レンズ一体型の市場縮小は継続、高画素化も止まり、漂う閉塞感

アナリストPOSデータ分析

2017/06/09 11:00

 スマートフォンの普及が進むにつれ、レンズ一体型デジタルカメラの販売台数は後退し、回復に向けての決め手を見出しにくい状況が続いている。一時期、スマートフォンとの差異化を図るために、業界は高画素化へと舵を切ったものの、需要を維持することすら難しかった。高画素化に伴う単価アップが嫌われてか、市場規模は縮小を続け、現在は3年前の半分程度にまで落ち込んでいることが、家電量販店ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」から読み取れる。最近では高画素化の動きも頓挫しており、閉塞感は否定できない。


 2014年5月の販売台数を「1.00」として、レンズ一体型の台数指数を算出したところ、15年3月までは前年とほぼ同じ水準を維持できていたことが分かる(図1下)。15年4月から連続して前年実績を下回り始め、月を追うごとにマイナス幅は大きくなった。16年11月には「0.49」と約2年半の間に市場規模は半分にまで縮小、その後、若干戻すも17年5月は「0.58」にとどまり、依然として厳しい状況に陥っている。台数指数と平均単価の動きをみると、指数が落ち込み始めた時期と平均単価の上昇し始めた時期がほぼ一致しており、販売減は平均単価の上昇と関連が強いことが分かった(図1上)。
 

 
 そこでレンズ一体型の画素数帯別の台数構成比(図2)を算出してみると、平均単価が上昇し始めた15年3月に「20-25mp未満」(2000-2500万画素未満)の比率が増加し始めており、高画素化へのシフトが単価上昇を招いた、とみてよさそうだ。しかし、「20-25mp未満」が5割を超えた17年1月から高画素化も止まっている状況だ。

 レンズ一体型の高画素化が進んだのは、スマートフォンに搭載されるカメラ機能の向上が挙げられる。スマートフォンのカメラの画素数は「12-16mp未満」が7割超を占め、レンズ一体型よりも低いが、今後は高画素の製品が増えていきそうだ。スマートフォンの利点は常に携帯していること、電話回線を有しているため撮影した画像をSNSに投稿するのが容易であることなど、アドバンテージは多い。レンズ一体型にとっては、スマートフォンとの差異化を図ることではなく、共存していくための立ち位置探しや所有欲を刺激する製品が必要となるだろう。


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。