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<量販店の年末年始の店頭動向>「提案」が販売のカギ 消費者の「知らない」にチャンスあり

特集

2012/01/25 11:04

 昨年の家電量販店は、東日本大震災やタイの洪水の影響など、不安定要因が多かった一方で、地上デジタル放送への移行に伴うテレビやレコーダーの買い替え、節電機運の高まりによる省エネ家電、そしてスマートフォン人気がけん引役となって活気づいた。2012年は、どんな家電製品が売れるのか。年末年始の売り場から探った。

オーディオの無線化に関心
Bluetoothイヤホンは4.5倍に



 多くの人々が行き交う東京・JR有楽駅前に店を構えるビックカメラ有楽町店は、昨年12月、これまでテレビを展示していた1階のエスカレーター前のスペースを、携帯オーディオやスピーカー、ミニコンポなどのオーディオコーナーに衣替えした。

 もともと2階に展示していたオーディオ製品を、多くの人の目に触れる1階にもってきた背景には、スマートフォンで音楽を聴く人が増えているということがある。スマートフォンのBluetoothに対応したワイヤレススピーカーやコンポ、手持ちのイヤホン・ヘッドホンをワイヤレス化できるBluetoothレシーバーの露出度を高めることで、スマートフォンユーザーへのアピールを強化しているわけだ。オーディオコーナーの我妻高広氏によると、「お客様にワイヤレススピーカーなどを紹介すると、『こういうものがあったのか』と関心をもっていただける」と、拡販への手応えを感じている。実際、1月1~10日のアクティブスピーカー全体の売上金額は、Bluetooth対応製品が後押しして前年同期の倍。さらに、Bluetooth対応イヤホン・ヘッドホンの販売金額は4.5倍に急成長した。我妻氏は、「今後は、オーディオ製品の無線化が進んでいく。Bluetooth対応製品の売り上げはさらに伸びるだろう」と、自信を示している。

ビックカメラ有楽町店1階のオーディオコーナー。スマートフォンで音楽を聴く人に訴求する

リビングのテレビを大画面に
説明と提案に力点を置く



 神奈川県の郊外に出店する上新電機港北インター店は、売り場面積4636m2と、上新電機のワンフロア店舗としては全国で最も広い大型量販店。昨年12月7日にオープンしたばかりで、年末年始は特売品を中心に顧客の関心が高かった。そのなかでも、一家の2台目・3台目のレコーダーとして、BDレコーダーを提案。また、50インチ以上の薄型テレビの価格が20万円前後に下がったことを訴求することで、大型テレビの需要を喚起した。「リビングにある既存の32~37インチを他の部屋に移して、リビングのテレビを大画面化したいというお客様を獲得できた」(山田真樹店長)という。今後も、こうした切り口で需要を掘り起こし、販売拡大につなげていく。

 同店は、付加価値のある商品を提案し、体感できる売り場づくりがコンセプト。例えばLED照明は、上新電機の全国店舗のなかで最大の品揃えで、展示スペースは他の大型家電量販店と比べても引けを取らない。人々の関心が高まってきていることから、着実に販売拡大を図っていくという。また、山田店長が「20万~25万円前後と高額な商品だが、説明を聞いていただける機会が増えてきた」という洗濯乾燥機の販売拡大にも期待する。機種ごとの乾燥方式の違いや特徴を説明すると興味を示す顧客が多いことから、同社が作成した説明用パネルなどを積極的に活用し、提案を行って販売の拡大を図る。

上新電機港北インター店。LED照明は上新電機の店舗で最大の品揃えを誇る

自作PCは説明力
初心者のパーツ選びをサポート



 例年、旅行客や家族連れでにぎわう年末年始の東京・秋葉原ドスパラパーツ館は、入りやすい店構えや初心者でも安心できる接客によって、ファミリーや一般のPCユーザーの集客に成功した。まとまった休みが取れる年末年始は、自作にチャレンジしてみようという人や、プラモデル感覚でPCを作ってみようという人が多くなり、また、より安くPCを買いたい、自作してPCの構造を把握したいという需要が高まって、新規ユーザーの来店が見込める。この年末もこうした需要によって、来店者数は通常の1.3~1.5倍程度に拡大したという。

 自作PCの初心者には、どのパーツを選べば自分の理想のPCができるのかがわからない。こうした状況に対応し、「CPUソケットならインテルの『LGA1155』がラインアップが豊富なので、まずは低価格モデルから試して、後からステップアップすることもできます」(PCコンシェルジュの小林寛史氏)といったように、顧客の相談に乗りながら商品選びをサポートしている。小林氏は、「『LGA1155』はトレンドになっていて、初心者にも人気が高い」と、今後の販売拡大にも期待を示している。

 各店に共通しているのは、来店者への提案が販売につながっていること。引き続き、スマートフォンなどのハードウェアや節電のムーブメントはキーワードになるが、消費意欲を喚起するには、これらをより便利に、快適に使うための提案が重要となる。デジタル、白物家電ともに多機能化し、多くの機能をすべて使いこなすのは難しい。消費者への提案力は販売拡大のカギを握る。(田沢理恵)

秋葉原のドスパラパーツ館。年末年始はファミリーや初心者層が拡大した