、同社社長退任。05年、シュッピンを設立し代表取締役社長に就任。12年、東証マザーズ上場。15年、東証一部に市場変更。16年、同社代表取締役会長に就任(現任)

・動画インタビュー
トップに聞く『会社の夢』
 
◇取材を終えて
 中古買取のインターネット販売で急成長中のシュッピンは、攻めのイメージが強いが、強固な守備にも注目したい。会社設立時から「上場を目指す」と語っていた鈴木会長は、ネットでは「信頼」が大きなアドバンテージになると考えていた。実際、東証一部上場によって地方のお客が増えた。新宿にある本社の100m以内に店舗を含むすべての機能を集約している点や画期的な「先取交換」の商標登録も、ネットなら検索すれば一発で違反業者がわかる。サイズが小さく高単価な嗜好品に絞っているのもシュッピンの強みになっている。(至)
※購読無料の専門紙『BCN Retail Review』2016年7月号から転載