スマートフォン市場の売れ行きが好調だ。これは17年11月に発売した、iPhone Xが大きく影響しているが、単純にこの製品が販売台数を伸ばしたわけではない。iPhone Xが市場の単価を引き上げ、従来の高価格モデルに割安感が出たことで、商品選択の幅を広げたと考えられる。近年はSIMフリー端末の台頭もあり、以前の勢いを失いつつあったアップルのiPhoneシリーズだが、その現状から救ったと言えるだろう。iPhone Xがもたらしたこの功績を、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」をもとに追った。


 まず、スマートフォン市場全体の販売台数伸び率(前年同月比)について、過去2年を月別にみると、17年9月発売のiPhone 8/8 Plusと、同時に発表となったiPhone Xの買い控えも作用し、10月の伸び率は前年を下回っていたが、iPhone Xが発売された17年11月以降はプラス域を維持(図1)。一方、トップシェアのアップルは一時期、3割台まで比率を落としていたが、iPhone Xの発売後は6割近くのシェアを保っている。現在、市場が好調であることと、アップルのシェア拡大は関係性が深く、販売台数を大きく伸ばした3月のアップルのシェアは59.3%になった。
 

 そこで、アップルに限定した、販売台数の伸び率とシリーズ別構成比を算出した(図2)。伸び率では市場全体同様、11月以降はプラスで推移しており、2ケタ増を維持している。ただし、シリーズ別の動向をみると、iPhone Xが最も高い構成比となったのは18年11月の37.3%だけ。それからはiPhone 8が徐々に比率を伸ばしており、直近の3月には57.6%と半数以上を占める一方で、iPhone Xは11.4%まで下落している。

 従来のiPhoneシリーズと比べ、斬新なデザインや高機能の付加により、発売前から大きな注目を集めていたiPhone Xだが、注目度の高さほど売れているとは言い難い状況。それでもiPhone Xが市場に大きな影響を与えたといえるポイントは、価格の高さだ。定価が10万円以上する、いわばプレミアムモデルの登場で、今まで最上位の価格帯であったiPhone 8/8 Plusなどの7~9万円台の商品も、標準的な価格となり、ユーザーの目が届きやすくなった。

 また、多様な機種が増えたことで、iPhoneシリーズのラインアップが強化されたことも、市場に勢いをもたらした要因のひとつ。15年発売のiPhone 6s/6s PlusはY!mobileとUQ mobileでの割安な契約プランで人気を集め、iPhone SEも小型画面を求めるニーズをうまく捉えている。

 iPhone Xの登場により、プレミアムモデル領域が広がったのは間違いない。そして、この影響を受けているのはアップルだけではなく、他スマートフォンメーカーも同様だ。アップルが再び市場での存在感を強めるこの市場で、次はどのメーカーが一石を投じるのか、注目したい。(BCNアナリスト 山口渉)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。