USB Type-Cって何? 新規格を推進するロジテックにその可能性を聞いた

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2015/07/17 18:00

 モバイルPCの新時代を予感させるマシンとして、2015年4月に登場した新Macbook。Mac史上最薄のきょう体や感圧タッチトラックパッド、かつてない打感のキーボードなど、従来のノートPCの概念を大幅に変える要素に満ちたプロダクトだ。なかでも、驚きだったのは、インターフェースが「USB Type-C」のみであること。次に購入するデジモノを新Macbookに定めていた筆者も、「正直、時代を先取りしすぎてないか?」と思わず尻込みしてしまった。

「そもそも、USB Type-Cって何?」

 コネクタに表裏がなくて、挿し違えないのは、そりゃ便利だけど……この疑問を解消せずして、新Macbookを購入するわけにはいかない。そんなことを考えていると、PC周辺機器の老舗メーカーであるロジテックが、USB Type-C対応のポータブルHDD(ハードディスクドライブ)を発売したという情報をキャッチした。ロジテックが推奨するなら、きっと勝算がある選択に違いないと確信した筆者は、USB Type-Cに戸惑うユーザーの代表として、事業開発部のチームリーダー、國安淳史氏を直撃した。
 

ロジテックでUSB Type-C対応を推し進める事業開発部のチームリーダー・國安淳史氏(右)を直撃!

USB Type-Cは革命的規格? 将来はあらゆる端末がType-Cを採用する可能性も

大蔵大輔(以下、O):新Macbookの登場で急速に認知度が高まったUSB Type-Cですが、この新しいタイプのUSBは将来性の高い規格なんですか?

國安淳史(以下、K):USBの規格は転送速度だったり、形状だったりを変えて、これまで進化を重ねてきましたが、USB Type-Cは従来とは影響力のレベルが異なる革命的な規格だと思っています。今年6月に台湾で開催された「COMPUTX TAIPEI 2015」では、最大40Gbpsの転送速度を誇る「Thunderbolt 3」が発表されましたが、採用された形状はType-C。これから、モバイルを含めたあらゆる端末でこのType-Cの波がくるのではないでしょうか。
 

「USB Type-C」は革命的な規格だと語る國安氏

OGoogleが発表した次期OSの「Android M」もType-Cに対応することが発表されていますよね。PCやタブレットスマートフォン(スマホ)が、それぞれ同じインターフェースで統一されると、周辺機器やデータ共有の活用がだいぶ変わってきそうですね。

K:Type-Cは、これまでのUSBの形状と比較するとかなり小型です。したがって、PCだけではなくて、モバイル端末にもコネクタを搭載できるんです。現在は、Android端末にはmicroUSB、iOS端末にはLightningというように、それぞれの端末ごとに規格が異なっているため、ケーブルもそれぞれ用意する必要がありますが、これが統一されれば、1本のUSB Type-Cケーブルであらゆる端末の接続が完結します。

O:複数台の端末を所持する人にとって、これはかなりうれしいですね。Type-Cは小型だったり、コネクタの裏表がないリバーシブル仕様だったり、形状が特徴的ですが、ほかにメリットはありますか?
 

USB Type-Cに戸惑うユーザー代表・BCNランキング編集部の大蔵

K:形状面の変化はかなり分かりやすいポイントですが、性能面でのメリットも多岐にわたります。まず、映像伝送や給電に対応すること。これまで必須だったHDMIケーブルや電源ケーブルは必要なくなります。例えば、新MacbookのType-Cポートは電源・USB・ディスプレイ・VGA・HDMIの五つの役割を果たしています。

O:Type-Cポート×1というインターフェースは衝撃的でしたが、通常のPCで要求される外部接続のニーズにはしっかり対応できるということですね。むしろ、今後発売されるであろうノートPCは、ポートがType-Cに集約することで、よりシンプルなインターフェースに変化していくということですか?

K:その通りです。Type-Cの普及が進めば、端末側のデザインや仕様は大きく変化することになります。パワーデリバリーの進化も重要で、双方向での給電に対応するので、周辺機器の電源で端末を充電するだけでなく、端末の電力を周辺機器に供給するといった使い方もできます。
 

小型でリバーシブル仕様のUSB Type-Cコネクタ
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Type-C対応のポータブルHDDが早くも登場! 新Macbookにマッチする使い心地&デザインを提案

O:ロジテックでは、7月にMac専用のType-C対応ポータブルHDDを発売しましたが、いち早く新規格を推進した意図を教えてください。

K:開発自体は新Macbookの発表以前から着手していました。Type-Cが認知されるきっかけとなった新Macbookは、革新的な一方で「標準ストレージ容量が少ない」「外部機器と接続できるポートが一つしかない」など、弱点もあります。クラウドストレージが一般的になってきたとはいえ、信頼性や機密性を考慮したときにネットワーク上でデータを保存するのはリスクを伴います。ビジネス用途ならなおさらです。この弱点をカバーする存在として、ポータブルHDDの需要は大きいと考えました。
 

ロジテックが7月に発売したUSB-TypeC対応のポータブルHDD

O:たしかに、クラウドですべてのデータを管理するのは用途が広がれば、それだけ難しくなりますね。セキュリティ面以外にも問題はあります。例えば、デジタルカメラで撮影した写真のRAWデータや4K動画など、容量が大きいデータの管理はクラウドでは対処できない。

K:写真や映像を撮影する人にとっての需要は特に大きいでしょうね。スペックが向上し、モバイルPCでも写真・動画編集ができるようになりましたが、ストレージ容量が足りないのでは、そもそもデータが保存できない。特に高精細の素材になるほど、データは大きくなるので、今後ますます大容量データを持ち歩くための保存先は必需品になるでしょう。

O:内蔵ストレージの付け足しとしてだけではなく、バックアップ用途として使用する人も多そうですね。ストレージ容量が飛躍的に増加したことで、ポータブルHDDの活躍の場は広がっているように思います。

K:まさにおっしゃる通りで、モバイルPCのバックアップとしてポータブルHDDを購入するユーザーは増えています。今回発売したMac専用の新製品も対応しているのですが、Mac OSが標準搭載するバックアップソフトウェア「Time Machine」を利用すれば、時間を遡ってデータを復元することもできます。また、OSをインストールして、起動ディスクにすることも可能で、自宅にあるMacの環境をオフィスにあるMacで再現するなど、使い道は広がっています。

O:今回、リリースした新製品の特徴はどんなところになりますか? 新Macbookを意識して開発されただけあって、Mac本体とマッチするメタリックなデザインは目を引きますよね。

K:TypeCに対応する変換アダプタを付属しているのはもちろん、Macbookといっしょに持ち歩いてもらうために、デザインはかなりこだわりました。質感もMacに近い触り心地に仕上げています。ちなみにアダプタを取り外せば、従来のTypeAに対応するので、旧式のMacを使っている人も心配は無用です。ロジテック製ならではの強みとして挙げられるのは、高品質のWD(ウエスタンデジタル)製のHDDを搭載していることですね。長野県にある自社工場で徹底した体制のもとで加工や検査をしている、安心のメイド・イン・ジャパンです。
 


O外付けHDDは、同じ製品でも内部に搭載されているHDDによって品質にばらつきがあり、当たり外れがあるケースも多いですが、ロジテック製なら「同一製品はすべて同品質」、よって安心して購入できるということですね。

K:安心という点では、外部からの衝撃に対する耐性にも自信があります。すでにロジテックでラインアップしている耐衝撃性モデルの外装を採用し、軽量なのに頑丈という持ち歩きには欠かせない要素を両立しました。

 まずは、内部のHDDを固定する衝撃吸収ラバーフレームにより落下や衝撃からデータを保護します。加えて、外部からの衝撃が内部に伝わりにくい構造を採用、ボディが圧迫されることによるHDDへの衝撃を大幅に減らしています。アメリカの軍隊で耐衝撃性を示す基準とされているミルスペックをクリアしていることが、その証です。

O:ポータブルHDDとして、学校や仕事だけでなく、アウトドアのレジャーにも安心して持ち歩けるのは大きいですね。最近は、アクションカムが人気ですが、自然の中で撮影した映像をその場で編集したいというニーズが高いと聞きます。そんなアクティブ派は、耐衝撃性も意識したいポイントですね。
 

K:写真・動画好きは特にデータを保護する意識が強いですね。ロジテックはハイアマチュアのカメラファンが多く集まるFacebookの巨大コミュニティ「東京カメラ部」とコラボレーションしていますが、作品を守るためになんらかの対策を講じている人は非常に多い。

 ポータブルHDDは、コンパクトかつ手軽に始められるデータ保護の手段なので、スマホやコンパクトデジタルカメラでたまに写真を撮影するようなライトユーザーにもおすすめです。将来的にスマホやタブレットなどのモバイル端末にType Cが普及すれば、ポータブルHDDでバックアップをとる人はもっと増えるでしょうね。ロジテックとしては、今後さらにTypeCを推進していく方針です。

O:Type Cはまさにデジタルを新しいステージにステップアップする存在、というわけですね。今後の普及が楽しみです。本日はどうもありがとうございました。

(聞き手・文:大蔵大輔)