Proに迫る実力! 2020年秋の本命「iPhone 12」をレビュー

レビュー

2020/11/10 18:05

 アップルが2020年の秋に4機種の新しいiPhoneを発売した。実機をハンドリングしながら各モデルの特徴的な機能や使い勝手を連続レポートしてみたい。今回は10月23日に発売した6.1インチの「iPhone 12」を取り上げる。

10月23日に発売した6.1インチの「iPhone 12」をハンズオン

 四つの新しいiPhoneはこのiPhone 12を基準に置くと、それぞれの違いがはっきりと見えてくる。ディスプレイのサイズと仕様はほぼ共通の「iPhone 12 Pro」は一段と高機能なカメラが搭載している。6.7インチの「iPhone 12 Pro Max」はiPhone史上最大サイズのスマホだ。そしてiPhone 12とほぼ同等の機能を備えるプレミアムラインのiPhoneとして初めてのコンパクトサイズモデルとなる5.4インチの「iPhone 12 mini」が話題を振りまいている。

 これらの新しいiPhoneはともに国内ではNTTドコモ、auソフトバンクが提供するSub-6の周波数帯を使う5G通信サービスに対応する5Gスマホだ。iPhone 12はアップルの直販サービスではストレージ容量が最も小さい64GBのモデルが税別8万5800円で販売されている。10万円を切る価格で購入できる高機能な5Gスマホとして注目に値する。カラーバリエーションはiPhone 12 miniと同じ5色が揃う。

片手操作も可能なサイズ感。フロントガラスに耐久性の高い新素材

 iPhone 12シリーズは2019年発売のiPhone 11シリーズからデザインが少し変わっている。特徴的なのは本体の側面。iPad ProやiPad Airのようにエッジをシャープに立たせたことで見た目がスリムになった。それだけでなく、手に持った時にしっかりとしたグリップ感が得られる。6.1インチは手の小さい筆者でも、アップル純正のクリアケースを装着した状態でギリギリ片手持ち操作ができるサイズ感だが、グリップ感が安定したぶん、片手持ちによる操作はiPhone 11 Proよりもスムーズになったと思う。
 
側面はエッジをシャープに立たせたデザインに変わった

 ディスプレイのガラスには米コーニング社とアップルが共同で開発した強化ガラスの新素材「Ceramic Shield」が使われている。落下に対する耐性は従来のiPhoneと比べて4倍高くなったというが、バッグに入れて持ち歩いてもディスプレイに傷が付きにくくなったことがありがたい。
 
ガラスとセラミック素材を混ぜて強化した新素材「Ceramic Shield」が使われている。

iPhone 12もProと同じ「A14 Bionic」チップ搭載

 ここまでのiPhone 12のハイライトは、本体のカラーバリエーション以外は上位モデルとされている「iPhone 12 Pro」と変わらない。頭脳であるチップもアップルが独自に設計・開発する最新の「A14 Bionic」と、機械学習を必要とするタスク処理に特化した新世代のNeural Engineを両方のモデルが共通して搭載している。

 筆者はiPhone 12 ProとiPhone 12を一緒に試しながら使っているが、マルチタスク処理やARアプリの表示はどちらのモデルも互角の使い勝手を実現していると感じた。ただしiPhone 12 Proの方にだけ、光による高精度な測距を可能にするLiDARスキャナを搭載しているため、暗い場所で写真を撮影する際にフォーカス合わせが速く完了したり、ARアプリの空間認識がより速くできたり、互いの「差」として実感できる部分もある。
 
フロントパネルの切り欠きは残ったが、iPhone 11に比べると
ディスプレイ周囲のベゼルが狭くなっている。
ディスプレイは有機ELタイプの「Super Retina XDR」に変更された。

ビジネスシーンで活躍する「一段と明るく撮れるカメラ」

 カメラ機能の主な違いとしては、iPhone 12が広角・超広角カメラのデュアルレンズユニット仕様としているのに対して、iPhone 12 Proにはこれに望遠カメラを加えたトリプルレンズユニットを搭載している。
 
ダブルレンズカメラを搭載するiPhone 12

 ビジネスシーンで記録用との写真や動画を撮影するぶんには、望遠カメラを持たないiPhone 12でも十分に役割を果たしてくれる。広角カメラがiPhone 11シリーズよりも明るく撮れるようになっているので、昼間・夜間ともにより明るく、そして色鮮やかな写真が残せる。さらに夜景など暗いシーンの写真撮影をサポートする「ナイトモード」が広角・超広角カメラの両方で使えるので、アーティスティックな写真撮影も楽しめそうだ。
 
iPhone 12の広角カメラで撮影。ディティールが鮮明で色鮮やかな写真が撮れる。
 
iPhone 12 Proで撮影。iPhone 12の写真性能が引けを取らないことがわかるだろうか。

 iPhone 12シリーズから初めて、メインとフロント両方のカメラでHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)の高画質技術に対応するビデオ撮影が可能になった。HDRビデオは「撮る」だけでなく、同じくHDR対応としたiPhone 12シリーズの有機ELディスプレイSuper Retina XDRで「見る」ことができるし、iOSにプリインストールされている写真アプリで「簡易編集」もできる。

 HDRビデオの記録は米ドルビーラボラトリーズが開発したDolby Visionという方式になる。より一般的な記録方式であるHDR10やHLGに比べると互換性がやや低いため、基本はiPhone 12で撮って・見る楽しみ方になるだろう。

 ただし、HDR方式でビデオを撮影すると通常よりもファイルのサイズが大きくなってしまう。必要な場面以外ではカメラアプリの設定からHDRビデオをオフにするか、もしも高画質なHDRビデオを撮影を積極的に使いたいのであれば、ストレージの容量は大きめのiPhoneを選んで購入したい。

Proとの価格差は2万円。差額で最新のMagSafeアクセサリーも買える

 iPhone 12の広角・超広角カメラでは、iPhone 12 Proに引けを取らないほど高画質な写真や動画が撮影できる。ステンレススチールによる光沢処理としたiPhone 12 Proの方がやや見栄えも煌びやかな感じがあるものの、ビジネスシーンではつや消し処理を施したアルミニウム素材の側面パネルを採用するiPhone 12の、落ち着きのあるブラックやホワイトが好印象を与えるだろう。ビビッドなブルー/レッド/グリーンも楽しく使えそうだ。
iPhone 12のブラック。背面は美しい光沢処理のガラスパネルとしている
 
アップル純正のシリコンケースを装着

 Proと同等の高性能を持つiPhone 12は、5Gのサービスを試してみる「初めての5Gスマホ」にも最適だと思う。最安値のモデルを選んだ場合、iPhone 12 Proとの差額は21,000円になるので、浮いた分をiPhoneの背面にマグネットで吸着する新しいMagSafeアクセサリーの購入に充てるのも良いだろう。各種カードが収納できる「MagSafe対応iPhoneレザーウォレット」などは役立つ買い物になると思う。
 
マグネットの力でiPhone 12シリーズの
背面に吸着するMagSafe対応のアクセサリーも登場する。
写真はワイヤレス充電器

 次回はiPhone 12を基準に、iPhone 12 ProシリーズやiPhone 12 miniのハンズオンレビューをお届けしたい。(フリーライター・山本敦)