ウレタン素材の変更や側面の放熱パイプの廃止などで薄壁化を実現
省スペースかつ大容量を実現できたもう一つの理由が薄壁化だ。冷蔵庫は食材や食品を冷やして保存するため、住宅と同じように断熱材を使用して保存中に外部の熱が侵入しないような構造になっている。一般的に断熱材として使用されるのは発泡ウレタンと真空断熱材で、外側に真空断熱材を配置し、その内側に発泡ウレタンを敷き詰めている。

壁を薄くすれば、庫内の容積は拡大する。しかし、薄壁化には3つの課題があったという。それは、壁を薄くすることで断熱性能が低下すること、成形時の発泡ウレタンの流れにくさ、薄壁化による壁の強度確保だ。
発泡ウレタンは液体で、必要な部分に流し込むと発泡して膨らむ。HYタイプでは、この発泡ウレタンに新素材を採用した。従来の素材は液体であるものの流動性が高いとはいえず、コーナー部や回り込みなどの小さい場所や薄い場所にうまく流し込むことができなかった。そのため、従来は発泡スチロールやほかの素材を用いてカバーしていた。
新製品ではこの断熱用ウレタンに流動性の高い新素材のR-1224ydを採用。この素材変更によってコーナーの隅のように小さい場所や薄い場所にもしっかり流し込めるようになった。しかもR-1224ydの採用で断熱性能も約13%アップし、従来よりもウレタンの厚みを薄くしながら強度も確保することができた。

細部まで充填されてウレタンの厚みが薄くなっている
薄壁化の実現はこれだけではない。庫内を冷やすための冷媒循環パイプも従来は一部が冷凍室エリアで重なっていたため、その重なりの分だけ壁が厚くなっていた。HYタイプではこの冷房循環パイプの配置レイアウトを変更して重なりを解消し、その分薄くすることができた。
さらに放熱システムも見直した。従来は側面内側にも放熱用パイプを配置して、機械室から発する熱を冷蔵庫全体で放熱していた。HYタイプでは機械室の放熱ファンを大型化し、放熱能力が約3.6倍という高効率のマイクロチャネルコンデンサーを新たに採用した。
これにより機械室の熱は機械室内で放熱するため、側面内側にあった放熱パイプをなくすことができ、その分、庫内の容積が拡大した。

コンデンサーなども一新して薄壁化を実現
薄壁化はこのように断熱材を薄くするだけではなく、内部の構造や使用部材も変えることで実現したのだ。

野菜室背面の壁厚が45%薄くなった

2024年モデルより30%薄い壁厚を実現
冷凍室上段は深型ケースで食品をタテ置き収納可能
大容量を実現したHYタイプは、冷凍室の容量がアップするとともに新たな工夫で使いやすさもアップしている。その工夫とは、上段ケースの深さを従来の約8cmから約12cmにして、冷凍食品・食材を立てて収納できるようにしたことである。
タテ置き収納のメリットは、ひと目で収納しているものが分かること。ヨコ置きで積み重ねると、当然のことながら一番上に置かれたもの以外は隠れて見えない。
同社がファミリー世帯の男女1200名を対象として実施した意識調査によると、『冷凍室からいつ保存したかも分からない化石のようになってしまった食材が出てきた経験はあるか』との問いに、回答者の半数近い47.5%が「かなりある」「たまにある」と回答した。
「ある」と回答した59.9%は、その食材を「捨てた」。つまり、冷凍保存したにも関わらず、結果的に廃棄した経験がある人は意外と多いことが分かる。

冷凍食品・食材をタテ置き収納して見えるようになれば、この廃棄ロスを低減することが可能となる。
また、同社の冷凍室と野菜室は高耐荷重のベアリング式レールを採用した、奥まで見えるフルオープン。いずれの部屋も100%フルオープンで引き出すことができ、タテ収納での視認性はもちろん、冷凍食品・食材の出し入れも非常にラクである。
冷凍室をフルオープンで引き出せるからこそ、タテ置き収納のメリットを最大限活かせるのだ。
さらに冷凍室上段のケースには専用のカバーを配置して霜つき抑制冷凍を実現している。カバー上部にはいくつもの小さな穴が開けられており、ケース内部への外気の侵入を防ぐと同時に冷凍保存時は、この穴からケース内の不要な湿気を逃がす。
ドアの開閉によるケース内の温度変化を抑え、余分な湿気を逃して霜つきや食材の冷凍焼けも抑制するという仕組みだ。

省スペースかつ大容量を実現したコンパクトBIGシリーズのHYタイプは、8年ぶりのフルモデルチェンジで機能や使い勝手が大きく進化した。冷蔵庫の買い替えを考えているのであれば、家電量販店の店頭などでフルモデルチェンジの成果を実際に体験してみることをおすすめしたい。