<インタビュー・時の人>mmbi 代表取締役社長 二木治成

特集

2011/12/28 11:23

 2012年4月、スマートフォン向けの放送局「NOTTV(ノッティーヴィー)」が開局する。放送局を運営するmmbiは、モバイル端末による新しいコンテンツ視聴を追求する会社として、NTTドコモやテレビキー局など20社が出資。これまで成しえなかった放送と通信の融合を実現できるのか。「放送と通信の連携」と表現する二木治成社長に、mmbiのこれからを聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

◎プロフィール
(ふたつぎ はるなり)1951年11月23日生まれ。愛知県名古屋市出身。76年3月、名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了後、日本電信電話公社(現・日本電信電話)に入社。99年1月、NTT移動通信網経営企画部担当部長、NTTドコモ経営企画部担当部長などを経て、取締役常務執行役員に就任。10年6月、マルチメディア放送の代表取締役社長。11年4月、mmbiの代表取締役社長に就任。

「放送と通信の連携」で新しいコンテンツ視聴を追求



Q. 2012年4月に「NOTTV」が開局するが、進捗状況は、どのようになっているのか。

A.
 4月1日、確実に開局できるめどが立っている。コンテンツを提供するシステムの構築、本当につながるかどうか電波状況を調べるためのカバーエリアを含めた総合試験など、さまざまな案件が順調に進んでいる。コンテンツについては、すでに開局当初に放送する番組が決まっている。 


Q. 物理的な側面では、課題はないということか。

A.
 「確実に開局できる」という点では課題はない。しかし、開局したはいいが、契約者がいないという事態は避けたい。

Q. 「NOTTV」を視聴するには、月額利用料が420円かかる。有料であることへの抵抗感をなくして、契約者を増やす方策はあるのか

A.
 まずは「NOTTV」が視聴できる、つまりV-Highマルチメディア放送「モバキャス」に対応した端末を増やすことが重要になる。ワンセグ対応の端末が普及しているが、それと同じようになることが理想だ。そのためには、家電量販店や携帯電話ショップで端末を体験できたり、一定期間、試しに視聴できたりなど、「NOTTV」の番組に触れる環境づくりに力を入れていく。また、体験していただいても、「面白い」と思ってもらえなければ、契約にはつながらない。その意味で、コンテンツを充実すること、しかも今までにないコンテンツを提供することが重要だと考えている。

Q. 「面白い」と思わせるコンテンツとは?

A.
 当社側から提供するコンテンツを通じて、番組と視聴者、あるいは視聴者同士がコミュニケーションする、という流れをつくるコンテンツのことだ。コンテンツ提供からコミュニケーションまでの流れを、「放送と通信の連携」と表現しているが、テレビ番組は、あくまでもテレビ局などコンテンツ事業者が提供するプッシュ型のコンテンツだ。一方、インターネット動画は、視聴者側が自分が観たいコンテンツを探すプル型。このプッシュ型とプル型のコンテンツをバランスよく使って、「放送と通信の連携」を実現するコンテンツをつくっていく。

Q. 契約者数の目標は?

A.
 開局後1年間で100万人を見込んでいる。その次のステップとして、2015年に600万人まで引き上げる。当面の目標は1000万人だ。

Q. 業界でのポジションとして、描いていることを聞かせてほしい。

A.
 「放送と通信の連携」を実現する“最強のハブ”といったところか。これまで実現できなかったことを実現できるポジションを確立したい。

・Turning Point

 mmbiの社員数は約180人。ざっと、100人程度がNTTドコモ出身で、残りがテレビ局などコンテンツ制作の経験者だという。設立は2011年4月。放送出身と通信出身では文化が違い、「当初は大変だった」と振り返る。

 そこでオフィス移転に際して、二木社長の席も含めて社員全員の席を一つのスペースに設置。これにより、“同じ釜の飯を食う”ような連帯感が生まれ、社員同士が理解し合えるようになった。「一つの目標に向かっている雰囲気がある」。違う文化の連携は、4月1日の開局に向けて、二木社長のターニングポイントになった。


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年1月2日付 vol.1413より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは