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<TopVision>エレコム葉田社長、売上高1兆円に向けて期待されるエンベデッド事業

インタビュー

2016/10/28 17:00

 創業から30周年を迎えたエレコム。記念式典で葉田社長はステークホルダーから「1兆円を目指してください」と発破をかけられたという。ざっと今のエレコムを10社つくることを意味する数字だ。30年の節目でエレコムの何が変わるのか。

取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/細田 立圭志、写真/川嶋久人

・前半<「VR元年」で発揮される、軽くて俊敏なエレコム>

なぜ他社が消えていったのか

道越 最近ではVRウェアラブルヘルスケアのほかにも産業用組み込み事業のエンベデッドに注力していますね。
 

30年間を振り返る葉田順治社長

葉田 30周年でエレコムが大きく変わったのが技術力の強化です。ロジテックハギワラソリューションズ、日本データシステムの3社がグループに加わったことで技術力が強化され、エレコムのカルチャーでもある、とことん使えるまで面倒を見る、かゆいところに手が届く、あったらいいなと思ってもらえる製品がつくれるようになりました。

 IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)には、2つの側面があると考えてます。IoTはコンピューティングのひとつですから、われわれが得意とする分野で、エンベデッドはこれらの領域です。実際に、IoTのネットワークを組み込んだボードなどに関する依頼をいただいています。一方のAIは、自動運転など社会インフラの分野です。こちらはクラウドが主になるでしょうが、われわれの領域ではありませんね。

 いずれにしても、エレコムのように高単価から低単価、ハイテクからローテクまで幅広く手がける会社がないのです。エンベデッドからPC周辺機器まで、まじめにやっている会社がないんですよ。

道越 なぜ他社はまじめにならかったのでしょうか。

葉田 アクセサリーは最初は簡単に参入できます。中国から製品を引っ張ってきて、パッケージを変えるだけで儲かります。しかし、私は「そんなことが長く続くわけがない」と考えていましたから、オリジナルのデザインで金型も品質管理もしっかりと自前で行うことにこだわり続けました。そうしているうちに、ライバルがどんどんと消えていったのです。

 自前のファームウェアやASIC(特定用途向けの集積回路)でソースコードを管理する。当たり前のことを、きっちりやっているだけです。私は社員に「だれでもできる仕事だけど、だれもできない仕事だ」とよく言っています。
 

強みはハイテクからローテクまで手がける幅広さ

道越 エンベデッドで蓄えた技術がコンシューマ事業にも反映されるのでしょうか。

葉田 必ず反映されます。NASやHDD、USBのセキュリティメモリやデータリカバリなど、すべてエンベデッドからきていますから。きっちり、かっちり、安定して動作するかどうかを検証する、粘り強さが求められるのがエンベデッドです。ワクワクする製品を開発するのがエレコムというイメージでしょうか。

 例えば、何かトラブルが起きたときに、エンベデッドの人たちがファームウェアやASICの解析などで衆知を結集して解決にあたります。仲間意識が強いのも、エレコムのカルチャーで、ここにエンベデッドの技術力が加わったことは大きな変化ですね。

■プロフィール
三重県出身。1976年に甲南大学経営学部卒業後、86年に家電量販店向けOA家具メーカーとして大阪市都島区にエレコムを設立。当時取締役。92年常務取締役、94年専務取締役を経て、同年11月に取締役社長に就任。PC周辺機器やネットワーク機器、スマートフォン周辺機器など、時代に合わせて事業を拡大し、近年はオーディオやヘルスケア機器も手がける。また、子会社化したロジテックなど3社で代表取締役を兼務し、産業用組み込み機器事業に注力する

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