【木村ヒデノリのTech Magic #001】 “Eバイク”と聞くと電動バイクを思い浮かべるかもしれないが、VanMoofの「Electrified X2(以下、X2)」のカテゴリーは「電動自転車」だ。現在、日本の法律下では自転車でもバイクでもフルオートで動くものは「原付」となってしまうため、手軽とは言い難い。その点、X2は“走ることに重点をおいた自転車”なので、手軽さと移動の快適さを両立した理想的なコミューターではないだろうか。

今後、厳しくなる可能性はあるものの自転車は原付に比べて、はるかに法律の規定が緩く、
手軽に利用することができる

走ることに特化した別次元の電動自転車

 国内で電動自転車と聞くと「坂道をアシスト」してくれる自転車を思い浮かべるかもしれない。しかしこのX2は乗ってみると別次元だということがすぐにわかる。「走ること」に特化しているのだ。
 
余分なパーツを削ぎ落とし、走りに特化したVanMoofの電動自転車「Electrified X2」

 まず他と断然違うのが一漕ぎ目。ペダルを少し踏んだだけでグンと出る感覚が素晴らしい。国産電動自転車がチェーンの駆動を補助するのに対して、X2は前輪をモーターでサポートする。いかに楽に時速24kmという日本の法令に則ったトップスピードまで楽に到達するかを念頭にチューニングされており時速0~24kmの加速の快適さが段違いだ。まさに移動の快適さに特化した自転車で「電動自転車って子供を乗せるお母さん専用のやつでしょ?」というイメージは一発で払拭される。

電動バイクとも違った乗り心地の良さと便利さ

 ここ最近注目されている電動バイクよりも優れているのが「あくまで自転車」という点だ。自転車とはいえ車両なのでルールを遵守して運転しなければいけないものの、やはり原付とは違う自転車の利点が際立つ。例えば原付は運転しながら公園などに入れないのに対して自転車であれば可能など、自転車であるメリットは大きい。

 さらにX2は前述した通り、出だしの快適さを持ち合わせており、信号待ちからのスタートでは原付にも劣らない加速をペダルと連動した安心感とともに提供してくれる。これは実際に乗ってみてもらわないとなかなか伝わりづらいところだが、軽く踏んだだけでスッと前に出る印象で、ロードバイクなどが隣にいても引けを取らない加速と言えるだろう。

 また自転車であることで子供を乗せて保育園の送り迎えに使え、最大で前後二つのチャイルドシート、またそれらを付けて子供を乗せた重量でも快適な乗り心地を提供。つまり電動バイクと自転車の”いいとこ取り”をしている2020年現在最高の乗り物と言っても過言ではないプロダクトなのだ。
 
梱包されている段ボールにはテレビが描かれている。配送業者が大切に扱ってもらうための工夫だそうだ
 
梱包を開けたあとに、難しい組み立ての工程などはほとんどない。サドルとペダル、ハンドルの調整だけですぐに乗ることができる
 
マニュアルはiPhoneを彷彿させるシンプルさ。アプリから設定変更もできる

デメリットはないのか? 筆者が気になったポイント

 一方で、デメリットもある。電動自転車らしからぬスタイリッシュなデザインを実現するためにバッテリーは着脱不可。なので集合住宅に住んでいる場合は充電できる方法を確保するのに工夫が必要な点は少し不便だ。

 筆者は管理事務所にお願いして有料で充電、もしくはファミリーキャンプ用に購入していたSUAOKIの大容量バッテリーにつなぐ事で充電できているが、後者の場合は駐輪場に3時間程度バッテリーを置いたままにしなくてはならないなど不安な点もある。(3時間でフル充電、150km走行はかなり優秀な方ではあるが…)。

 また、純正品のアクセサリを含め、細部の詰めが国産品に加え少し大雑把な印象もある。例えば取付の際に、ネジ穴とパーツがぴったり合わないせいでネジが固くなりネジ山が潰れやすかったり、黒いネジの塗装がハゲやすかったり、付属のネジカバーキャップが取れやすかったりというような部分だ。いずれも細かい点だが、日本製のものに慣れているユーザーは違和感があるかもしれない。

 テクニカルサポートが直営店でしか受けられないことも遠方在住者は不便に感じるかもしれない。知識があればある程度のメンテナンスは自分でできるものの、本体部分であるスマートモジュールなどの不具合の際は直営店に郵送の上修理してもらう必要がある。通常の自転車が地域の自転車店で修理できることを考えるとこの点も購入のハードルとなる可能性はあるだろう。

 金額もデメリットと言えるかもしれない。税込43万円という金額はおいそれと支払える額ではないのは事実だ。だがここに関しては都市部で車を持たずに移動できるということを考えればむしろ安いのかもしれない。実際、筆者は雨の日だけカーシェア、あとはほとんど自転車にすることで行動範囲も広がるし、交通費も節約できている。完全にペイできるとは言い難いが、利便性を考慮した上ならコスパは高いだろう。
 
168cmの筆者が乗るのにも少し高いかなと思う点も女性は気になるかもしれない

短所を補って余りある先進機能の数々

 デメリットはいくつかあるが、それらを補って余りある先進機能も紹介しておこう。

◆現在のアシストに20%のブーストをかけられるブーストボタンを搭載
◆変速も速度に応じて自動で行ってくれるギアチェンジシステム
◆後輪のボタンを足で押すだけで施錠できるキックロックシステム
◆近づくだけで解錠できる自動認証ロックシステム
◆盗難に遭ってもバイクハンターチームがGPSで追跡し取り返してくれる
Peace of Mind保証システム。
 
車輪の位置を合わせて蹴るだけでロックできる

 このように、海外製品としてのデメリットを考慮しても買いたいと思わせてくれる先進機能がそろっている。特に鍵を持っていなくても施錠・解錠ができるロックシステムや、追い越しの時にボタン一つで加速できるブーストボタンなどは他の電動自転車にはないユーザー体験を提供してくれる。

 また、盗難に関するサービスも独特で、自転車が携帯電話回線経由で発信する信号を元に独自のデバイスで正確な位置を特定し取り返してくれる保証を3年間3万4000円で受けることができる。万が一見つからなかった場合も新品車両を無償提供してくれるので、高額な自転車を気軽に日常生活で使うことができる。

2020年時点で考えられる最高の移動手段

 もちろん家族構成などによって考え方は変わるところだが、X2は現時点で考えられる最高の移動手段の一つだといっても過言ではない。総じてプロダクト自体が「ユーザー体験」を最優先に考え設計されているという印象を受けた。世界的な潮流から見ても、多数に売るための汎用性ではなく、ある程度絞ったターゲットに対して圧倒的なユーザー体験を提供する製品が売れる流れになっており、そうしたことから考えてもこれからあるべき電動自転車の理想系と言えるのかもしれない。

 とかく電動自転車や電動バイクの業界は中国やアメリカ(VanMoofはオランダの会社)など海外勢に席巻されているが、日本製も今後、特定のユーザーニーズに特化するなど海外製品に刺激された魅力的な製品が出てくることを期待したい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile
木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

2002~2004年の2年間で米国ボストン、バークリー音楽大学映画音楽科で学位を取得後、23歳で現在の会社の前身となるWebデザインの会社を起業。2008年からグラフィック、フォトグラフィー、映像制作などへも範囲を拡大、2014年からマーケティングも含めた統合的なブランディング事業を開始。普段から様々な最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

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