コニカミノルタ、薄い・軽い・曲がる有機EL照明 普及プロジェクトが始動

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2012/09/27 19:57

 照明器具市場で、「省エネ」「長寿命」で注目を集めるLED電球。しかし、世を明るく照らすのはLEDだけではない。次世代を担う照明として、最近注目度が高まっているのが「有機EL照明」だ。コニカミノルタが開発に力を入れている。

携帯電話やテレビに採用される有機EL

 有機ELというと、最初に頭に浮かんでくるのが「有機ELテレビ」。当初、携帯電話のディスプレイとして実用化がスタートし、その後、液晶テレビやプラズマテレビに続く次世代の薄型テレビとして、ソニーやサムスンなどが有機ELテレビを発売している。この有機ELを利用した照明パネルの開発が進んでいる。

 有機ELは、電圧をかけると発光する有機化合物を2枚のガラス板の間に挟み、電圧をかけて光らせる。発光効率が高く省電力で光るうえ、薄く、コンパクト。有機化合物を挟む板をプラスチックなどの柔らかい素材にすることで、折り曲げることができるという特徴をもつ。さらに、点で光る白熱電球やLED電球と異なり、面で発光するので、広い範囲を照らすことができる。
 

有機EL照明の構成(コニカミノルタのホームページより)
 

コニカミノルタが有機EL照明パネルを使った「未来のあかり」を占う

 コニカミノルタは、有機EL照明のサンプルパネルを企業などに販売している。今年3月には、認知度向上のために、「想いをカタチにする 未来のあかりプロジェクト」をスタートした。
 

「想いをカタチにする 未来のあかりプロジェクト」のトップ画面

 ホームページに特設サイトを設け、有機EL照明の特徴や優位性を解説。また、新しい技術である有機EL照明が今後の「あかり」をどのように変えていくのか、有識者のインタビューや対談を実施し、その動画を特設サイトで公開している。

 9月27日には、「未来のあかり座談会」として、空間デザインやウェブサイトの企画開発を手がけるチームラボの猪子寿之社長と、ロボット開発を手がけるロボ・ガレージの高橋智隆社長による対談の動画を公開した。
 

左がチームラボの猪子社長、右がロボ・ガレージの高橋社長
 

デジタルの最先端を走る二人が思い描く未来の「あかり」

 コニカミノルタが開発した有機EL照明パネルは、有機化合物に発光効率が高い「リン光」物質を採用している。サンプルパネルは74×74mmのコンパクトなものだ。
 

二人が手にしているのが有機EL照明のサンプルパネル

 有機EL照明パネルを手にした高橋社長は「面で光っているものを見る経験があまりないので、不思議な感じがする」と第一印象を語り、猪子社長は「軽い。熱くならないのがすごくいいね」と、電球との違いを体感していた。
 

サンプルパネルを手に、あれこれ考えを巡らせる二人

 さらに、「あかり」「ひかり」の重要性を、空間デザインやロボット開発を手がける二人ならではの視点で語り合う。チームラボは、ブロック型の照明器具「メディアブロックチェア」が9月13日に経済産業省主催の新事業「Innovative Technologies」に採択された。単体でも照明器具やイスとして使えるほか、ブロックの凸の面と凹の面とをジョイントすることで光の色を変えることができる照明器具だ。猪子社長は「いろいろな作品を手がけているが、アウトプットが映像だったり、あかりだったりする作品が多い」と自分の作品を振り返る。
 

チームラボが手がけた「メディアブロックチェア」

 一方、ロボ・ガレージは、走ったりジャンプしたりできる「ロピッド(ROPID)」を始め、数多くの小型ヒューマノイドロボットを開発してきた。高橋社長は「ロボットの目を光らせるために、LED電球を使っている。目をリング状に光らせるために反射板を使うなどして、とても苦労した。有機EL照明なら、発光パネルそのものをリング状にすることができるので、楽ちんになるね」と、ロボット開発での光の重要性に触れた。
 

ロボ・ガレージが開発した「ロピッド」

 このように、「あかり」「ひかり」を独自の感性でデザインに落とし込んでいる二人。デジタルの、そしてデザインの最先端を走るこの二人が有機EL照明パネルを使ったら、どのような作品が生まれるのだろうか。

 高橋社長が、スケッチブックにササッと観葉植物らしい絵を描く。「面で光る特徴を生かして、観葉植物の葉っぱが光ったらいいな、と。照明だけでなく、インテリアにもなりますよね」。
 

高橋社長が描いたスケッチ

 猪子社長は、有機EL照明パネルらしいマスをいくつも描き連ね、「パネルを格子状に並べて、外とかに置くんです。で、風が吹くと軽いパネルがパタパタ動いて、動いているパネルだけが光るとか……」と話すと、それを見た高橋社長も「ああ、いいですね。パネルの中心を止めて、クルクル回してもおもしろいですよ」と、斬新なアイデアを出し合った。
 

猪子社長が描いたスケッチ

 では将来、有機EL照明が商品化されたら、身近な「あかり」はどのように変わるのだろうか。「あかり」の未来について二人に聞くと、猪子社長は「照明器具はなくなるんじゃないかな」と答えた。高橋社長も「壁とかテーブルとかが光って、照明器具がいらなくなると思います」と、猪子社長の意見に同意する。また、アニメの『天空の城ラピュタ』や『風の谷のナウシカ』の世界のように、部屋全体がぼんやりと光る――そんな空間も、有機EL照明なら実現可能だと話した。

 これまで照明といえば「天井から光を注ぐもの」という概念があったが、有機EL照明の普及によってその概念が覆る日も遠くないかもしれない。

 コニカミノルタは、「未来のあかりプロジェクト」の一環として、11月1日から一般消費者を対象に有機EL照明を使ったアイデアを広く募る。また、応募作品のなかから優秀作品を選び、国内外の展示会で発表・展示する予定だ。