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<インタビュー・時の人>日本AMD コーポレートマーケティング兼 エンタープライズ事業本部 本部長 林淳二

特集

2011/08/03 10:24

 今年1月、CPUとGPUの統合プロセッサ「APU」を発売した日本AMD。ユーザーのすそ野を広げることに力を入れ、まずは、家電量販店とのパートナーシップを深めてAPU搭載PCの用途提案を強化。さらに、APU搭載デバイスを増やすため、ゲーム機をはじめ業界を越えてメーカーと協業しようとしている。一連の取り組みにコーポレートマーケティング兼エンタープライズ事業本部長として携わっている林淳二氏に、現状と今後の策を聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

◎プロフィール
(はやし じゅんじ)1972年生まれ。千葉県出身。97年、上智大学比較文化学部(国際ビジネス専攻)を卒業。98年、デルに入社。製品マーケティング部を統括。06年、日本AMDに入社。市場開発(営業)やマーケティングなどに携わる。11年7月、コーポレートマーケティング兼エンタープライズ事業本部長に就任。

PCからタブレットに広がる「APU」
用途提案でユーザーを取り込む



Q. 今のビジネス状況は?

A.
 今、日本のPC市場で伸びているのは、15インチの液晶モニタをもつノートPCだ。10万円以下で買える価格帯のなかで、ユーザーは高性能のモデルを望んでおり、当社は今年1月に発売したAPUで、ニーズに応えている。

APU搭載のノートPC(左)とRADEONグラフィックスカードを持ちながら──

Q. 具体的には……。

A.
 APUは、CPUとGPUを一つのチップにした統合製品で、とくにグラフィックスの性能を求めるユーザーにとって、リーズナブルに購入することができる魅力的な製品だ。しかも、省スペースや省電力を追求している。

Q. ターゲットはどのような層になるのか。

A.
 これまでは、PCのパワーユーザー、秋葉原電気街のパーツ専門店で製品を購入する人たちを中心に訴求してきた。しかし最近は、YouTubeなどのSNSに動画をアップロードすることが一般化しており、グラフィックス性能を重視することがあたりまえになってきた。PCを普通に使っている人、家電量販店でPCを購入する人に対しても、しっかりアピールすることが重要だと判断している。

Q. 量販店での販売、しかもパーツとしてではなく、APU搭載のPCを増やすために取り組んでいることは?

A.
 PCメーカーとの協業はもちろん、量販店とのパートナーシップを深めることを目的に、今年、量販店を支援する営業チームを組織化した。量販店のラウンダーも配置している。また、グローバルで展開していることとして、製品ロードマップの共有や店頭でのPOPやイベントの支援、店員へのトレーニングプログラムの提供などがある。

Q. PC拡販策の一つとして、量販店とショップオリジナルモデルを開発することも行っているのか。

A.
 現時点では行っていないが、考えてはいる。具現化するには、いずれにしろ、APU搭載モデルで実現できることを消費者に訴えていく「用途」の提案が重要になる。

Q. どのような提案が考えられるか。

A.
 現在のニーズに合わせるなら、「YouTubeにアップロードする」「動画を視聴する」「動画を編集する」などだろう。これまでは、PCを自作するような上級者に「性能」をアピールしてきたが、ネットサーフィンをはじめ、写真の閲覧やBDの視聴、動画のアップロードが一般化しつつある今は、ユーザーはプロセッサのブランドを気にしていない。また、スマートフォンタブレット端末で高画質な画像や動画を扱うようにもなっている。今後はPCだけでなく、多くのデバイスにAPUが搭載されるようになる。APUで何が実現できるかを訴えていかなければならない。

Q. APUの売上高への貢献度合いは。

A.
 具体的な売り上げは公表できないが、APUの売上比率はワールドワイドで2011年に4割、2014年には7~8割まで増えると見込んでいる。

・Turning Point

 1969年の創業からずっとCPU専業だったAMD。2006年10月、カナダのグラフィックス専業ベンダー、ATI社と合併し、一気にPCの三つの基幹部分──CPU、GPU、チップセットを提供するメーカーになった。

 合併時に入社した林本部長にとっても、2006年はターニングポイント。「CPUとGPUを融合したAPUを市場に出すという目標を掲げ続けた結果、全社一丸となって取り組む機運が高まった」という。また、「PCだけでなく、さまざまなデバイスにAPUの搭載を促すことで、多くの人に革新的な技術を提供できるようになった」と自信をみせる。


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年8月1日付 vol.1393より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは