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エンジン好きなおじさん達に刺さらない「MX-30 EV MODEL」は、車嫌いな人にとって最高な一台だった

レビュー

2022/07/25 12:00

【木村ヒデノリのTech Magic #122】 今までの車という概念に囚われなければ最高の1台かもしれない。「MX-30」は「M」の頭文字からわかるようにマツダが新たな挑戦として出してきた車種だ。今回紹介するEVモデルはMX-30の従来の特性に加え、e-SKYACTIVをはじめとするEVならではの性能を持ち合わせている。

ELECTRICの文字と大きめの充電口が特徴的なマツダの「MX-30 EV MODEL」
 
画面に触れずにコントロールできるこのUIとApple CarPlayの組み合わせは最強
 
見られる時間が長い後ろ姿のデザイン性が高いのも走行する上でポイントが高い

一言で表すなら「すべてが滑らか」 各機能の統合性が群を抜いて凄い

 かく言う筆者も20代の頃にRX-8を乗り回していたエンジン好きおじさんの一人だ。エンジンの良さは理解しているつもりだし、車を走らせる楽しみも知っている。しかし歳をとるにつれてその情熱よりも「もっと楽に運転したい」という思いが強くなった。最近はもっぱら自動運転が早く実用化されないかと願い、長距離走行は運転支援機能がない車では出かけないようになってしまっている。そんな筆者は元々運転に向いていなかったのかもしれないが、同じように感じている人は高齢層や若者層に多いのではないだろうか。そんな層には自信をもってこのMX-30 EV MODELをおすすめしたい。
 
運転支援機能や360度ビューカメラなど、運転に苦手意識がある若者や高齢者にもやさしい仕様

 以前に筆者は通常のMX-30も試乗し、その素晴らしさを体感しているのだが、EV MODELはそれをさらに超えて新しい概念を提供している。エンジンが無くなったことで全ての機能がシームレスに統合され、体の一部のような操作性と人間のような運転支援機能の両方を実現しているのだ。
 
さまざまな機能が一体となって感じられるようシームレスに統合されている

 例えば、アクセルは踏み込みだけでなく、その速度も検知してドライバーの意図を汲み取り動作する。ゆっくりペダルを操作している時は車速が維持しやすい穏やかな変化になるが、すばやい踏み込みに対しては加速したい気持ちを理解して即座にレスポンスしてくれる。ブレーキも「頭が揺れずに止まれる」ということを基準に、ブレーキペダルの操作量から制動力を算出。その範囲内で最大限回生ブレーキを使って発電し、不足分のみ摩擦によるブレーキをかけてくれる。ペダルの踏み込みと減速Gが一致するよう緻密に作り込まれているのでドライバーは回生ブレーキの違和感を一切感じずに減速することができる。
 
アクセルと同時に加速を示唆するサウンドも流れる。
一連の動作がエンジン車よりも段違いに滑らかだった

 走行中はe-GVC Plusと呼ばれる荷重をコントロールするシステムによって前後、横、下方向へGを滑らかに移動し、コーナーでの安定性をサポート。他社製の車ではこういった一連の機能はバラバラに感じられることが多いが、MX-30 EV MODELでは説明されないと感じ取れないほどの一体感がある。
 
カーブの多い箱根付近の東名高速も安定して走行。減速の必要もなく非常に安心できる走りだった

 驚いたのは運転支援機能で走行中のスムーズさだ。追い越すときは車線を変えればブオーンとエンジンが過剰に回る不快感もなくスーっと自然に前に出て追い越してくれる。逆に前に車が入ってきたときにはかなり余裕をもってゆっくり減速してくれるので、相手が突然車線変更してきても焦ることがない。隣に乗っていた妻も「これ車が自動でやってるの?」と驚くほど自然で、同乗者にも大きな安心感を与えてくれていた。

 EVならではの機能をここまでシームレスに統合したのはマツダが「人馬一体」というコンセプトで製品開発をしているからだろう。この統合性の高さだけでも決定打になるので、候補にマツダ車が入っている方は購入前に必ず試してみるべきだ。

高い剛性に可変回生強度、EVならではの利点

 前述したアクセル、ブレーキもそうだが、EVならではの利点はまだまだある。まずはバッテリーによる剛性アップ。車体下にバッテリー重量がくるため安定するだけでなく、バッテリー自体やケースが剛体となるため、剛性が上がってコーナーの安定感も高まるのだ。

 また、回生ブレーキの強度を変えられるのも良い。MX-30 EV MODELではステアリングホイールパドルを搭載し、左右にそれぞれ二段ずつ、計5段階に回生減速強度を変更できる。これを使えば下り坂でエンジンブレーキを使うように回生ブレーキで自然に減速しながら下れ、かつ大きな充電量も得られる。MX-30の回生発電効率はかなり高く、登った分の電力を下りでほぼ同一分発電できるほど。また、回生減速強度を弱めると高速道路でアクセルを離しても減速しにくくなるため、右足をそれほど緊張させずに一定の速度を保つことができる。
 
シチュエーションによって走りをダイレクトに変えられるのもEVの利点だ

 他にも便利だと感じたのはエアコン。停車中アイドリングの音を出さずにエアコンがかけられるのは思った以上に便利だ。マツダコネクトを使えば遠隔で操作も可能なので、夏暑いときにも重宝する。急速充電でSAに立ち寄った際も、終わりかけにエアコンをつけておけば車に戻った瞬間から快適に過ごせる。バッテリー残量や走行可能距離もアプリで確認できるので、充電しながら用事を済ますのにはもってこいだろう。
 
EV MODELではエアコンの遠隔操作も可能
 
現在のバッテリー残量と走行可能距離も離れた場所から確認できるようになっている

流石の車内空間、音にこだわったマツダNVH性能は伊達じゃない

 車内空間も別格で、リビングの延長のような快適さを同乗者全員に与えてくれる。MX-30も静かだと感心したが、EV MODELはさらにすごい。特に50km前後で走行する街乗りでは10dBほど静音性が高く、同乗者との会話やオーディオの聴取もしやすい。
 
上がMX-30、下がMX-30 EV MODEL。左からアイドリング時、50km走行時、
100km走行時の騒音レベル。50km走行時では約10dB程度も静かだ

 マツダではNVH(Noise、Vibration、Harshnessの頭文字)、つまり車内の騒音をコントロールするための専門部署があり、未来を見据えて開発を行っている。この部署が前述したような車内空間を実現しているわけだ。専用の無響室などを使って部品のどこから外部のどの周波数のノイズが入ってくるかを細かく分析してパーツ設計を1から見直しているという。
 
部品を部屋の間に埋め込んでどこからノイズが入るのかなどを一つひとつ検証できるらしい

 例えば、ドアの間にあるインナーパネルに1%穴を開けただけで3割の遮音機能が失われることがわかったそうだ。これを受けてこれまで当たり前にドアに付けていた低音用スピーカーをカウルサイドに移動、締まった低音が聴かせられるようになった。

 筆者がRX-8に乗っていた際もBOSEのスピーカーを選んでいたが、音の定位や再現性において大幅に進化していた。前後に音を動かした際、以前は音が動いているというより、鳴っているスピーカーの音量が変わっているという印象だったが、MX-30 EV MODELのBOSEシステムでははっきりと定位だけが変わる。また高音域でいつもなら聴き取れない楽器の音が聴こえ、再現性にも優れていた。車内の静音性を整えると同時にサウンドシステムを進化させたからこそ実現できたことだろう。大学で音響を専門に学んだ筆者も納得の音質の良さだった。
 
MX-30 EV MODELの車内空間なら迷わずBOSEを選びたい

走りの概念が変わる車、マツダのEVに期待

 MX-30 EV MODELは「執事のような車」だ。自分の運転を快適にするとともに、運転支援機能では熟練の運転手が運転しているような上質な体験を与えてくれる。運転支援機能を全く全面に出していないマツダだが、急な横入りから2輪の感知まで、正直どのメーカーよりしっかりとやっている印象だった。

 バッテリーの持ちこそそこまで長くないものの、普段街乗りでたまに遠出をする層には申し分ないスペックではないだろうか。東京―愛知間を往復するのにも途中に1回、30分の充電で移動できたし、街乗りだったら戻って自宅で充電すれば翌日には満充電になっているだろう。
 

 EV車といえばTESLA一択かなと思っていたが、今回のレビューで考えが変わった。ちょうど“1dayモニター試乗体感”(https://www.mazda.co.jp/purchase/1day_mx-30evtestdrive/)を実施しているようなので、まず一度乗ってみてほしい。完成度の高さに驚くこと請け合いだ。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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