2026.9.29 18:00

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災害時に大切な人へ安心を届ける“最後の砦”、KDDIに聞く「災害用伝言板」の役割と進化

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【いまこそ知りたい「災害用伝言板」による「もしも」の通信術・1】地震や豪雨などの大規模災害が発生した際、多くの人がまず利用するのは電話やLINEなどのSNS。ただ、通信回線の混雑や停電によって連絡が取りづらくなることも少なくありません。そんな状況で重要な役割を果たすのが、通信事業者が提供するサービス「災害用伝言板」です。KDDIでは、災害発生時の安否確認を支える災害用伝言板に加え、防災情報を日常的に受け取れる「au災害対策アカウント」も提供しています。そこで、KDDIで災害関連サービスに携わるキーマンに、災害用伝言板の特徴やSNSとの違い、今後の取り組みについて話を聞きました。(BCN・佐相 彰彦)

丸岡孝至・事業戦略本部事業企画部サービス推進グループリーダー(写真中央)
物井善郎・事業戦略本部事業企画部コアスタッフ(写真左)
佐藤俊樹・オペレーション本部プラットフォームエンジニアリング部メッセージング1Gグループリーダー

「無事です」を確実に届けるためのサービス

――まずは、それぞれの役割を教えてください。

丸岡グループリーダー(以下、敬称略) 私は事業戦略本部事業企画部で、災害関連サービスの主管を担当しています。利用者に提供するサービスの企画や仕様策定、実現したい機能の検討などを行っています。

物井コアスタッフ(以下、敬称略) 私も丸岡と同じ事業企画部に所属し、災害関連サービスを担当しています。

佐藤グループリーダー(以下、敬称略) オペレーション本部プラットフォームエンジニアリング部に所属しています。災害用伝言板システムの開発や運用を担当しています。

――災害用伝言板サービスには、どのような特徴がありますか。

丸岡 通信事業者各社の共通になりますが、最大の特徴は事前登録が不要で、災害発生時にすぐ利用できることです。スマートフォンや携帯電話から安否情報を登録できるほか、登録された情報は他社の携帯電話やPCなどからも確認できます。通信事業者ごとに災害用伝言板のシステムは存在しますが、検索機能は通信事業者間で連携しているため、相手がどの通信事業者を利用しているのかを気にする必要はありません。電話番号さえ分かっていれば安否情報が確認できます。
 
KDDIの「災害用伝言板」トップページ

丸岡 災害時には回線混雑や停電によってリアルタイムで連絡を取ることが難しくなります。そのような状況でも、一時的に通信できたタイミングでメッセージを登録しておけば、後から家族や知人が確認できます。私たちは、このサービスを「大切な人へ安心を届ける“最後の砦”」だと考えています。
 
「災害用伝言板」の特徴を説明する丸岡グループリーダー

約230万人が利用する「au災害対策アカウント」

――KDDI独自の取り組みとして、「au災害対策アカウント」があります。

丸岡 これは「+メッセージ」やRCSを活用した防災情報ポータルです。災害発生時には、ここから災害用伝言板へ素早くアクセスできます。特徴的なのは地域登録機能です。例えば東京に住んでいる方が、離れて暮らす親御さんの住む地域を登録しておけば、その地域の地震情報や避難情報などが受け取れます。地方自治体が発信する災害情報も集約しているので、防災情報の確認にも役立っています。

――利用者数はどれくらいですか。

物井 au災害対策アカウントの登録者数は約230万人です。地域登録機能については約90万人の方に利用いただいています。一方、災害用伝言板は事前登録型ではないため、固定の会員数はありません。災害規模によって利用件数が変わります。
 
「au災害対策アカウント」の地域登録機能について話す
物井コアスタッフ

能登半島地震で見えた課題

――災害用伝言板が実際の災害時に利用された事例は?

丸岡 直近の「令和8年熊本地震」などでも利用がありましたが、「令和6年能登半島地震」で特に大きな利用がありました。災害発生直後は通話やデータ通信が集中するため、安否確認手段として活用いただいたケースが多かったと認識しています。

――その経験をサービス改善にどう生かしていますか。

丸岡 実は、災害用伝言板自体の機能追加よりも、「通信を止めないこと」の方が重要だと考えています。どんな優れたサービスでも、通信インフラが機能しなければ利用できません。そのため、現在は通信網の維持や早期復旧に重点を置いています。

SNSでは代替できない理由

――LINEなどのSNSとの違いを教えてください。

丸岡 大きな違いは「リアルタイム性」です。LINEなどのSNSは双方向でリアルタイムのやり取りを前提にしています。一方、災害用伝言板は非同期型です。返信がなくても成り立つ仕組みなので、被災した相手に負担をかけず、自分のタイミングで安否情報が確認できます。

物井 電話番号をキーにしていることも特徴です。SNSは匿名性が高いサービスもありますが、災害用伝言板は家族や親しい知人との安否確認に向いています。災害時は「相手が無事かどうか」が何より重要です。その確認を確実に行うための仕組みとして電話番号を活用しています。

――通信環境が不安定な状況でも有効なのでしょうか。

佐藤 災害用伝言板は通信量も少なく、一瞬だけ通信がつながった状況でもメッセージの登録や確認が可能です。停電や通信障害が長引くケースでは、継続的な通信よりも「一度でもメッセージを残せること」が重要になります。その意味で、災害用伝言板は非常時に強いサービスといえます。
 
「災害用伝言板」の強みについて語る佐藤グループリーダー

Starlink Directとジャパンローミングが変える災害対応

――通信を止めないため、具体的にはどのような策を講じていますか。

丸岡 代表例が「Starlink Direct」の活用です。被災地で地上基地局が利用できない場合でも、衛星通信を活用して移動基地局を迅速に展開できます。さらに、「JAPANローミング」も開始しています。これは、自社の基地局が停止した場合でも、他社の基地局を利用して通信を継続する仕組みです。加えて災害用無料Wi-Fi「00000JAPAN」も活用し、多層的な通信確保を進めています。

――Starlink Directによって安否確認はどのように変わりますか。

丸岡 最大の変化は、「連絡手段が存在する安心感」をより早く提供できることです。SNSも、Webサービスも、災害用伝言板も、全ては通信インフラが利用できて初めて機能します。Starlink Directはその土台を素早く復旧するための手段です。もちろん、屋内ではつながりにくいなどの課題もあります。そのためJAPANローミングや00000JAPANなどと組み合わせながら、通信を維持する体制を整えています。

災害時に真っ先に思い出してもらうために認知度向上へ

――今後の強化方針を教えてください。

丸岡 さらに認知度を向上することが重要だと考えています。災害時に「安否確認なら災害用伝言板だ」と真っ先に思い出していただくことが大切です。幅広い世代に知っていただくための啓発活動を継続していきます。また、通信を止めないためのインフラ投資や復旧対策も引き続き強化していきます。
写真ギャラリー

佐相 彰彦

Akihiko Saso

「週刊BCN」の記者として入社。その後、副編編集長に就任。編集管理と記事企画を担当する。現在は「BCN+R」の編集・記者として業務に従事。家電やITをベースに、スマホやPCをはじめ、周辺機器やサービスなどを取材している。

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